吸着–ゼオライト合同研究発表会の参加報告(第37回日本吸着研究発表会,第40回ゼオライト研究発表会)
早稲田大学先進理工学研究科応用化学専攻松方研究室
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吸着–ゼオライト合同研究発表会(第37回吸着研究発表会,第40回ゼオライト研究発表会)が令和6年12月2(月)~4日(水)の3日間にわたり,タワーホール船堀(東京都)で開催されました。研究発表はAD,A,B,Cの4つの会場にそれぞれ分かれて行われました。発表の内訳は,特別講演2件,招待講演7件,総合講演5件,受賞講演2件,一般講演108件,ポスター発表57件の計181件でした。
今回は日本吸着学会と日本ゼオライト学会の初めての合同発表会ということで例年と比べても発表件数が多くより活発な議論が行われました。参加者の数も非常に多く,4会場に分かれていたのにも関わらず,各会場の外まで聴講者があふれていたほどでした。私も普段関わることのなかった吸着学会の方の発表を聴講することができ非常に貴重な経験をさせていただいたと感じています。
1日目の午後には「ナノ空間を活用する光触媒の設計」というタイトルで大阪大学の山下先生に特別講演をいただきました。ナノ粒子化による効果や反応場の疎水化,MOF,合金等触媒の活性向上へのアプローチについて様々に例を挙げてお話いただきました。ゼオライトの疎水化により活性が大きく向上した話や金属ナノ粒子の反応性の高さは,金属カチオンを担持したゼオライト材料に対する競争吸着を扱っている私にとっても大変参考になるお話でした。
2日目には1件の特別講演と7件の招待講演があり多くの先生方にご講演いただきました。2日目の始めには私の所属している松方先生(早大)から「カーボンニュートラルに大きく貢献するゼオライト」のタイトルでご講演いただきました。2050年のカーボンニュートラルに向けてバックキャストによる新たな技術開発の必要性,サプライチェーン全体で公平な負荷分担の必要があること等お話いただきました。コストのかかる再エネ由来の電気を利用してレジ袋を製造しても,原価はほとんど変わらないという話はかなり衝撃的でした。カーボンニュートラルのために今までの視点にこだわらない新たな発想が必要となることを改めて考えさせられるいい機会となりました。
次の招待講演では名古屋大学の則永先生より「産学連携で挑む冷熱利用型DAC“Cryo-DAC”の研究開発の状況と展望」のタイトルでご講演いただきました。カーボンニュートラルに必要な技術であるDACについて,LNGの冷熱を利用することでエネルギー削減やプロセスコストの低減を目指すCryo-DACについてお話をいただきました。普通なら捨ててしまう冷熱を利用することでコスト面の優位性を持った新たなプロセスを創造する,異分野間の連携の重要性を学ばせていただきました。
2日目午後の始めの招待講演では東京大学の大宮司先生より「ナノ空間材料におけるガス吸着とHVAC技術への応用」のタイトルでご講演いただきました。CO2のMOFへの吸脱着を利用したヒートポンプを中心としたお話でした。吸脱着現象を組み合わせることで熱輸送を促進する発想は大変興味深く,吸着現象の適用性の広さについて改めて考えさせられました。
その次の招待講演では横浜国立大学の光島先生に「カーボンニュートラルのシナリオ解析と水素関連技術」のタイトルでご講演いただきました。海外の再エネ水素をどのような割合で導入するか等,様々なシナリオで今後の水素社会のモデルについてお話いただきました。また,水素製造のための電解技術についても説明いただき,どこか遠い未来のように思えていた水素社会が現実的に実現できるところまで来ていることを実感させられました。再生エネルギーの面での日本の立ち位置の悪さとだからこそ積極的な海外投資が重要であることを強く意識させられました。
次の招待講演では早稲田大学の有村先生に「世界のカーボンプライシングの動向と日本における展望」のタイトルでご講演いただきました。炭素税やキャップ&トレードといった社会科学的な視点からの環境問題へのアプローチについて世界の動向および日本の状況についてお話いただきました。炭素税によって市場の競争力を保ちつつ知らず知らずのうちに排出を抑える仕組みや対象となる排出削減をどう評価するか等,制度側から見た環境問題について知る貴重な機会となりました。
その次の招待講演では日本エネルギー経済研究所の小川様より「CN実現に向けた課題と展望」のタイトルでご講演いただきました。有村先生と同じく社会学的な視点からCNに関する課題について整理してお話いただきました。エネルギーは選択できない必需品だからこそ低所得層の負担が大きくなることや省エネ化が進むと税収の面では厳しくなること等,環境問題はそれ独自に存在しているのではなく他の社会課題ともリンクしていることを改めて考えさせられました。
次の招待講演では太平洋セメントの一坪様より「カーボンニュートラルに向けた太平洋セメントの取り組み」のタイトルでご講演いただきました。企業視点でのカーボンニュートラルへの取り組みとしてセメント業界の現状と対応について実例を交えながらご説明いただきました。原料の都合上,どうしても大量のCO2を排出してしまうセメント会社だからこそ,省エネ化,CO2回収,CO2の有効利用といった全方位で進めていかなければならない現状とそのための技術開発の苦心が伝わってきました。
2日目最後の招待講演では産総研の望月様より「SOEC共電解とFT反応を組み合わせた液体合成燃料一貫製造プロセス開発」のタイトルでご講演いただきました。電解技術を応用することでFT反応を促進しCO2とH2から炭化水素燃料(合成燃料)を合成するといったお話でした。合成燃料は電気や水素と比べて保存性やエネルギー密度に優れ,今後の需要が見込まれています。今回の発表でベンチスケールの装置で製造された合成燃料が煤を発生させることなく燃焼する様子を見せていただき,現行の石油由来の燃料より純度の高い燃料の製造が可能であると今後の技術開発の発展に期待が持てる内容でした。
最終日についても会場からあふれるほど多くの方が参加されており熱い議論が繰り広げられていました。今年度の発表会は発表件数・参加者ともに例年以上であり非常に盛況でした。私にとっても多くの方に発表を聞いていただき,また多くの発表を聴講することができとても有意義であったと感じています。初の合同研究発表会ということで実行委員会の方々も会場の準備から当日の運営まで,例年以上の苦労が多数あったと思われます。この場をお借りして,吸着–ゼオライト合同研究発表会を運営いただいた実行委員会の方々ならびに日本ゼオライト学会の皆様,日本吸着学会の皆様に深く御礼申し上げます。吸着–ゼオライト合同研究発表会に参加した皆様ならびに日本ゼオライト学会,日本吸着学会会員の皆様の日々のご健康を祈るとともに,次回のゼオライト研究発表会においてもたくさんの方が参加されるよう心から願っております。
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