Pre-Symposium of ZMPC2024 & ISPM2024参加報告
東京大学大学院工学系研究科
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Pre-Symposium of ZMPC2024 & ISPM2024が2024年7月19日から21日までの3日間にわたり神奈川県鎌倉市のKKR鎌倉わかみやで開催されました。3日間の日程のうち,3日目の21日は同日午後から大阪で開催されたZMPCへの移動に割り当てられており,講演は19日と20日の2日間で行われました。講演はPlenary Lecturesが4件,Invited Lecturesが11件の合計15件でした。
私は今回のISPMがゼオライト関係の国際シンポジウム・学会に参加する初めての機会でした。ゼオライトやその他の多孔質材料に関する研究の第一線でご活躍されている先生方のご講演を拝聴できることを楽しみに,参加させていただきました。
本シンポジウムの1日目は,午後から始まって6件のInvited Lecturesが行われました。1件目はPurdue UniversityのRajamani Gounder先生から「Harnessing coupled reaction-transport phenomena in Brønsted acidic zeolites to develop stable and selective olefin oligomerization catalysts」のタイトルで,ブレンステッド酸点の密度と結晶子サイズを独立に変化させたゼオライト触媒による触媒反応解析についてご講演いただきました。2件目はUniversity of HoustonのJeffrey D. Rimer先生から「Elucidating and Controlling Zeolite Crystallization for the Design of Advanced Materials」のタイトルでご講演いただきました。ゼオライトのナノ細孔の物質輸送速度向上に向けて,ゼオライトの二次元化やコアシェル化が有効であることをご説明いただきました。3件目のEindhoven University of TechnologyのEmiel J. M. Hensen先生による「Cracking of carbon-carbon bonds in lignin using metal/zeolite」というタイトルのご講演では,CO2ニュートラル燃料の合成で重要となる植物中のリグニンの分解において,Pt担持ゼオライト触媒が有効であることをPtとゼオライトのそれぞれの役割も含めてご説明いただきました。また,技術経済性分析とライフサイクルアセスメントを用いて,本触媒によるCO2ニュートラル燃料生産の有効性についても評価をされていました。4件目はKorea Advanced Institute of Science and TechnologyのMinkee Choi先生から「Replacing HCl with Zeolite-Based Solid Acid Catalysts in the Production of Polyurethane Intermediates」というタイトルでご講義いただきました。ポリウレタンの原料であるメチレンジアニリン(MDA)の合成について,階層構造を有するLTL型ゼオライトが特有の一次元ミクロ孔とメソ孔によって物質輸送を促進し,MDA合成の高い触媒活性と失活耐性を有することを丁寧にご説明いただきました。5件目でのRUB/Tokyo TechのHermann Gies先生による「Are zeolites crystalline? Reflections on order and disorder in silicate zeolites」というタイトルのご講演では,ゼオライトを含む結晶固体中の構造的に無秩序な部分を分析する手法や,それらが吸着や触媒作用などの性能に及ぼす影響について,Beta型ゼオライトなどを参考にご説明いただきました。6件目はBASF SE社のUlrich Müller様から「Discovery, Invention, Innovation–40 years in Microporous Materials」というタイトルでご講演いただきました。企業において研究から量産に至ったゼオライトを例に,アイデアや研究結果を商業化して価値を生み出すために重要な因子についてご説明いただきました。特に時間軸とコスト軸からイノベーションを定量化するという考え方は,工学的な研究の目的を考える上で非常に重要な要素であるように感じました。
2日目は午前に4件のPlenary Lectures,午後に5件のInvited Lecturesが行われ,私は午後から参加させていただきました。午後1件目はNational Taiwan UniversityのKevin C.-W. Wu先生により「Enhanced Plastics-to-Single-Walled Carbon Nanotube (SWCNT) Conversion Through Sequential Zeolites and Fe/SiO2-based Catalysis」というタイトルで,プラスチック廃棄物から水素を生成するNiO/CeO2触媒や,単層カーボンナノチューブを合成するためのゼオライトと金属酸化物の2段階熱分解触媒プロセスについてご講演いただきました。2件目はEast China Normal UniversityのPeng Wu先生から「Synthesis of Zeolites with Large Porosity and Stable Frameworks」というタイトルでご講演いただきました。多様な構造を作り出す二次元層状のゼオライト前駆体について,三次元のゲルマノシリケートから二次元層状の前駆体を生成する技術やシリル化等により新規構造を有する高シリカゼオライトを合成する技術について詳細にご説明いただきました。3件目はRuđer Bošković InstituteのAna Palčić様から「Exploring zeolite behavior upon different energy inputs」というタイトルで,ゼオライトをメカノケミカル的に合成する手法についてY型ゼオライトなどを例にご説明いただきました。4件目はNormandy UniversityのJean-Pierre Gilson先生から「Industrial Zeolite Processes: Past Successes and Blueprints for the Future」というタイトルでご講演いただきました。ガソリンのオクタン価を高めるための直鎖状n-C5–6パラフィンを分岐鎖異性体に変換するPt/MOR触媒について,細孔内の拡散律速を改善するためのMOR型ゼオライトの階層構造や,LTA型ゼオライトによる分離工程を加えることで収率向上と低コスト化を実現する技術について詳しくご説明いただきました。5件目はKatholieke Universiteit LeuvenのMichiel Dusselier先生から「Highly active Ru-hydride catalysis in zeolites: spectroscopic proof and diene isomerization」というタイトルで,ご講演いただきました。繊維やプラスチック製品の原料として有用なttDEMをctDEMから変換する触媒として,Ru-Beta触媒が高い活性を示すことを詳細な反応メカニズムとともにご説明いただきました。2日間のいずれの講演も自身では取り扱っていない合成や反応プロセスが多く,ゼオライトの合成技術や応用先に関する知見を広げることができました。
また,1日目の夜にはWelcome Partyが,2日目にはBanquetが開催されました。私は1日目のWelcome Partyに参加し,そこで自身の研究で参考にさせていただいている論文の執筆者の方々と交流する大変貴重な機会をいただきました。新型コロナウイルスの影響もあり学会やシンポジウムへのWEB参加がしばらく続いておりましたが,ディスカッションや人脈作りの点で今回のような対面開催が重要であることを改めて実感いたしました。
最後に,本シンポジウムの開催にあたり,事前準備や運営までにご尽力いただきました関係者の皆様にこの場をお借りして感謝申し上げます。また,今後もゼオライト関係の国際シンポジウム・学会が対面で活発に開催されることを心から願っております。
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