日本ゼオライト学会 刊行物 Publication of Japan Zeolite Association

ISSN: 0918–7774
一般社団法人日本ゼオライト学会 Japan Zeolite Association
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Zeolite 41(4): 135 (2024)
doi:10.20731/zeoraito.41.4.135

レポートレポート

2024年度ゼオライトフォーラム参加報告

東京工業大学物質理工学院応用化学系多湖研究室

発行日:2024年10月15日Published: October 15, 2024
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2024年6月7日に2024年度ゼオライトフォーラムが「SDGsに貢献するナノ空間材料」のテーマの下,東京農工大学140周年記念会館(エリプス)にて開催されました。3件の多孔体に関する大学スピンオフベンチャーについてご講演がありました。大学発スタートアップと言えば成功例も多く,今後の事業展開が非常に楽しみです。ご講演いただいた3名の先生が,ご自身の大学での研究で培った材料への知識と経験を生かし,社会実装を他人任せにせず自ら志向されている姿をご紹介いただき,大変興味深くご講演を伺いました。

一件目は東京大学伊與木健太先生より,Planet Savers社のご紹介がありました。これまでのご自身の研究の紹介に加えて,ゼオライトの合成・改良などを通して得た知見を活用したDACアプリケーションの社会実装を目指したスタートアップに関して,ゼオライトの開発と装置化についてご紹介がありました。2023年に設立されたばかりにもかかわらず,すでに吸着・分離の装置化を見据えたご検討を進められており,25%のCO2濃縮を期待したくなるご発表でした。

二件目は堀彰宏先生より,syncMOF社のご紹介がありました。MOFの合成のみならず,量産,装置化まで手掛けられている点が非常に特徴的でした。外部資金の調達なく自立自走しながら社会実装を目指されており,高い自由度を維持しつつ様々な取り組みをされていることがご紹介されました。ユーザーの要望に応じた材料合成から装置化まで取り組まれており,幅広い知識が求められるチャレンジングな企業と感じました。MOFもDACもまだまだ一般的には認知されていない技術を,社会に浸透させる活動も含め,幅広くマーケティングをされて自ら市場を開拓されていることが非常に印象的でした。

三件目は,東北大学の西原洋知先生より,3DC社のグラフェンメソスポンジについての詳細なご説明と市場展開の取り組みについてご講演をいただきました。これまで困難であった,欠損が少なく高比表面積を有するグラフェンの市場投入を目指されているとのことでした。これまでの炭素材料とは一線を画する材料の開発に成功したことが起業化への重要なモチベーションであったことをお伺いし,材料開発の重要性を感じたご講演でした。

Zeolite 41(4): 135 (2024)

ご講演の様子

いずれの発表も,大学で得られた知見を基にその成果を実現しようとし,外部資金の調達や起業家の協力を得て,経済市場へのソリューション提供を目指している点が印象的で,その高いモチベーションに大変感銘を受けました。これらのご講演を通じて,自らの研究のアウトプットのみならずインパクトまで意識した研究活動の重要性を感じました。最後に,今回のゼオライトフォーラムでは,自らの研究を社会に還元していくことの重要性と,その姿勢の大切さを学ばせていただき,大変有意義な時間を過ごすことができました。このような素晴らしい機会を提供いただいたご講演の先生,ホストの前田先生をはじめとする関係者の皆様にこの場をお借りして心より御礼申しあげます。

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