第7回ゼオライトセミナー参加報告
東北大学大学院環境科学研究科
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2024年2月2日(金)に東北大学大学院環境科学研究科講義棟大会議室にて,第7回ゼオライトセミナーが開催されました。本セミナーは,日本ゼオライト学会と東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター,東北大学環境科学研究科の主催・共催であり,東北大学青葉山キャンパスに建設中の次世代放射光施設NanoTerasuの見学会も同時開催されました。今年度は「放射光計測を利用したその場観察」をテーマとして,東京大学の脇原徹先生,東北大学の星野大樹先生,筑波大学の笠井秀隆先生,東北大学の西堀麻衣子先生の4名のご講演が行われました。当日は30名以上の参加者の間で意見交換が積極的に行われ,筆者を含めた東北大学の学生も熱心に聴講いたしました。
はじめに,「放射光を用いたゼオライト結晶化メカニズム解明」と題して,東京大学の脇原徹先生がご講演くださりました。結晶学的な計測では解析が困難な非晶質なゼオライト前駆体の構造形成過程の追跡に,合成過程のin-situ条件下でX線全散乱測定を適用した研究についてお話されました。水熱合成下での時分割測定が実施可能なシステムの構築から,二体分布関数を利用した中距離構造の解析手法まで詳しく解説していただき,筆者もゼオライトの結晶化過程に関する研究を行っているため,非常に興味深く拝聴いたしました。
次に,「高輝度放射光X線で見るナノスケールのダイナミクス」と題して,東北大学の星野大樹先生がご講演くださりました。X線光子相関分光法(XPCS)により,ナノスケールの局所的な構造ゆらぎを反映した散乱像を時分割で取得することで,不均一系のダイナミクスを解析した研究についてお話されました。特にXPCSと小角X線散乱測定を同時に実施することで,溶液中における高分子のダイナミクスだけでなく構造変化までも解析した研究は非常に印象深く,ゼオライト研究への応用の可能性を感じました。
続いて,「水熱合成とメカノケミカル反応の放射光その場観察」と題して,筑波大学の笠井秀隆先生がご講演くださりました。水熱合成およびメカノケミカル反応にともなう粒子成長過程を,粉末X線回折を利用して結晶構造解析した研究について解説していただきました。特に,ボールミル中の粉末をin-situ観察するためのシステムは,筆者もメカノケミカル反応を利用したゼオライト合成についての研究に取り組んでいるために,非常に魅力的に感じました。
最後に,「放射光X線分光によるゼオライト骨格中ヘテロ原子の構造解析」と題して,東北大学の西堀麻衣子先生がご講演くださりました。ゼオライト骨格中のヘテロ原子の位置の特定に,X線吸収分光を利用した局所構造・化学状態解析を適用した研究について解説されました。ゼオライトの骨格構造に応じた水分子の結合状態の違いに関する研究についてもお話してくださり,ゼオライト研究に対するX線吸収分光のもつ元素選択性の有用性を改めて感じました。
今回のゼオライトセミナーでは,放射光計測を利用して材料研究に取り組む先生方に,ゼオライトの構造・化学状態変化の解析に対するその有用性を解説していただきました。どの手法も最先端かつオリジナリティに溢れており,放射光計測の多角性や自由度の高さを改めて実感するとともに,大いに刺激を受けた大変有意義なセミナーとなりました。このような貴重なセミナーをご企画・ご準備いただきました村松淳司先生,西堀麻衣子先生,ならびに関係者の皆様に,この場を借りて深く感謝申し上げます。
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