日本ゼオライト学会 刊行物 Publication of Japan Zeolite Association

ISSN: 0918–7774
一般社団法人日本ゼオライト学会 Japan Zeolite Association
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5 アカデミーセンター Japan Zeolite Association Academy Center, 358-5 Yamabuki-cho, Shinju-ku, Tokyo 162-0801, Japan
Zeolite 40(3): 133-135 (2023)
doi:10.20731/zeoraito.40.3.133

レポートレポート

5th Euro Asia Zeolite Conference(5th EAZC)での活動報告書

東京工業大学物質理工学院応用化学系応用化学コース横井研究室博士後期課程1年

発行日:2023年7月15日Published: July 15, 2023
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韓国の釜山で開催された5th Euro Asia Zeolite Conference(5th EAZC)に参加し,ポスター発表を行った。釜山はソウルに次ぐ第二の都市であり,海雲台(ヘウンデ)海水浴場や西面(ソミョン),海東龍宮寺などの名所がある。韓国は地震が少ないためか,高層マンションが数多くあり,隣国ではありながら日本とは全く異なる景色で新鮮だった。一方,近年の韓国ブームもあってか日本でもよく目にする料理がいくつもあり,目新しいと感じたのは韓国のおでんくらいであった。

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図1. 海雲台(ヘウンデ)海水浴場の景色

4日間にわたる本国際会議では,私が扱っているゼオライト中心の国際会議ということもあり,いつも参考にしている先生方の最新の研究成果を知ることができて非常に有意義な活動となった。本国際会議は現地のみでの発表のため,白熱した議論が行われており,多くの着想を得ることができた。また,先生方の研究に対する熱意に刺激を受け,更に研究意欲が増した。

特に印象に残った講演はフランスのNational Graduate School of Engineering and Research Centerに所属しているMintova先生の御講演だ。シラノールの帰属に関する新たな評価手法についての講演で,シラノールの欠陥修復に関する戦略についても紹介された。ゼオライト内部の欠陥の評価につながる分析手法や欠陥の修復手法の検討は,正に私が研究テーマの一つとして取り組もうと考えていたため,大変興味深く拝聴させていただいた。従来はMAS NMRやIR分析が主に用いられており,私もこれらの技術により評価を進めていたが,本講演ではDFT計算を組み合わせることによりシラノール欠陥の強度の区別ができると紹介されており,大きな衝撃を受けた。今後,シラノール欠陥の全体的な量や強度を明らかにできれば,目的とする触媒反応に対する最適な欠陥量とその強度について解明できるのではないかと考えている。また,これまで明らかとなっていない,ゼオライト合成時の微妙な条件の違いによる活性のばらつきの原因に関しても有益な情報が得られるのではないかと考えている。今回紹介された評価手法を用いて,触媒の活性とシラノール欠陥の相関について明らかにしていきたい。

他にも,Rino R. Mukti先生による,ゼオライト転換法における無機カチオンの重要性に関するご講演や,Paul A. Wright先生のRHO型ゼオライトの詳細な物性や応用例の御講演など本当に興味深いものが多く,大変刺激的な国際会議となった。

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図2. 国際会議場での記念写真(筆者:真ん中)

初日のWelcome Reception後には,脇原先生のご支援のおかげで日本側の学生数人と,韓国の学生数人で交流会が行われた。韓国に同世代の友人を作ることができ,これからの交流はもちろん,次の国際学会での楽しみも増えた。

ポスターセッションでは,様々な国からの研究者と議論を重ねることができ,国際学会の醍醐味を感じることができたと思っている。徐々に対面での国際会議が復活してきており,研究を通して友人を増やすこと,斬新な発想を得ることができる機会が戻ってきて嬉しく思っている。

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図3. ポスター発表の様子(筆者:左)

今回,Crystallization of CON-type zeolite: impact of seed crystalと題し,異なる種結晶種がCON型ゼオライトの結晶化にどのような影響を与えるかについて発表した。多くの議論の中で,結晶化速度の違いについて詳細に検討するべきであるとの意見をいただいた。実験結果から,CON型ゼオライトを種結晶として用いることで,結晶化速度が上昇する傾向が得られている。MAS NMRや電子顕微鏡を用いた分析も取り入れ,種結晶種の骨格構造や元素組成比の違いが結晶成長にもたらす影響を解明していきたい。

他の研究者のポスターもいくつか拝見することができ,今後の研究に役立つ知見を得ることができた。例えば,マクロ孔をもつ基材とゼオライト前駆体を組み合わせてミクロ/メソ/マクロ材料を合成する技術を学んだ。メソポーラスゼオライトのみの反応よりもミクロ/メソ/マクロ材料の方が反応寿命や選択性が高くなる結果であった。これまではマクロ孔を意図的に用いるような系は想定していなかったが,これを機にマクロ孔を取り入れた研究例も学んでいこうと思った。ポスターセッション中は考えが浮かばなかったが,基材のマクロ孔径の違いが反応の活性に与える影響について興味が湧いており,今後検討していきたい。

ポスターセッションを通じてインドネシアや韓国等の研究者と交流を深めることができた。特に韓国KAISTの学生とは同期ということもあり,意気投合した。今年の5月には日韓触媒シンポジウムで再度韓国に訪問予定であり,新たな成果を紹介できるよう,帰国後,なお一層研究に邁進していきたい。

Banquetでは,釜山で有名な海鮮や伝統的な漬物,その他いくつもの料理がバイキング形式で用意され,Suk Bong Hong先生や何人もの先生方の乾杯とともに始まった。同じテーブルの韓国やスペイン,フランスの先生方とそれぞれの国について紹介しあい,親睦を深めた。韓国の先生から,ビールと焼酎を混ぜたソメクという伝統的な飲み方を教えていただき,その場は大盛り上がりだった。

最終日にはCruise Ship Marine Tourを用意していただき,昼食の後,ヨットツアーと海東龍宮寺の散策をした。二つのチームに分かれてツアーが行われ,私はFernando Rey先生やManuel Moliner先生らと同じグループだった。先生方と観光できる機会は国際会議のExcursionくらいなので,貴重な時間を過ごすことができた。昼食では,García Martínez先生と日本の文化や韓国の食について会話が弾み,楽しい時間を過ごした。昼食後は,Manuel Moliner先生やRaquel Simancas先生,Abdulkarem Amhamed先生らと本会議の所感や韓国出張についてお話し,交流を深めた。Abdulkarem Amhamed先生とは,私が現在取り組んでいる研究に関してやり取りをし,最後に連絡先をいただいた。ツアーでは,韓国の絶景や文化を堪能し,素晴らしい5th EAZCの締めくくりとなった。

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図4. Cruise Ship Marine Tourでの記念写真(筆者:後方柱の右)

今回,5th EAZCに参加して,海外の研究者と議論・交流を深める貴重な経験をすることができた。また,気鋭の研究者から第一線の研究者による御講演や,研究者との議論を通して多くの気づきを得ることができた。昨年の20th IZCに参加し国際学会の雰囲気を味わえていたので,今回の5th EAZCでは変に委縮せず議論や交流を深めることができたと感じている。このような素晴らしい機会を与えていただけたことに感謝し,このような舞台に再び参加できるよう更に研究に邁進していく所存である。

末筆ではございますが,「若手研究者の5th EAZC海外渡航費用助成」によりご支援いただいたZMPC2018実行委員会並びに日本ゼオライト学会,そして関係者の皆様方に厚く御礼申し上げます。

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