5th Euro-Asia Zeolite Conference(EAZC)参加報告
(国研)産業技術総合研究所 化学プロセス研究部門
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5th Euro-Asia Zeolite Conference(EAZC)は2023年2月5〜8日にかけて大韓民国釜山海雲台(ヘウンデ)にあるThe Westin Josun Busan Hotelにて開催されました(Fig. 1)。
EAZCはアジアや欧州を拠点に活躍する多孔質材料に係る研究者同士の交流と,最新の技術動向や研究事例を通じて学会活動の振興を深めることを目的とした国際会議です。5th EAZCは今世紀のCOVID-19パンデミックにより,前回2019年1月の4th EAZC (Taormina, Italy)以降開催を延期していましたが,各国における入国制限緩和に伴いおよそ4年経過しての現地開催となりました。開催地の釜山は日本からも近い大韓民国第2の都市であり,物流の要所として発展してきた貿易拠点でもあります。中でも海雲台は海岸エリアと高層ビルが立ち並ぶエリアが協奏し,日中は美しい砂浜と海岸の景色,夜は無数の明かりが映える高層都市と様々な一面を持っています(Fig. 2)。
そのような素晴らしい環境で開催された5th EAZCのテーマは“Zeolites as Materials for Energy and Environmental Sustainability”で,Conference ChairのProf. Suk Bong Hong (POSTECH, Korea)およびVice ChairのProf. Fernando Rey(ITQ, Spain)の主催のもと,各国の大学・研究機関・企業から参加者が集い,多角的な視点から各人の研究発表について活発な議論が交わされました。
参加国はアジアから7カ国,欧州から7カ国であり,アジア・欧州における様々な国からの参加がこれからの多孔質材料技術に対するブレークスルーを強く期待していることが窺われました。韓国のCOVID-19防疫強化対策により,今回は中国からの参加者が制限され,会場ではマスク着用やアルコール消毒等の感染対策を講じた上で会議が進められました。発表件数はPlenary Lecture 4件(Prof. Susumu Kitagawa, Dr. Svetlana Mintova, Prof. Georgi N. Vayssilov, Prof. Paul A. Wright),Keynote Lecture 4件(Dr. Manuel Moliner, Prof. Masahiko Matsukata, Prof. Toru Wakihara, Prof. Minkee Choi),Oralは合計39件で,9つのセッションテーマが“MOF and Novel Porous Materials”,“Hierarchical Zeolites”,“Synthesis”,“Adsorption and Separation”,“Characterization and Modeling”,“Catalysis I”,“Industrial Session”,“Zeolite-Templated Carbon”,“Catalysis II”に分けて,パラレルではなく1つの会場にて発表と議論が行われました。また,Posterは71件で“Synthesis”,“Adsorption and Separation”,“Catalysis”,“Characterization and Modeling”の4つのテーマに分けて行われました(Figs. 3~7)。
今回の発表では,ゼオライトの触媒や吸着性能を十分に活用するために提案された新しい合成方法,コンピューターシミュレーションやモデリングによる材料評価と設計,様々な原料転換や排ガス浄化を目指した触媒・吸着性能向上や新しい触媒反応への適用,ネットゼロエミッション実現に資するゼオライトを用いたDirect Air Captureなど,これからの脱炭素化社会に向けて,多孔質材料を用いた基礎から応用までの幅広い研究が世界的に進められていることを改めて実感しました。ゼオライトだけではなく,PCP/MOFやZeolite-Templated Carbonといったこれまでのゼオライトには備わっていない独自の性能を有する機能性多孔質材料の応用展開についても今回の発表を通じてより理解を深めることができ,筆者にとって大変有意義な4日間でありました。
筆者も今回口頭発表の機会をいただき,大変光栄でした。今回の5th EAZCでのメインテーマから見ると筆者の発表内容は基礎+特異的な分類に属する印象ですが,必死に行ったプレゼンの後に,ゼオライト分野で著名な先生方に内容について色々コメントや厳しくも温かいお言葉をいただきました。
最後に,現地開催により本会議にて久しぶりに再会できた多くの海外研究者と顔を合わせて直接会話することができました。これに加え,初めて出会う研究者とも対面で,研究だけでなくそれぞれの文化や日常について気さくに話すことができました。これはなかなかリモートでは経験しにくい貴重な体験だと個人的には思います。本参加報告の結びに,COVID-19がまだ完全に終息していない状況の中で,この度の5th EAZCの運営にご尽力された先生方に深く感謝いたします。次回の6th EAZCは2025年1月19〜22日でAlicante,Spainにて開催予定です。
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