第6回ゼオライトセミナー参加報告
北海道大学触媒科学研究所触媒材料研究部門
© 2023 一般社団法人日本ゼオライト学会© 2023 Japan Zeolite Association
2022年12月16日(金)に現地およびオンラインのハイブリッド形式にて,第6回ゼオライトセミナーが鳥取大学工学部講堂で開催されました。筆者は普段,SiO2担持合金触媒をメインに扱っており,ゼオライトをテーマに研究は行ってきませんでした。しかし,研究室の他グループではゼオライトに関する研究を行っており,ゼオライトに対して少ないながらも接する機会がありました。そこで,ゼオライトに関して知見を深めたいと考えていたところ,ゼオライト学会のHPにて今回のセミナーを発見しましたので,参加させて頂きました。今回は東大生産技術研究所の茂木堯彦先生,広島大の津野地直先生,名古屋大の織田晃先生,東北大多元物質科学研究所の大須賀遼太先生の計4名のご講演がありました。
まず初めに,「ゼオライトを用いたオレフィン合成:反応空間と生成物分布との関連性」と題して,茂木先生がMTO(Methanol-to-Olefins)反応を例にゼオライト特有のナノリアクターとしての触媒作用を紹介されました。細孔構造/反応ガス種/反応ガスの接触時間などのファクターが得られる生成物分布/触媒寿命をなぜ変化させるかについてゼオライトの細孔内の反応中間体(カーボンプール)に基づいて分かりやすく説明頂きました。その際に,真に活性な中間体を同定するために定常状態同位体過渡応答解析により,カーボンプールへとアプローチしておられました。MTOの複雑な反応メカニズムを解明することは難易度が高いことだと思いますが,過渡応答を巧みに用いてアプローチされており,自分の研究にもフィードバックできるのではないかと興味を引かれました。
次に,「オンデマンドなゼオライト合成のための研究開発」と題して,津野地先生がご講演されました。AEIゼオライトの合成系を例に(1)ゼオライト合成における合成中間体(オリゴマー)の解析,(2) XRD,NMR,ESI-MS等を組み合わせた多角的な分析によるメカニズム推定をお話し頂いた後,ゼオライト合成の多様化やゼオライトの特性コントロールなどについてもお話し下さいました。また,層状ケイ酸塩上でのゼオライト様新規活性点の設計についてもご紹介いただきました。ゼオライト形成過程を明らかとするために固相分析だけでなく液相分析からも合成中間体をトレースされており,ゼオライトがどのように形成されるかのイメージをつかむことができました。
その後,「ゼオメタルの化学」と題して,織田先生がゼオライト細孔内で成り立つ原子レベルの電荷補償を利用することで,異常原子価をはじめとする既存元素の新奇電子状態の創成ができること,そしてそのユニークな活性点の利用例をご講演されました。前例の少ない現象に実験と理論の両面からアプローチされており,このような現象もあるのだなと納得とともに驚きました。極低圧域でもXeやCO2を固定することができるAgイオンやCaイオンサイトのご紹介がありましたが,従来の材料では達成困難な難題を解決するユニークな材料としての可能性に特に魅力を感じました。
最後に,「赤外分光法を用いたゼオライトの触媒特性評価」と題して大須賀先生がゼオライトの酸塩基をメインにご講演頂きました。筆者の研究テーマに酸塩基性質が絡んでくることはほとんどなく,不得手な領域なのですが,プローブの構造/ゼオライトの骨格構造/スペクトルのアサイメント/シフトなどを丁寧に記述して頂いており,酸塩基の知識が少ない筆者でもわかりやすいご講演でした。筆者個人としては,講演の後半でご紹介されたゼオライト細孔が発現するConfinement effectと酸・塩基特性の関係に興味を引かれました。
ゼオライトの合成から特性評価,触媒反応,反応機構解明まで幅広くゼオライトのご講演を頂き,ゼオライトに関する知見が深まったと感じます。講演頂いた先生方のご丁寧な説明,そして質疑応答の際の学生からの質問の多さが印象的でした。近年はCOVID-19の影響から現地とオンラインのハイブリッド形式が主流となり,オンラインから気軽に参加することが可能となりました。筆者もまたその恩恵を受けており,非学会員学生としてオンラインで参加させて頂きましたが,参加して実りのある機会でした。このような機会をご提供いただき感謝申し上げますとともに,ゼオライトセミナーが今後も活発に開催されることを祈っております。
This page was created on 2023-04-06T14:07:40.732+09:00
This page was last modified on
このサイトは(株)国際文献社によって運用されています。