日本ゼオライト学会 刊行物 Publication of Japan Zeolite Association

ISSN: 0918–7774
一般社団法人日本ゼオライト学会 Japan Zeolite Association
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5 アカデミーセンター Japan Zeolite Association Academy Center, 358-5 Yamabuki-cho, Shinju-ku, Tokyo 162-0801, Japan
Zeolite 40(1): 22-24 (2023)
doi:10.20731/zeoraito.40.1.22

レポートレポート

The 20th International Zeolite Conference(IZC2022)での活動報告書

東京工業大学物質理工学院応用化学系応用化学コース 横井研究室博士後期課程1年

発行日:2023年1月31日Published: January 31, 2023
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スペインのバレンシアで開催されたIZC pre schoolおよび20th International Zeolite Conference(IZC2022)に参加し,IZC2022ではポスター発表を行いました。開催都市バレンシアはいわゆる中世ヨーロッパの街並みがそのまま残っており,まるでタイムスリップしたかのような非日常感を味わうことができました。私が宿泊したホテルはセントラルマーケットと呼ばれるヨーロッパ最古の市場の目の前にあったため,滞在中は市場で食材を購入し簡単に調理して朝ごはんにする,まるで現地民のような生活を体験できました。

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図1. セントラルマーケットの様子

二日間をかけて行われたIZC pre schoolでは“FUNDAMENTALS AND APPLICATIONS OF ORDERED POROUS MATERIALS”をテーマとした,10人の先生方による講演を拝聴しました。脇原先生によるゼオライト合成の基礎知識を皮切りとして,マシンラーニングや分光分析,Molecular Simulationなど普段は勉強するのがなかなか難しい基礎知識や最新技術を学ぶことができました。プレスクールではbreak timeやlunchなど,参加者同士がコミュニケーションをとれる時間が多く設けられていました。

話は少し前後しますが時はスペイン出発前,私は若手研究者のIZC2022海外渡航費用助成に採択されたのを受け,名刺を作成することにしました。助成条件に「IZC2022への出席を契機に,積極的に海外との研究者と交流し,ネットワークの構築を目指すこと」とあったため,名刺をばら撒くことでネットワークの構築を図りつつ,交流の際の話の種になるかと考えたからです。とりあえず30枚刷ったので,この名刺をすべて配りきることを目標にして日本を発ちました。

話は戻りまして時はプレスクール。そういった目標を掲げていた私にとって, このbreak timeやlunchの時間は名刺をばら撒く絶好の機会でした。こうして意気込んで臨んだ私を待ち受けていたのはなかなかに非情な現実でした。参加者の大半はおそらく同じ大学で固まり楽しそうに談笑しており,部外者は非常に話しかけにくい雰囲気となっており,そもそも日陰者人見知りの私にとっては言語の壁以前に初対面の人に声をかけることが難題となりました。結局プレスクール二日を通して片手で数えるほどの枚数しか配ることができず,先の一週間弱の国際会議およびそこで行うポスター発表での雪辱を誓うこととなります。

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図2. IZC preschool会場での記念写真(筆者:中央)

中日一日,地中海見学を挟んだ後に,五日間にわたる20th International Zeolite Conferenceが開催されました。私は博士1年でありながら,あの忌々しき流行り病のせいで今回が初の現地参加する国際学会でした。そのため日本の学会との違いにたびたび驚かされることとなります。その第一号が,誰もスーツを着ていなかったということです。壇上に立つ発表者ですら私服らしき服を着ていました。そのため一見すると学会らしからぬ,和やかな雰囲気となっていました。次に驚いたのが圧倒的なまでの参加人数です。この学会は内容がゼオライトに限定されているのも関わらず巨大なホールの席を埋めるほどの人がおり,かつその参加者全員が,それぞれ独創的な研究を行っているという事実に感動すら覚えました。

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図3. IZC会場での記念写真(筆者:右から二番目)

私の研究内容はゼオライトを触媒として用いたメタン転換なので,触媒反応に関する講演を中心に聞いて回りました。単純な知識や最新の研究結果を把握できただけでなく,多くの研究者の独特な着眼点を学ぶことができたのは非常に大きな糧となったと思います。まず,やはりCO2改質に関する講演が多い印象を受けました。しかし,どうやって低コストでCO2を転換するか,そして転換先をどんな物質にするかというところにそれぞれの独創的な考え方や工夫がぎっしりと詰め込まれておりました。なかでも私が個人的に興味深いと感じたのは,ゼオライトにカーボンを詰め込んだ後にゼオライトを除去することで得られる炭素物質,通称Zeolite templated carbon (ZTC)を電極として用いてCO2を還元する研究です。ZTCは高表面積,高導電性,化学的安定性を有しており,さらに表面に酸素を多く含有していることから電極として最適だと説明していました。私はそもそもZTCの存在すら知らなかったため,ゼオライトと電気的な反応が合体したこの研究は思いも寄らないものであり,広い視野を持つことの重要性を改めて理解しました。

またCHAを用いたMTG反応や金属イオンと酸点を併せ持つBifunctional zeolite catalystなども大変参考になりました。前者の講演では,CHA触媒を用いたMTG反応の場合にデュアルサイクルメカニズムのうちアロマティクス側しか進行しないことを示しており,CHAを触媒として使う上で知っておくべき知識が身に付きました。後者の講演ではCO2からDMEへの直接転換に用いる触媒を3Dプリンターにて作製し,従来の触媒と反応活性を比較していました。3Dプリンティングによって従来の触媒調製法では不可能だった,異なる活性種の高精度な分布が可能となったことを報告する内容だったのですが,私は未だに信じ切れていません。もし本当にこのようなことが可能であるなら,自分の触媒への応用も期待できるため,今後も動向を注視していきたいと考えています。

勝負の二日目,私がポスターを行う日がやってきました。私は発表そのものよりも,いかにして名刺を押し付けるかで頭がいっぱいでした。(一日目は一枚も配れませんでした。)発表中は少しでもポスターの前で立ち止まってくださった方に積極的に声をかけ,とりあえず名刺を渡したうえで自己紹介をしていました。その甲斐があってか,10人以上の方に来ていただきました。質問内容はやはり反応メカニズムについてが目立ちました。この部分に関してはまだあまり詰めれてなかったため,納得させられる説明が満足にできず,自分の無力さを痛感しました。次いで反応条件を変えた際の反応結果の変化に関する質問が多く, 多くの方に興味を持ってもらえることの裏返しなのかと感じ,自信につながりました。始まる前は不安だった英語も,始まってしまえば意外となんとかなりました。来訪者の方々が気をつかって優しい英語で話してくれたのだと思います。

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図4. IZCポスター発表の様子(筆者:右)

会期中にはInformal Dinnerにも参加しました。簡易的な立食パーティーでワインを片手に参加者と交流したのち,円卓のテーブルに移動して豪華なディナーを堪能させていただきました。ここではこれまで接点のなかった日本人の参加者と主に交流しました。ご時世により日本人ですらこれまであまり知り合う機会がなかったため貴重なつながりを構築できました。本来であればその後もbanquetやITQへの訪問など,様々なイベントが予定されていたのですが,コロナにかかってしまい参加できなくなってしまいました。初めての国際学会だったので羽目を外しすぎました。体調管理を怠った結果,貴重な機会を失ってしまったのは非常に悔しいです。この失態は次への教訓として強く心に刻むことにします。

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図5. Informal Dinner会場の様子

今回,IZC2022に参加して,世界中の研究者と議論できたことは非常に良い経験となりました。また,最先端の研究に関する講演を聞くことは,単純な学びだけでなく,日々の研究へのモチベーションにもつながりました。このような貴重な機会をいただきありがとうございました。ちなみに名刺は数枚余る結果となりました。コロナにかかっていなければ間違いなく配りきれました。本当です。

末筆となりますが,「若手研究者のIZC2022海外渡航費用助成」によりご支援いただいたZMPC2018実行委員会並びに日本ゼオライト学会,そして関係者の皆様方に厚く御礼申し上げます。

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