日本ゼオライト学会 刊行物 Publication of Japan Zeolite Association

ISSN: 0918–7774
一般社団法人日本ゼオライト学会 Japan Zeolite Association
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Zeolite 40(1): 19-21 (2023)
doi:10.20731/zeoraito.40.1.19

レポートレポート

The 20th International Zeolite Conference(IZC2022)での活動報告書

東京工業大学物質理工学院応用化学系応用化学コース博士後期課程1年

発行日:2023年1月31日Published: January 31, 2023
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スペインのバレンシアで開催されたIZC school,20th International Zeolite Conference (IZC2022),およびポスター発表に参加しました。開催都市となったバレンシアはマドリード,バルセロナに次ぐ第三の都市で,中世の歴史的な建築物も多く素晴らしい都市でした。宿泊しているホテルまでの帰り道に,闘牛場やサンタ・マリア大聖堂を身近に見ることができ,その日の疲れも軽くなったように思います。バレンシアは本初子午線が通っているものの,夏季は時差が+2時間であるため,夜9時頃でも空は明るく,大きな違和感を抱きました。多くの方もご存知の通り,スペインはワインが有名で,会期中のCoffee breakやInformal Dinnerでも用意してくださり,バレンシアの食文化も堪能することができました。

はじめに,二日間にわたるIZC schoolでは,“FUNDAMENTALS AND APPLICATIONS OF ORDERED POROUS MATERIALS”というテーマの下,10人の著名な先生方による講演を拝聴しました。脇原先生によるゼオライト合成において鍵となる技術や,Rafael Gómez-Bombarelli先生によるMachine learningを用いた合成可能なゼオライトの予測に関する技術など,様々な視点からのゼオライトの基礎および最新技術を学ぶことができました。途中,コーヒーブレイクやランチの時間が設けられており,現地の名物であるパエージャ(通常,海鮮ではなくウサギの肉や豆,インゲン豆の入っている)や,オレンジジュースなどが振舞われました。会食中,数人の参加者に声をかけ,中国の研究者やオーストラリアの研究者達と仲良くなることができました。彼らとはお互いの研究や国の文化について話し合うことができ,とても有意義な時間となりました。

Zeolite 40(1): 19-21 (2023)

図1. IZC schoolの記念品

続いて,五日間にわたる国際会議では,世界で最先端の研究内容を目の前で聞くことができ,現地参加ならではの勢いを感じました。私自身,現地参加する国際学会は初めてであり,世界中でこんなにも多くのゼオライト研究者がいて,これだけ発想力豊かな研究が行われていることに感動しました。と同時に,自身の研究に対する意欲が一層掻き立てられました。これらの講演を通して,自身の研究を更に深める分析手法や,自身の研究を発展させ得る着想を得ることができました。会期中,多くの招待講演やKey note講演も行われ,既知・未知を問わず体系的な知識を得ることができて,とても得難い機会となりました。また,これまであいまいであったゼオライト転換や異なるpHでのゼオライト形成に関する理解を深められました。講演を拝聴する中で,カーボンブラックを用いた階層構造化やゼオライト表面のシリル化が,自身の研究と融合させることで,更に高性能なゼオライト触媒開発が可能であるとの着想を得ました。どのように組み込むかはまだ検討中ですが,これまでに報告例の少ないカーボン導入による粒子形態制御等に取り組んでいこうと考えています。

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図2. 国際会議 開会式の様子

IZA General Assemblyでは各委員会からの報告や委員会メンバーの投票に加え,今後,開催が予定されている21st IZC(中国,大連),22nd IZC(USA, Pennsylvania)の紹介がありました。

ポスターセッションでは,10人以上の方々に質問をいただき,また,相当数の方々にご覧いただきました。自身のポスター発表を通して,私のような駆け出しの研究者が周りから注目してもらえるような研究の一端を担わせていただいたことに,大きな喜びを感じました。また,自身の研究を更に前に進めるような助言を数多くいただき,大いに参考になりました。例えば,ゼオライト外表面の酸密度のみの評価だけでなく内部酸量も見積り,内部と外部の酸量の割合を算出することで,界面活性剤共存効果の価値がより明らかになるとのご指摘をいただきました。現在,他種ゼオライトに本研究成果が適応可能かどうかを調査中であり,他種ゼオライト間で内部と外部の酸量の割合等を比較することで,合成ゲル中での界面活性剤の働きの本質に迫っていけるのではないかとの気づきを得られました。他にも,界面活性剤共存効果として確認された,ゼオライト粒子の微粒子化や外表面に存在するAlブレンステッド酸点の位置制御化を切り離して考えた時,どちらの効果がMTO反応活性の向上に大きく寄与しているのかとの質問をいただきました。この対照実験に関して,すでに検討しているところであり,得られた微粒子化や酸点の位置制御化効果を正確に評価し,本成果をより多くの方に提供できるよう努めてまいります。一方で,彼らと議論する中で,英語での表現力の乏しさを痛感しました。帰国後は,再度このような場で議論させてもらえるような英語力を身につけるべく,精進してまいります。

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図3. 国際会議場での記念写真(筆者:左から二番目)

会期中,Coffee breakや他のポスターセッションの時間に海外の研究者に声をかけ,アメリカの研究者やベルギーの研究者達と仲良くなることができました。彼らと研究や国の文化について話し合うことができ,MITの研究者とは連絡先を交換しました。彼女の研究内容は,Machine learningを駆使したゼオライト合成に関する予測であり,非常に興味深く感じました。この技術は自身の研究に取り入れることができると感じており,現在彼女と連絡を取っています。

最後に,IZC2022主催のCity TourとInformal Dinnerでは,世界的な文化都市や伝統料理を堪能し,世界中の研究者と交流を深められました。歴史的な建造物や文化を知り,時に参加者と意見を交わすことは純粋に楽しく,また満ち足りた気分となりました。お酒を酌み交わしながらする研究に関する話や日常会話は,いつも以上に話が弾み,最近はコロナ禍でなかなか機会がなかったためか懐かしい気持ちになりました。思いがけなくも,日本人で初めてお会いする方々とも交流を深めることができ,コロナ禍に修士から入学した私にとって貴重なつながりを作れたと感じました。

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図4. City Tourで見学したセラノスの塔

今回,IZC2022に参加して,海外の研究者と議論・交流を深める貴重な経験をすることができました。また,気鋭の研究者から第一線の研究者による講演や,研究者との議論を通して多くの気づきを得ることができました。このような素晴らしい機会を与えていただけたことに感謝し,このような舞台に再び参加できるよう更に研究に邁進してまいります。

末筆ではございますが,「若手研究者のIZC2022海外渡航費用助成」によりご支援いただいたZMPC2018実行委員会並びに日本ゼオライト学会,そして関係者の皆様方に厚く御礼申し上げます。

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図5. 開催地バレンシアで名物のパエージャ

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