2022年度ゼオライトフォーラム参加報告
早稲田大学大学院先進理工学研究科先進理工学専攻一貫制博士課程3年
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2022年度ゼオライトフォーラムが6月7日にZoomを用いてオンライン開催されました。本年度は「多孔質材料の新たな可能性」と題して,ゼオライトやPCP/MOFに関する最先端の研究や実用化に向けた動向について,三井金属鉱業株式会社の遠藤慶徳様,京都大学/株式会社Atomisの樋口雅一先生,大阪公立大学の高橋雅英先生にご講演いただきました。
はじめに,三井金属鉱業株式会社の遠藤様から「高耐熱・高機能ゼオライトを利用した排ガス浄化触媒の開発」という演題でご講演いただきました。本講演では,はじめに排ガス浄化触媒を取り巻く環境や排ガス規制に関する世界全体の潮流を説明いただき,その後,三井金属鉱業株式会社にて開発された高耐熱性・高機能性HCトラップ触媒についてご紹介いただきました。社会の要求に対してどのように技術開発を行っていくのか,そのプロセスを学ぶと同時に,ゼオライトが排ガス浄化触媒の分野において大きな発展の余地があることを実感しました。
続いて京都大学/株式会社Atomisの樋口先生から「多孔性配位高分子(PCP/MOF)の商業化最新動向2022.6~PCP/MOF材料の基礎研究から社会活用へ~」という演題でご講演いただきました。PCP/MOF材料の基礎から商業化の例,またスタートアップ企業に関して,さらに最新のアプリケーションについてご説明いただきました。PCP/MOFは生み出されてから約30年が経過しますが,すでにビジネスフェーズの段階に移っていることを強く実感しました。アプリケーションの1つとして紹介されていた次世代スマート高圧ガス容器「CubiTan(キュビタン)」は既存のガスボンベよりも軽く安全になるということで,これから幅広く利用されていくことが期待されます。
最後に,大阪公立大学の高橋先生から「金属有機構造体薄膜の配向制御と機能化」という演題でご講演いただきました。PCP/MOFを金属水酸化物表面から成長させて配向薄膜として得る手法や,得られた薄膜のユニークな応用について解説いただきました。また,赤外分光法を用いて迅速かつ簡便にPCP/MOF薄膜中の有機基の配向に関する情報を得る手法についても解説いただき,X線回折法では判別しがたい架橋配位子の向きについても判別可能であるということで,非常に興味深い分析手法であると感じました。
2022年度のゼオライトフォーラムでは,多孔質材料の新たな可能性として,様々な多孔質材料について基礎からビジネス,最先端の研究まで幅広く学ぶことができた大変貴重な機会となりました。本年度は新型コロナウイルス感染対策の観点から,昨年度に続き懇親会なしのオンライン開催となりましたが,来年度には対面で参加できることを楽しみにしております。最後になりますが,本フォーラム開催に向けて,ご尽力いただきました関係者の皆様に深く感謝申し上げます。
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