第5回ゼオライトセミナー参加報告
岐阜大学自然科学技術研究科
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2022年1月7日に岐阜大学サテライトキャンパスにおいて第5回ゼオライトセミナーが開催されました。筆者はゼオライト膜の合成について研究しており,新たな知見を広げて自身の研究内容をより充実させたものにできればと考え,このセミナーに参加させて頂きました。今回のセミナーでは筑波大学の山岸洋先生,成蹊大学の里川重夫先生,株式会社豊田中央研究所の溝下倫大様,物質・材料研究機構の早瀬元様,名古屋大学の長谷川丈二先生の5人のご講演がありました。
最初に,「分子性多孔質結晶の合成と応用」と題して,山岸洋先生が嵩高い分子のファンデルワールス結合によって多孔化した結晶についてのご講演がありました。今回は1,3,5-tri(3,5-bipyridylphenyl)-2,4,6-trimethylbenzeneを用いた標準状態で安定した空間を含む分子結晶を紹介されました。どのような分子が多孔質化した結晶となり得るのか分からないというお話を伺って,さまざまな分子の新たな多孔質材料化の可能性を感じました。
次に,「ゼオライトの酸性質を利用した有機硫黄化合物の直接分解」と題して,里川先生によるゼオライトを用いた脱硫プロセスにおけるtert-ブタンチオールとジメチルスルフィドの分解についてのご講演がありました。さまざまな種類の金属イオンを交換したH-*BEA型ゼオライトを使用することで反応率を向上させたことを紹介されました。修士課程の身としては,研究室ベースではなく,企業からの視点で研究を進めていらっしゃる先生の姿が印象的で,工業化を目指す上での視点を養うことができました。
3講演目に,「ナノポーラス構造を有する有機シリカの合成と機能化」と題して,溝下様によるナノポーラス材料の実用的な利用についてのご講演がありました。樹脂用反射コーティングやレーザー脱離/イオン化質量分析用の基板への応用を紹介されました。構造制御やナノレベルでの材料設計が材料としての機能および性能の向上につながることを確信しました。
4講演目に,「ベーマイトナノファイバーを用いた三次元構造体作成」と題して,早瀬様によるベーマイトナノファイバー(BNF)を用いた多孔体材料についてのご講演がありました。BNFを被覆・接着させることで三次元構造化したシルセスキオキサン複合体やBNFを骨格内部に取り込むことで構造を強化したレゾルシノール–ホルムアルデヒド多孔体を紹介されました。BNFの特性やBNF複合化多孔体の可能性にとても魅力を感じました。
最後に,「還元型セラミック多孔体の作成法と細孔構造制御」と題して,長谷川先生がシリコンカーバイドの細孔制御についてのご講演がありました。架橋ポリシルセスキオキサン多孔体の細孔制御と熱分解挙動やTiを組み込んだ場合の特性についても紹介されました。また,ハードな特性を持ちながらも柔らかい構造を有する材料も紹介され,多孔体材料の新たな展望を見ました。
今回,第5回ゼオライトセミナーに参加してみて,ゼオライト以外の多孔体にも興味深い特性があり,新たな材料の可能性を広げることを強く確信しました。ここ2年,新型コロナウイルス感染症に伴い,オンラインでの議論が多かった中で今回はオンサイトとオンラインの併用したハイブリッドのセミナーとなりました。私はオンサイトで参加しましたが,講演後の闊達で白熱した議論やセミナー後に先生方や学生方が新たに議論し,交流する姿を見て,オンサイトでの開催に大きな意義を感じました。第6回ゼオライトセミナーの時には,新型コロナウイルス感染症が収束した状況になり,今回以上のオンサイトでの活発な交流と懇親ができることを祈っております。
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