日本ゼオライト学会 刊行物 Publication of Japan Zeolite Association

ISSN: 0918–7774
一般社団法人日本ゼオライト学会 Japan Zeolite Association
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5 アカデミーセンター Japan Zeolite Association Academy Center, 358-5 Yamabuki-cho, Shinju-ku, Tokyo 162-0801, Japan
Zeolite 39(1): 10-20 (2022)
doi:10.20731/zeoraito.39.1.10

解説解説

レーザー脱離イオン化質量分析法へのゼオライトの利用Application of Zeolite to Laser Desorption Ionization Mass Spectrometry

1東洋大学大学院理工学研究科応用化学専攻Department of Applied Chemistry, Graduate School of Science and Engineering, Toyo University ◇ 〒350–8585 埼玉県川越市鯨井2100

2東洋大学バイオナノエレクトロニクス研究センターBio-Nano Electronics Research Centre, Toyo University ◇ 〒350–8585 埼玉県川越市鯨井2100

3警視庁科学捜査研究所Criminal Investigation Laboratory, Metropolitan Police Department ◇ 〒100–8929 東京都千代田区霞が関2丁目1番1号

4放送大学教養学部Materials, Energy and Environmental Sciences, The Open University of Japan ◇ 〒261–8586 千葉県美浜区若葉2–11

受理日:2021年10月20日Accepted: October 20, 2021
発行日:2022年1月31日Published: January 31, 2022
HTMLPDFEPUB3

質量分析における分子イオン化法の一つとしてマトリクス支援レーザー脱離イオン化法がある。マトリクスと呼ばれる弱有機酸分子や金属・半導体粒子と試料分子との混合結晶を作成し,主に紫外レーザーを照射することで試料分子を壊すことなくソフトにイオン化する手法である。飛行時間型質量分析装置と組み合わせることで分子量による分析が可能になる。この手法は生体高分子など難揮発性分子をイオン化させ気相中に脱離できる優れた能力を持つが,得られるイオンの強度,再現性,低分子量試料への応用などいくつかの課題があった。この解説ではゼオライトをレーザー脱離イオン化法に利用することで上記の問題点が解決できることを示した。光励起の条件やイオン化機構を明らかにし,開発した手法を利用して尿中に含まれる薬物と代謝物の定量分析を行った。さらに指紋中に含まれる薬物と代謝物の測定にも応用した。ゼオライトがレーザー脱離イオン化法に非常に有効に作用することを示した。

Matrix-assisted laser desorption ionization mass spectrometry (MALDI MS) is a soft ionization method used to determine the molecular weight of an analyte. MALDI MS enables us to detect nonvolatile compounds, such biopolymer as proteins and peptides, which are difficult to detect by other ionization methods. Some organic acids such as α-cyano-4-hydroxycinnamic acid (CHCA), sinapinic acid (SA), 2,5-dihydroxybenzoic acid (DHBA), and 2,4,6-trihydroxyacetophenone (THAP) are often used as the matrix. However, these organic matrices dissociate during the desorption/ionization process, thereby limiting the application of MALDI MS to low molecular weight compounds. In addition, the peak intensity of a protonated analyte is sometimes suppressed by an alkali metal ion adducted species. In order to overcome those drawbacks, we have proposed various techniques so far. Especially, we found that zeolites work very effectively on the above problems. In this commentary, we explained how zeolite is effective for laser desorption/ionization mass spectrometry; they enhanced the peak intensity of protonated analyte and suppressed alkaline cation addition peaks. It was also found that analyte can be ionized by adducting alkali metal cations existing on the zeolite surface. Quantitative analysis of drugs and metabolites contained in urine and detecting drugs contained in fingerprints were also presented.

キーワード:ゼオライト;マトリクス支援レーザー脱離イオン化法;質量分析法;薬物;定量分析

Key words: zeolite; matrix-assisted laser desorption/ionization; mass spectrometry; drugs; quantitative analysis

1. はじめに

質量分析法は最も基本的な分析手法の一つであり,分子を様々な手法でイオン化させ電子増倍管を用いて検出する。分子をイオン化させるために様々な手法があり,古くは電子を衝突させる電子イオン化法(Electron Ionization; EI)や試薬ガスと呼ばれる気体に分子を衝突させてイオン化させる化学イオン化法(Chemical Ionization; CI)などがある。液体クロマトグラフ質量分析法のイオン源として広く用いられるエレクトロスプレーイオン化法(Electrospray Ionization; ESI)や大気圧化学イオン化法(Atmospheric Pressure Chemical Ionization; APCI),最近では噴射した溶媒を分子に衝突させてイオン化させる脱離エレクトロスプレーイオン化法(Desorption Electrospray Ionization; DESI)なども有名である。そのような中,2002年に島津製作所の田中耕一さんがノーベル化学賞を受賞されたマトリクス支援レーザー脱離イオン化法(Matrix-assisted Laser Desorption Ionization; MALDI)がある1)。これはマトリクスと呼ばれる有機分子または無機化合物と測定したい試料分子との混合結晶を作成し,主に紫外レーザーを照射することで試料分子をイオン化させる手法である。MALDI法は他のイオン化法では難しい生体高分子のイオン化,つまり難揮発性分子のイオン化が可能である点が優れていると言え,近年では生体分子との相性を利用し質量イメージングの研究が盛んに行われている。

MALDI法は利点ばかりかというとそのようなことは無く,いくつかの欠点を持っている。例えば(1)マトリクスとして使用する分子がレーザー照射によって分解してしまい低分子量領域に沢山のピークが出てしまう。このため低分子量試料の検出が難しい。(2)イオン化の効率が他のイオン化法に比べて低い。(3)ピーク強度の再現性が乏しく,相対標準偏差で少なくとも30–50%程度の強度のばらつきがある。このため定量分析に向かない。(4)これは議論が分かれる所かもしれないが,マトリクス分子を介した試料分子のイオン化の仕組みが未だ完全に明らかになっていない,などである。世界中の研究者や技術者がこれらの問題点を解決するための研究を行ってきており,例えば(1)については,金属・半導体微粒子や分子修飾表面の利用,また他分子の混合(Co-matrix)といった有効な方法が報告されている2–10)。我々もこの問題点に関する解決法を報告しており,その一つがシクロデキストリン包接有機マトリクス分子を利用したイオン化であった。一般的なMALDI法で利用される有機マトリクス分子をシクロデキストリン細孔内に包接させただけの単純な化合物であるが,細孔内の有機分子を光励起した際,有機分子の開裂を引き起こす余剰な振動エネルギーをシクロデキストリンが熱浴として取り除いてしまう。つまりこのような化合物をMALDI法に利用すると結果として有機マトリクス分子の開裂を完全に防ぐことができスペクトルを極めて単純化することに成功した11)

しかしながら問題点(2)と(3)については改善が難しく,その結果MALDI法は定量分析に不向きであると現在でも広く認識されている。そのような状況下で我々はゼオライトの利用を提案し,問題点の包括的解決を目指す研究を行ってきた12)。ゼオライトは表面に存在するブレンステッド酸性水酸基から効率的なプロトン供与が期待できる。また吸着点でもあるブレンステッド酸性水酸基がゼオライト表面上にほぼ均等に分布している。このため有機マトリクス分子をゼオライト表面に吸着させた複合体を用いてレーザー脱離イオン化質量分析法を行うと,イオン強度増強と再現性向上を同時に実現できた。実際,イオン強度の上昇とともに相対標準偏差~3%台を実現しヒト血清中ステアリン酸の定量分析や尿中薬物の定量分析を行った。直近では警察との共同研究として,指紋中に分泌された薬物と代謝物の同時その場観測に成功しただけでなく,証拠としての指紋の保存が質量分析測定後でも可能であることを示した13–15)。定量性が上昇することで,ガン細胞中薬物の質量イメージングにも応用した16)。一見すると質量分析法とほとんど関係が無さそうなゼオライトであるが,特にレーザー脱離イオン化法において非常に素晴らしい働きをしてくれることがわかってきた。今回はゼオライトがレーザー脱離イオン化の過程においてイオン強度の増加や再現性の向上をもたらす仕組みを説明し,具体的な研究例を示していく。

2. ゼオライトを用いたレーザー脱離イオン化法

2.1 光励起の様子

レーザー脱離イオン化法では,試料分子とマトリクス分子の混合結晶を作成しレーザーを照射して試料分子をイオン化させる方法であるが,どのような光励起条件下で脱離イオン化が行われているのかを励起速度(excitation rate)を求め考えてみる。まず励起用のパルスレーザーとしては一般に窒素レーザー(波長337 nm)が用いられるが,YAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザーの4倍波(266 nm),3倍波(355 nm)も同時に用いられる。例えば,2.5,5,7,10 µJのエネルギーを持つ波長266 nmのレーザー光が測定の際におよそ200 µmの直径を持つ円に集光されたと仮定する。測定に用いたレーザーパワーを266 nmの光子一つのエネルギーで割り,単位面積あたりの光子数を求めると1.07×1020,2.14×1020,3.00×1020,4.28×1020個/m2と計算できる。さらに我々の実験で用いるYAGレーザーのパルス時間幅がおよそ1 nsとわかっているので,単位時間(s)あたり単位面積(m2)あたりの光子数(フルエンス率;F)は1.07×1029,2.14×1029,3.00×1029,4.28×1029個/s·m2となる。MALDI法で一般的にマトリクスとして用いられる2,4,6-トリヒドロキシアセトフェノン(Trihydroxy Acetophenone; THAP)のアセトニトリル溶媒中でのモル吸光係数は266 nmにおいて6120 mol−1 dm3 cm−1である。ここからTHAP分子一つあたりの吸収断面積(σ)は1.02×10−21 m2と求められる。MALDI法では試料分子とマトリクス分子の混合結晶にレーザー光を照射するため本来であれば固体の吸光係数が必要であるが,今回は溶液中の吸光係数で代用した。Fσつまり単位時間あたりの励起回数(励起速度)を求めると,1.1×108,2.2×108,3.1×108,4.4×108/sと求められる。わかりやすくするために逆数を求めると,9,4.5,3.2,2.3 nsに1回の割合でTHAPが光励起を受けることになる。つまり通常の測定で用いるレーザーパワーの範囲では,多光子励起はほとんど起こらず,1光子励起が主であることがわかる。市販の装置で用いられることが多い窒素レーザーの場合は,波長が337 nmと先の見積と比べ長波長であるだけでなく,パルス時間幅も2.5 ns程度である。このため多光子励起はさらに起こり辛くなる。まとめると,MALDI法におけるイオン化の過程は,多光子励起を伴った光学的なプロセスではなく,極めて化学的なプロセスを経て起きていると言える。

2.2 ゼオライト表面上へのTHAP分子の導入

さて,ゼオライトをレーザー脱離イオン化法に適用するにあたり,ゼオライト表面上に先の見積で使用したTHAPを二通りの方法で導入した。今回使用したゼオライトは触媒学会の参照触媒であるJRC-Z-HM20(MOR型)とJRC-Z-HY5.6(FAU型)を利用した。ゼオライトは大気中500°Cで6時間焼成し,THAPはメタノールから3回再結晶したものを以下の実験に利用した。まずガラス真空内でゼオライトを400°Cで12時間加熱し,表面上に吸着している水分子を排除した。室温に戻した後,アルゴンガス環境下でTHAPの無水ジクロロエタン溶液を導入し12時間攪拌した。するとその間に溶液の色が薄い黄色に変化し,ゼオライト表面上へのTHAPの化学吸着が行われたことが示唆された。ろ過の後,得られた固体をジクロロエタンで洗浄して外表面に物理吸着しているTHAPを洗い流した。得られた固体はドライボックス中で十分に乾燥させた。このようにして得られたゼオライトとTHAPの混合物を,THAP/HM20(e)およびTHAP/HY5.6(e)と表記する。(e)は排気(evacuation)の意味である。ゼオライト表面上へのTHAPの吸着量はクロロホルム溶媒中でのTHAPの吸収強度から算出した。一般的にゼオライトを含む溶液では散乱のため紫外可視吸収スペクトルは測定できない。しかしクロロホルムとゼオライトの屈折率がほぼ等しいことから(n~1.44; index matching)溶液は透明になり,測定が可能となる。ここからTHAPとゼオライトの質量比は1 : 60(±4)(THAP/HM20(e)),1 : 40(±2)(THAP/HY5.6(e))と求められた。THAP分子のゼオライト表面への導入はもう一つの方法で行われた。これは両者を乳鉢に導入し乳棒でおよそ10分丹念に混合する方法である。混合比は先の排気による導入との比較のために,1 : 60(HM20),1 : 40(HY5.6)とした。このようにして得られた固体を,THAP/HM20(ne)およびTHAP/HY5.6(ne)と表記する。(ne)は非排気(non-evacuation)の意味である。HM20やHY5.6の表面上に水分子が吸着した状態で,その上にTHAPを導入した形になっている。

Fig. 1(a)にTHAP/HM20(e)と固体THAPの拡散反射スペクトル,比較のために脱水アセトニトリル(ACN)溶液中でのTHAPの紫外可視吸収スペクトルを示した。メインピークの波長は280 nmから290 nmにわずかに長波長シフトしているもののTHAP/HM20(e)のスペクトルは固体のスペクトルではなく溶液中のスペクトルに非常によく似ていることがわかった。つまりゼオライト表面上に吸着されたTHAP分子は溶液中と同じように単分散されているということが理解できた。Fig. 1(b)では,THAP/HM20(ne)の拡散反射スペクトルを示した。メインのピークがTHAP/HM20(e)と同様に290 nmに観測されるため,THAP分子が単分散されて存在していることが示唆されるが,330および480 nm付近のピークの強度が増加している。330 nm付近のピークは,水を含んだ溶媒中で測定した紫外可視吸収スペクトルとの比較により,ゼオライト表面に吸着した水分子に関係すると考えられ,480 nm付近のピークは前処理中に残ったTHAPの固体によるものと考えられた。つまり,THAP/HM20(e)ではゼオライト酸性水酸基とTHAP分子が直接相互作用する形で吸着しており,THAP/HM20(ne)では酸性水酸基は水分子を介してTHAP分子と相互作用しているということがわかった。ここで図中に掲載した構造は量子化学計算(B3LYP/6-31G (d,p))により求めたTHAP/HM20(e)およびTHAP/HM20(ne)の最適構造である。

Zeolite 39(1): 10-20 (2022)

Fig. 1. (a) Diffuse reflectance of THAP/HM20(e) and solid-state THAP. UV-vis absorption spectrum of THAP in acetonitrile is shown by a broken line for comparison. (b) Diffuse reflectance spectrum of THAP/HM20(ne).

2.3 マススペクトルの比較

次に実際のレーザー脱離イオン化質量スペクトルを観測した。測定までの流れを簡単に説明すると,THAP/HM20(e)またはTHAP/HM20(ne)をアセトニトリルと水の混合溶媒(体積比7:3)に懸濁させたものをマトリクス溶液として利用した。このときTHAPの量が0.17 mg/mLとなるように濃度を調節した。一方,ペプチドの一種であるサブスタンスP(Substance P; SubP)とニューロテンシン(Neurotensin; Neu)を分析用試料として利用した。上記と同じ混合溶媒に溶かすことで濃度0.1 mg/mLの試料溶液を調製した。マトリクス溶液および試料溶液それぞれ0.5 µLをステンレス基板上に滴下して溶媒を乾燥させた後,レーザーを照射してイオンの測定を行った。測定には研究室で作成した質量分析装置を利用し,励起はNd:YAGレーザーの4倍波(266 nm, 10 Hz),パルスエネルギー5 µJを用いた。レーザー照射によって真空チャンバー中に生成したイオンは電圧2.3–4.0 kVで二段加速され,TOF管(time-of-flight)を通ってMCP(micro channel plate)検出器によって検出された。

Fig. 2にいくつかの質量スペクトルを示した。まずゼオライトを用いない従来型のMALDI法を用いるとどのようなスペクトルが得られるのかをFig. 2(a)に示した。THAP分子をマトリクスとしてSubPを測定した従来法の結果である。スペクトルを見ると質量電荷比(m/z)が350以下の付近にTHAP由来のピークが数多く観測される。THAPにプロトン(H+)やナトリウムイオン(Na+)が付加したピークだけでなく,THAPの分解物にH+やNa+が付加したピークも高強度で観測されてしまう。一方,試料分子であるSubP由来のピークはm/z=1350付近に観測されるが,この場合もSubPにH+やNa+さらにはK+が付加したピークが観測されてしまう。強度もTHAP由来のピークと比べて極めて低い。このような状況はゼオライトを用いると改善できる。Fig. 2(b)にTHAP/HM20(e)をマトリクスとして用いてSubPを測定した際のスペクトルを示した。強調したい点は,H+が付加したSubP由来のピークがFig. 2(a)と比べて5倍程度増加していることと,Na+が付加したSubPのピークがほとんど観測されなくなるということである。THAPのピークに関してもH+が付加したピークが主に観測されており,ゼオライトを利用することでプロトン付加が選択的に起きていることがわかる。ちなみにFig. 2では示していないがゼオライトのみではSubPのイオン化は全く行われない。ゼオライトは今回使用したレーザー波長266 nmに吸収を持たないため当然ではあるが,ゼオライト単独では試料分子をイオン化させる能力は無い。

Zeolite 39(1): 10-20 (2022)

Fig. 2. (a) Mass spectrum of the model peptide, SubP, using THAP (without zeolite). (b) Mass spectrum of SubP using THAP/HM20(e). (c) Mass spectrum of SubP using THAP/HM20(ne).

次にTHAP/HM20(ne)を用いた場合のマススペクトルをFig. 2(c)に示した。SubPを試料分子として測定した結果を示しているが,Fig. 2(a)(b)と比べてスペクトルが改善されていることが一目瞭然かと思う。SubPとTHAPともにプロトンが付加したピークしか観測されず,SubPのピーク強度に至っては従来法と比較しておよそ30倍増加していることが確認できた。このような効果はSubPを測定した場合に限らず,他のペプチドNeuでも同様に観測された。この場合もNeuのピーク強度が従来法に比べておよそ30倍増加したことが確認できた。またここには掲載しないが,ゼオライトHY5.6を用いた場合でも同様にプロトン付加選択性とピーク強度上昇が観測された。まとめると,HM20やHY5.6といったプロトン型ゼオライトを使うと,プロトン付加ピークが選択的に得られるだけでなく,試料ピーク強度が上昇するということが理解された。それではプロトン型ゼオライトではなく,Na型,K型といったゼオライトを使うとどのような結果になるのかと疑問を持つと思われる。その結果をFig. 3に示した。HM20表面のプロトンをNa+,K+,Cs+に置換したものをマトリクスとして利用し,糖分子の一つであるマルトヘキサオースを測定した。Fig. 3を見ていただくとわかるが,マルトヘキサオース(M)にNa+,K+,Cs+が付加したピークが観測されていることがわかる。つまりゼオライトが持つカチオンによって試料分子に付加するカチオンが決定されるということがわかった17)

Zeolite 39(1): 10-20 (2022)

Fig. 3. Mass spectra of maltohexaose (M) measured with (a) THAP/NaM20(ne), (b) THAP/KM20(ne), and (d) THAP/CsM20(ne).

2.4 イオン化の機構について

それでは一体どのような機構に基づいて試料のイオン化が行われているのかを考察する。今回用いているTHAPという分子の分子構造はFig. 4(a)の左側に示した構造にも描かれているようにカルボニル基とオルト位の水酸基が分子内水素結合を形成している。このような分子は電子励起状態において分子内プロトン移動反応(Excited State Intramolecular Proton Transfer; ESIPT)を起こすことが知られている。つまり電子励起状態ではオルト位の水酸基からプロトンがカルボニル基へ移動する。これによりオルト位は-O,カルボニル基の部分は=OH+といった構造(S1′)を取る。つまり電荷が分離した状態が分子内に出来上がる。しばらくしてS1′状態は電子基底状態へ失活するが,電子基底状態にポテンシャルの極小(S0′)が無いため,結局元のS0へ戻っていく。さて,このような振る舞いをするTHAP分子がゼオライト表面に存在するとどのようなことが起きるのか。結論から言うと分子内プロトン移動したTHAPへ中間に存在する水分子を経由してゼオライトのプロトンが移動し[THAP+H]+,が出来上がる。そしてZeo. . . H2O. . . [THAP+H]+という構造が電子励起状態でも基底状態でも安定に存在することができるということがわかった。これはすべてゼオライトが持つ強い極性によって引き起こされる。そして電子励起状態のZeo. . . H2O. . . [THAP+H]+からZeoとH2O[THAP+H]+への解離は0.4 eVほど安定であるため,容易に反応が進んでいく。このようにして[THAP+H]+が生成される12)

Zeolite 39(1): 10-20 (2022)

Fig. 4. Schematic potential diagram of (a) THAP, and (b) stabilization of charge-separated matrix in the electronic ground and excited state by the presence of zeolite.

結局,試料分子へのプロトン付加までを簡単に説明すると以下のようになると考えている。まず測定用のステンレス基板上にマトリクスと試料溶液を滴下して両者の混合結晶を作ることで,ゼオライト,THAP,試料分子(SubPなど),残存溶媒が混然一体となった状態が出来上がる。ゼオライトは強酸(超強酸),THAPは弱酸,SubPの酸度は極めて低い状況なので,まずTHAPの光励起によってTHAP分子中に電荷の偏りが生じると(分子内プロトン移動),それを中和するようにゼオライトからTHAPへプロトンが供給される([THAP+H]+)。そしてTHAPが電子励起状態から電子基底状態へ緩和する際に,周辺に存在する酸度が低い試料分子へプロトンが受け渡される。このようなプロトンのリレーが行われ試料へのプロトン付加が進行すると考えている。従って,ゼオライトがプロトン型からNa型,K型に代わったとしても,THAPとゼオライトの中間に位置する水分子を経由してTHAPへ金属カチオンが供給され,結果的に試料分子を金属カチオン付加によってイオン化することができると考えている。さてこれまでゼオライト表面上に吸着させる分子としてTHAPを利用してきたが,このような役割を果たす分子は他にもある。例えば一般のMALDI法でマトリクス分子として広く用いられている2,3-ジヒドロキシ安息香酸(Dihydroxy Benzoic Acid; DHBA)や以下で用いるα-シアノ-4-ヒドロキシけい皮酸(α-Ciano-4-Hydroxycinnamic Acid; CHCA)などでも同様の効果が得られる。ゼオライトの骨格構造ついては利用したMOR型,FAU型の他にもMFI型のZSM5,BEA型のHB25でも同様の結果を得ることができた。MOR型のゼオライトでSiO2/Al2O3比を10,15,20と変化させた場合,試料分子(SubP)にプロトンが付加したピークの強度はHM10>HM15>HM20の順で大きかった(強度比~10 : 7 : 5)。しかしながらアルミ量の多いゼオライトを使用した際にはTHAPの分解ピーク強度も大きくなるという結果が得られた。アルミの含有量が高いゼオライトは骨格構造が壊れやすくなるという問題点があるが,これらの結果を踏まえるとTHAPの開裂を促進してしまう余剰振動エネルギーをゼオライト骨格振動が緩和先として引き受けることでTHAPの開裂が抑制されているということが理解できる。高アルミのゼオライトでは骨格が壊れやすい(骨格振動の状態密度が低い)ためTHAPの振動緩和がスムースに行かず,結果としてTHAPが開裂してしまう。従って分析化学的にできる限り単純なマススペクトルを得たい場合にはSiO2/Al2O3比20程度のゼオライトの利用が最良ではないかと考えている。

3. 薬物測定への応用

3.1 尿中に含まれる薬物と代謝物の測定

次に実際の系に応用してみた。ここではTHAPの代わりにCHCAを使用した。以下の実験については,我々の手法の一般性を示すために市販の飛行時間型質量分析装置(MALDI microMX,Watersまたはautoflex-05,Bruker)を利用した。このため励起は窒素レーザーを利用し(6.0 µJ),波長は337 nmである。またFig. 2の結果からもわかるように大気中でゼオライトと有機マトリクス分子を乳鉢で混合するものが良好なイオン強度をもたらすため,以下ではCHCA/HM20(ne)を実験で用いるとともに,これを単純にCHCA/HM20を示すことにする。

まず風邪の症状によって4時間前に市販の風邪薬を摂取した方から尿を入手した。風邪薬には主成分として300 mgのアセトアミノフェン(Acetaminophen; AAP)を含んでおり,尿中にはAAPまたはその代謝物が含まれる。入手した尿をそのまま従来のMALDI法を用いて測定した結果をFig. 5(a)に示した。尿1 µLをそのままステンレス基板上に滴下し,ゼオライトを含まないCHCAのみのマトリクス溶液1 µL(濃度4 mg/mL)を滴下した。このため尿には一切の前処理を加えていない。AAPの分子量は151であるが,Fig. 5(a)に示したスペクトルにはAAP由来と思われるピークだけでなく,マトリクス由来のピークも確認できなかった。尿には様々な夾雑物が存在しており,それらがAAPのイオン化だけでなくCHCAのイオン化も阻害した結果,何もピークが得られなかったと考えられる。つまり従来のMALDI法では尿中薬物の直接観測は不可能であることがわかった。しかしながらこのような状況はゼオライトを用いると劇的に改善できる。Fig. 5(b)に同じ尿試料をCHCA/HM20を用いて測定した結果を示した。一目瞭然であるが,スペクトルがきれいに測定できた。まずm/z=152にAAPにプロトンが付加したピーク([AAP+H]+)が観測できた。またAAPの代謝物であるグルクロン酸抱合体(Acetaminophen Glucuronide; GAAP,分子量327)のプロトン付加体ピークもm/z=328に観測できた。

Zeolite 39(1): 10-20 (2022)

Fig. 5. Mass spectra of urine from a subject who took 300 mg of AAP four hours before, measured with (a) CHCA (only), (b) CHCA/HM20 without any pretreatment. Mass spectra of urine from a subject who took methamphetamine (MA) measured with CHCA/HM20.

ここで薬物の代謝について少し述べると,多くの薬品は肝臓中でシトクロムP450酵素によって酸化や還元,または加水分解を受ける。この反応を第I相反応と呼ぶ。さらにグルクロン酸やアミノ酸,硫酸などによる抱合反応を受けることによって疎水性の強い薬物が親水性になり,体内を動き回れるようになる。この反応を第II相反応と呼ぶ。肝臓で生成された抱合体のほとんどは尿などと一緒に対外へ排出されるが,一部は腸内細菌によって脱抱合し再び肝臓に吸収され代謝される。これを腸内循環と呼ぶ。つまり,薬物は主に疎水性であるが代謝物である抱合体は親水性となり,この性質の違いが従来の分析法に困難をもたらしてきた。つまり従来の尿中薬物分析では,約1日間の酵素反応を使って例えばグルクロン酸抱合体からグルクロン酸を切り離す必要があった。抱合体は両親媒性であるため分液漏斗などによる抽出が困難なためである。従って抱合体の切断と濃縮といった作業を行った後分析することになる。さてここでFig. 5(b)を改めて見ていただくとわかるように,まったく前処理をすることなく,AAPとグルクロン酸抱合体(GAAP)の両方が同時に観測できている。ゼオライトを利用したレーザー脱離イオン化法が極めて有効であることがわかっていただけると思う。次に覚せい剤を使用した方の尿を測定した結果をFig. 5(c)に示した。覚せい剤はメタンフェタミンと呼ばれる分子であり,Fig. 5ではMAと略記した。MAを体内に摂取すると,約14–16%がp-ヒドロキシMA(pOHMA)に変換されることが知られている18)。またMAの2–3%がアンフェタミン(AM)に変換される。他の代謝物としてはノルエフェドリン(NEP),安息香酸,フェニルアセトンなどがある。Fig. 5(c)を見ると,MAのプロトン付加体ピークの他に,安息香酸とフェニルアセトン以外の代謝物のプロトン付加体が観測できていることがわかる。pOHMAはさらに代謝を受けてグルクロン酸抱合体(GpOHMA)を形成するが,抱合体からグルクロン酸が外れたものにプロトンが付加したピークも観測されている。ここでは示さないが,MAの他,睡眠薬であるトリアゾラム,抗菌薬のメトロニダゾールなども尿中より観測できている。

さて,この文章の冒頭にMALDI法の欠点として再現性が極めて低いため定量分析が行えないということを述べた。この問題点についてもゼオライトは大きな改善をもたらしてくれることを次に示す。Fig. 5(b)で示したAAPを服用した人の尿サンプルを使い,尿中に含まれる薬物の定量分析を行った。ここでは試料作製時における結晶成長過程や脱離イオン化効率がAAPとほぼ同じと考えられる同位体(D4-AAP)を使い定量を行った。まず尿中のAAPの濃度を決定するにあたり検量線の作成が必要となる。ここでは,D4-AAPの量を1 mgに固定してAAPの量を0.48,1.37,1.80,4.32,7.21 mgと変化させた標準溶液を作成した。その溶液から得られた[AAP+H]+と[D4-AAP+H]+の強度比を計算し図示したものがFig. 6(a)である。相関係数が約1の優れた直線性が得られたことがわかる。次に実際の尿試料1 gにD4-AAP 1 mgを添加後,室温で十分に時間をおいて平衡に達した試料を測定した。その結果をFig. 6(b)に示した。[AAP+H]+と[D4-AAP+H]+の強度比測定を9回行い,尿1 gに含まれるAAPの量,3回測定ごとの平均量,標準偏差(SD),3回測定ごとの相対標準偏差(RSD)などをTable 1に示した。Table 1では測定の相対標準偏差が約3%になっている。冒頭でも述べたが,従来のMALDI法ではRSDは30–50%というものが普通であり,レーザーパワーを上げると100%という場合もある。このため定量分析に向かないというよりも定量分析ができない状況であるが,我々の手法では3%程度と非常に低く抑えられており,定量分析が十分に可能であることがわかる。これはゼオライト表面上にほぼ均一に分布している酸性水酸基上にCHCA分子が吸着するためであり,従ってCHCAによりイオン化される試料分子も空間的な不均一が無く,再現性良く観測されることになる。今回はAAP 300 mgを含む市販のかぜ薬を服用して,4時間後に採取された尿からの測定であったが,約25%が一度に代謝されることおよび一回の尿の総量を30 mLと仮定すると19),1 mL(~1 g)の尿中に約4.9 mgのAAPが含まれると予想できる。今回得られた値はTable 1より5.29 mgであったので,ほぼ妥当な値であったと考えられた。最後に得られたスペクトルから信号対雑音比10に対応する定量限界(LOQ)を計算すると170 ng(1.12 nmol)と推定され,また信号対雑音比3に対応する検出限界(LOD)は,51.0 ng(0.337 nmol)と計算することができた。

Zeolite 39(1): 10-20 (2022)

Fig. 6. (a) Regression line for the plot of the peak intensity ratio vs. the amount ratio of non-labeled AAP to D4-AAP. (b) Mass spectrum of urine containing D4-AAP as the internal standard.

Table 1. Measurements of AAP in urine
sample
spot no.
estimated value (mg/g)interoverall
averageSDRSD(%)averageSDRSD(%)
#15.23
#25.605.450.162.9
#35.53
#45.35
#55.145.190.122.25.290.193.6
#65.08
#75.45
#85.205.230.173.2
#95.04

3.2 指紋中に含まれる薬物と代謝物の測定

今度はAAPとその代謝物を指紋から検出した結果を紹介する。薬物を摂取すると尿だけでなく指紋中(正確には指から分泌される汗)にも薬物が含まれる。前節と同様にかぜ薬を服用した方から指紋を採取した。指紋の採取方法と測定までの手順は以下の通りである。まず(1)市販の石鹸で30秒間洗い,(2)水道水で30秒間洗い流す。(3)紙タオルで30秒間手を拭き,(4)ステンレス基板上に30秒間指を押し付ける。(5)そこに1 µLのCHCAまたはCHCA/HM20溶液を滴下し,(6)溶媒が揮発した後,測定を行った。Fig. 7に測定結果を示した。励起波長は337 nm,レーザーパワーは5.9 µJである。市販のかぜ薬にはAAPの他,エテンザミド(Ethenzamide; Eth),カフェイン(Caffein; Caf)が含まれている。図を見ると,CHCAだけで指紋を測定しても何もピークが得られないが,CHCA/HM20を利用するとAAP,Eth,Cafのプロトン付加体が検出できることがわかる。ここでは正確な定量分析は行っていないが,縦軸の強度をFig. 5と比較することにより指紋中に含まれる薬物の量は尿に含まれる量の5%程度であることがわかる。指紋中に含まれる薬物の量は極めて少ないが,十分に観測ができるということがわかる。レーザー脱離イオン化法にゼオライトを利用することが非常に有効であるということを改めて理解していただけたと思う。

Zeolite 39(1): 10-20 (2022)

Fig. 7. Mass spectra of fingerprint taken 4 h after ingesting AAP table in the mass region related to the ingredients in AAP tablet and AAP metabolite.

最後に質量分析測定後の指紋の保存について述べる。ご存知のように指紋は個人を特定できる証拠として非常に重要である。一方質量分析は,試料を破壊しながら測定する手法であるため,指紋を測定に用いるとそれ以降証拠としての能力が失われてしまう懸念がある。そのことについてもゼオライトは非常に有効な結果をもたらしてくれることを紹介する。一般に我々の生活の様々な場所に誰かの指紋が残された場合,まず大気中に存在する電気を帯びた塵が指紋に付着する。そこに捜査員がシリカや金属,または磁性粒子といった粉をまぶすと,それらが電気を帯びた塵に付着して指紋は可視化される。基本的には白と黒のコントラスト像が得られるが,指紋が残された場所がカラフルな色を持ったお札であったり,凹凸がある場所であったりすると指紋の採取が難しい。そのような場合には蛍光性の粉を使った採取法もある20,21)。Fig. 8に指紋の光学顕微鏡像を示した。Fig. 8(a)は加工前の指紋像であり(b)はそれに活性炭をまぶしたときの像である。またFig. 8(c)はCHCA/HM20を塗布し溶媒を揮発させた後,アセトニトリルと水の混合溶媒(体積比7:3) 10 mLを用いてCHCA/HM20を十分に洗い流した後の像である。Fig. 8(d)(e)(f)は指紋にCHCA/HM20を塗布し溶媒を揮発させた後,266 nm,18 µJ,10 Hzのレーザー光を30秒,1分,5分照射する。その後混合溶媒10 mLを用いてCHCA/HM20を洗い流した後のものである。使用したレーザー光のパワーは通常の質量分析測定の約3倍以上であり,非常に過酷な条件下で指紋の保存を確かめた結果になる。通常,質量分析測定ではレーザー照射200ショット(10 Hzのレーザーなので20秒照射)で測定を行っている。Fig. 8(d)で示したように従来の測定条件より過酷な条件で測定を行った場合でも指紋は十分に保存されていることがわかっていただけると思う。ゼオライトは極性の強い触媒であるため,指紋に対する吸着力も強いと考えられ,このことが質量分析後での指紋の保存にも威力を発揮したものと考えられた。

Zeolite 39(1): 10-20 (2022)

Fig. 8. Optical micrographs of (a) unprocessed fingerprint,(b) fingerprint with activated carbon powder, and (c) fingerprint with CHCA/HM20. Images of fingerprint after laser irradiation for (d) 30 s,(e) 1 min, and (f) 5 min.

4. おわりに

質量分析法におけるイオン化の手法としてレーザー脱離イオン化法があるが,ゼオライトを用いることで試料イオン強度の上昇,選択性,再現性向上など様々な利点が得られることがわかった。弱酸である2,4,6-トリヒドロキシアセトフェノン(THAP)分子をゼオライト表面上に吸着させると,THAP分子の光励起に伴いゼオライト表面上のプロトンまたは金属カチオンがTHAPへ移動する。その後THAP上の余剰プロトンまたは金属カチオンが試料分子へ移動し,試料分子のイオンが進むことが理解された。これにより試料イオン強度の増大が得られるだけでなく,ゼオライト表面の異なるカチオン種によって試料分子をイオン化できた。THAPやCHCAといった分子をゼオライト表面上に吸着させる場合,これらはゼオライト上の酸性水酸基と吸着する。酸性水酸基はゼオライト表面上にほぼ均一に存在するためTHAPやα-シアノ-4-ヒドロキシけい皮酸(CHCA)によってイオン化される試料分子も空間不均一などの影響を受けることが少なく,高い再現性によってイオン化されることがわかった。このような利点からHM20表面上にCHCAを吸着させたCHCA/HM20を利用して尿中に存在する薬物と代謝物の定量分析を行った。またCHCA/HM20を利用することで指紋中に分泌される薬物と代謝物の測定にも成功した。

謝辞Acknowledgments

この解説文に記した実験は,多くの方々のご協力を得て実施されました。東京都立大学(旧首都大学東京)の小森雄介さん,山口惣太さん,鈴木淳也さん,藤井洋佑さん,伊永隆史先生,城丸春夫先生,東京工業大学の嶋寿さん,野村淳子先生,東洋大学の黒須俊治先生に感謝申し上げます。ありがとうございました。

引用文献References

1) K. Tanaka, H. Waki, Y. Ido, S. Akita, Y. Yoshida, T. Yoshida, T. Matsuo, Rapid Commun. Mass Spectrom., 2, 151(1988).

2) Y.-F. Huang, H.-T. Chang, Anal. Chem., 78, 1485(2006).

3) E. P. Go, J. V. Apon, G. Luo, A. Saghatelian, R. H. Daniels, V. Sahi, R. Dubrow, B. F. Cravatt, A. Vertes, G. Siuzdak, Anal. Chem., 77, 1641(2005).

4) S. A. Trauger, E. P. Go, Z. Shen, J. V. Apon, B. J. Compton, E. S. P. Bouvier, M. G. Finn, G. Siuzdak, Anal. Chem., 76, 4484(2004).

5) J. Wei, J. M. Buriak, G. Siuzdak, Nature, 399, 243(1999).

6) T. R. Northen, O. Yanes, M. T. Northen, D. Marrinucci, W. Uritboonthai, J. Apon, S. L. Golledge, A. Nordström, G. Siuzdak, Nature, 449, 1033(2007).

7) X. Wen, S. Dagan, V. H. Wysocki, Anal. Chem., 79, 434(2007).

8) X. Yang, H. Wu, T. Kobayashi, R. J. Solaro, R. B. van Breemen, Anal. Chem., 76, 1532(2004).

9) S. KjellströmS, O. N. Jensen, Anal. Chem., 76, 5109(2004).

10) C. Koster, J. A. Castoro, C. L. Wilkins, J. Am. Chem. Soc., 114, 7572(1992).

11) S. Yamaguchi, T. Fujita, T. Fujino, T. Korenaga, Anal. Sci., 24, 1497(2008).

12) Y. Komori, H. Shima, T. Fujino, J. N. Kondo, K. Hashimoto, T. Korenaga, J. Phys. Chem. C, 114, 1593(2010).

13) M. Yang, T. Fujino, Anal. Chem., 86, 9563(2014).

14) C. Kitaoka, T. Asano, T. Fujino, Bull. Chem. Soc. Jpn., 90, 154(2017).

15) T. Horikoshi, C. Kitaoka, Y. Fujii, T. Asano, J. Xu, T. Fujino, Analytica, 2, 66(2021).

16) H. Kannen, S. Nomura, H. Hazama, Y. Kaneda, T. Fujino, K. Awazu, Mass Spectrometry, 9, A0091(2020).

17) J. Suzuki, T. Fujino, Anal. Sci., 28, 901(2012).

18) J. Caldwell, L. G. Dring, R. T. Williams, Biochem. J., 129, 11(1972).

19) The Japanese Pharmacopoeia 16th ed., Drug Information, Jiho (2001).

20) G. S. Sodhi, J. Kaur, Forensic Sci. Int., 120, 172(2001).

21) R. S. P. King, P. M.Hallett, D. Foster, Forensic Sci. Int., 249, e21(2015).

This page was created on 2022-01-26T13:58:40.530+09:00
This page was last modified on


このサイトは(株)国際文献社によって運用されています。