日本ゼオライト学会 刊行物 Publication of Japan Zeolite Association

ISSN: 0918–7774
一般社団法人日本ゼオライト学会 Japan Zeolite Association
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5 アカデミーセンター Japan Zeolite Association Academy Center, 358-5 Yamabuki-cho, Shinju-ku, Tokyo 162-0801, Japan
Zeolite 38(4): 123 (2021)
doi:10.20731/zeoraito.38.4.123

レポートレポート

2021年度ゼオライトフォーラム参加報告

東京工業大学物質理工学院応用化学系応用化学コース 修士課程1年

発行日:2021年10月15日Published: October 15, 2021
HTMLPDFEPUB3

2021年度ゼオライトフォーラムが6月8日にビデオアプリZoomにて開催されました。去年開催を予定されていたゼオライトフォーラムは新型コロナウイルスの感染予防のため中止を余儀なくされましたが,今回企画準備などして下さいました東京工業大学の多湖輝興先生ならびに関係者の皆様,ご講演していただきました日揮触媒化成株式会社の三津井知宏様,東北大学の西原洋知先生,北海道大学の増田隆夫先生のおかげで,2年ぶりにオンライン開催という形で実現されました。今年は「多孔質触媒の働き方改革」というテーマで,多孔質触媒が直面する課題や求められる需要に対するこれまでの研究と展望についてのお話を拝聴しました。

はじめに,日揮触媒化成株式会社の三津井知宏様が「ゼオライトの酸性質と工業利用」という題名でご講演下さいました。流動接触分解(FCC)は,重質油から効率的に低沸点の炭化水素を製造することが可能であり,そのための耐水熱性,耐メタル性,耐摩耗性を兼ね備えたFCC触媒の開発が行われてきました。本講演では,FCC触媒の進歩とY,USY型ゼオライトを使用したFCC触媒調製の概略を解説していただき,ゼオライトが工業的に利用されていることを改めて学ばせていただきました。また近年の石油製品の需要の変化に伴ってキシレン,ベンゼンなどの芳香族やオレフィンを生成するプロセスに力を入れられているとのお話を聞き,目まぐるしく変化する需要に対応していかなければならない石油業界の大変さを痛感すると同時に,ゼオライト利用の幅広さを実感しました。

次に,東北大学の西原洋知先生が「金属酸化物上のコーク堆積を利用したカーボン材料の調製」と題して,金属酸化物を鋳型にしたメタンから単層カーボン材料を開発する研究についてご講演下さいました。本分野に無知な私でしたが,鋳型となる金属酸化物に対する分析からin situ CVD-GCによるコーク堆積の解析という流れは,分析法が馴染みあるものであったこともあり理解しやすく,研究の進め方について参考になることも多くありました。またカーボン材料の化学的特性を精密制御し,電極材料などへ幅広く展開されているとのお話は,非常に興味深かったです。

最後に,北海道大学の増田隆夫先生が「反応工学のアプローチによる“基盤研究から複雑系の実学へ”」という題で,拡散・物質移動に基づく触媒の設計と複雑系反応への展開についてご講演下さいました。ゼオライト触媒のコークによる触媒劣化という課題を,拡散距離を短くすることで解決するという発想はとても興味深いもので,勉強させていただきました。また単純系から複雑系への展開として解説いただいた学理領域の階層構造における触媒反応工学の位置づけについてのお考えには,大変感銘を受けました。

今回のゼオライトフォーラムでは,多孔質触媒の極めて実用的な例からそれぞれが用途に合わせて能力を発揮する,まさに「働き方改革」のような研究を紹介していただきました。多孔質の担持金属触媒を研究している私にとって,どれも興味深いご講演で非常に充実した時間となりました。行事開催すら厳しい時節,このような貴重な機会を提供していただいたこと,この場を借りて深く感謝申し上げます。

This page was created on 2021-10-05T10:26:30.151+09:00
This page was last modified on


このサイトは(株)国際文献社によって運用されています。