第3回ゼオライトセミナー・見学会報告
産業技術総合研究所
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第3回ゼオライトセミナー・見学会が2019年10月10日・11日にかけて開催されました。初日は北九州国際会議場でセミナーがあり,産学官合わせて51名が参加しました。今年度は,アドソープテックの三宅様,西武技研の井上様,日揮グローバルの岡崎様,東京工業大学の辰巳名誉教授の4名によるご講演がありました。2日目は,見学会として日揮触媒化成の九州事業所を訪問しました。
セミナーの1件目は,アドソープテックの三宅様より,「合成ゼオライトによるガスの精製及び分離について」という題目で,実用化されている圧力スイング吸着法(PSA)についてご講演がありました。各ガス(酸素,水素,CO2,希ガス)のPSAごとに,使用されるゼオライト種,吸着剤の組み合わせ,実プロセスの吸着装置について解説いただきました。不純物の性質により,ゼオライト以外にカーボンなどの吸着剤を添加し,吸着塔内部へ充填する順番を変える工夫や,吸着塔と再生塔の切替が30秒間隔である話などPSAの運転に関する話題は興味深く,企業の技術力を感じました。
2件目のご講演は,西武技研の井上様から,「ゼオライトハニカムロータを用いた空気処理技術」として空調設備としてのVOC処理技術とCO2分離についてお話がありました。吸着剤としてゼオライトを担持した機能性ハニカムフィルタを活用し,温度スイング吸着(TSA)を利用した世界初のVOC濃縮装置や工場,大型ショッピングセンターなどに設置されている除湿機,今後のCO2需要を見据えた高濃度CO2濃縮装置の開発についてご紹介いただきました。CO2濃縮装置は,排熱温度の高いシステムではCO2を50%から96%に濃縮できるが,将来的にアミン吸収法では難しいCO2濃度からの濃縮を想定しており,性能向上には現状よりもCO2吸着能力が高いゼオライト開発の必要性があると分かりました。
3件目は,日揮グローバルの岡崎様より「CO2の有効利用を目指して:DDR型ゼオライト膜プロセスの開発」と題しまして,CO2-EOR (Enhanced Oil Recovery)に向けたCO2分離膜とその実証化試験への取り組みについてご講演がありました。CO2-EORにおける原油随伴ガスからCO2を分離技術として,このゼオライト膜プロセスは米国で本格的な実証段階を迎えていることが報告されました。今後のゼオライト膜を利用した大型ガス分離プロセスの実用化に向けた動向に注目しています。
本セミナー最後のご講演は,東京工業大学の辰巳名誉教授の「ゼオライトはどこまで意のままに合成できるか?」でした。辰巳先生がこれまでのご研究の中でゼオライトをいかに制御してきたか,Alの位置やそれらの触媒性能に与える影響,これからのゼオライト合成への期待を含めたお話があり,ゼオライト合成の基本や考え方について学ぶ貴重な機会となりました。
見学会では,日揮触媒化成株式会社の概要や研究の説明後に,北九州事業所内のプラントを見学しました。原料が運ばれて触媒の形状になるまでの過程は,普段見られない光景で印象的でした。ゼオライト合成用の巨大なオートクレーブを見学し,研究施設と工場が近くにあることのメリットを感じ,ラボから実用化へのスケールアップについて考えさせられました。
この2日間を通して,ゼオライト合成の基礎研究から企業でのゼオライトを活用した分離技術,工場でのゼオライト合成について幅広く学ぶことができ,大変有意義な時間を過ごせました。筆者は,CO2有効利用や反応分離に興味があり,特にゼオライトを吸着剤や分離膜として利用したCO2精製・分離の現状や課題のお話は,自身の研究遂行において貴重な知見となりました。最後になりましたが,本セミナー開催にあたり,企画運営をしていただいた実行委員長の斉間先生をはじめとする日本ゼオライト学会の皆様にこの場を借りて感謝を申し上げます。
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