超臨界乾燥とキトサンエアロゲルの開発
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超臨界乾燥とは,液相とも気相とも界面をもたない超臨界相を経由して湿潤なゲルを乾燥させる方法であり,ゲル内部の骨格や微細構造に影響を与えることなく,溶媒だけ空気に置き換えた多孔体(エアロゲル)を得られる手法として知られている。シリカ,アルミナなどの無機酸化物エアロゲルが長らく研究の主流であったが,近年では,有機物・無機物問わず多様なエアロゲルが開発されている。本稿では,典型的な超臨界乾燥法を解説し,ポリマー系エアロゲルの一種であるキトサンエアロゲルについて最新の話題を紹介する。筆者らが開発したキトサンエアロゲルは,直径5~30 nmのキトサンナノファイバーによる三次元網目構造をもつ多孔体であり,透明性,機械的強靭さ,低熱伝導率を併せもつ材料として,高性能断熱材への応用が期待できる。また,小角X線散乱を用いた最近の検討から,従来のシリカエアロゲルと異なり,上記のナノ構造が超臨界乾燥中に形成されていることが示唆された。この結果は,超臨界乾燥が必ずしもゲルの微細構造に不干渉なプロセスではなく,積極的な構造形成ツールとして利用しうることを示している。
キーワード:エアロゲル;超臨界乾燥;キトサン;小角X線散乱
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