日本ゼオライト学会 刊行物 Publication of Japan Zeolite Association

ISSN: 0918–7774
一般社団法人日本ゼオライト学会 Japan Zeolite Association
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5 アカデミーセンター Japan Zeolite Association Academy Center, 358-5 Yamabuki-cho, Shinju-ku, Tokyo 162-0801, Japan
Zeolite 36(4): 133-134 (2019)
doi:10.20731/zeoraito.36.4.133

レポートレポート

19th International Zeolite Conference(IZC’19)参加報告

早稲田大学大学院先進理工学研究科応用化学専攻博士後期課程2年

発行日:2019年10月15日Published: October 15, 2019
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Zeolite 36(4): 133-134 (2019)

会場となったCrown Perthの夜景

19th International Zeolite Conference (IZC’19)が2019年7月7日から12日にかけてオーストラリアのパースにて開催されました。オーストラリアCurtin大学のMoses Tade先生をはじめとした組織委員会の運営の下,世界のゼオライト研究者や学生,そして企業の方を含め,延べ521名の参加があり,”New Synthetic and Natural Zeolites Synthesis”,“Characterization”,“Computational and Theoretical Investigations”,“Applications”といったテーマに分かれて多くの講演やポスター発表が行われました。筆者の所属研究室からは筆者のみの参加でしたが,学会会場に入ってみると多くの日本人研究者や学生の方々がいらっしゃいました(日本からの参加者は計58名と,中国に次いで2番目に多い参加人数)。学会が行われたパースはオーストラリア西部に位置する観光都市であり,シドニー,メルボルン,ブリスベンに次ぐオーストラリア4番目の大都市でもあります。会期中の季節は冬でしたが,気温は予想よりも高く,昼間は暖かく過ごしやすい気候でした。また,学会会場であるCrown Perth(上写真)はカジノを中心に,レストランや映画館,ホテルが集まる一大商業施設であり,学会参加者以外にも多くの観光客で賑わっていました。

初日はWelcome Partyのみの開催であり,日本でお世話になっている先生方や顔見知りの学生に挨拶するだけでなく,海外からの著名な先生方とも少しお話する機会を得ることができました。さらに,Party会場には催し物として移動動物園の形式でコアラとヘビもやってきており,筆者を含め多くの参加者がそのサプライズゲストと写真撮影をしておりました。

2日目から本格的に講演が始まり,最初のPlenary講演では日本から上田渉先生が「Zeolite-type Crystal Structuring in Complex Metal Oxide Catalysts of Group V and VI Elements by Unit-assembling」という題目で講演をされました(下写真)。筆者にとってはあまり馴染みのない複合金属酸化物の分野の内容でありましたが,触媒応用の観点からゼオライトにも触れつつ発表されており,興味深く拝聴しました。このPlenary講演直後,筆者自身の発表を含む第一セッションへと移りました。筆者の研究は層状ケイ酸塩というケイ酸塩ナノシートが積層した物質を出発としてゼオライトへと転換する合成手法に関するものであり,今回は,金属種を層間に含んだ層状ケイ酸塩をゼオライトへと転換した研究成果を発表しました。英語での口頭発表は修士2年の時以来2度目でしたが,初日の発表ということもあり非常に緊張しました。何とか発表を時間内に終えると,質疑応答では台湾のChia-Min Yang先生に実験操作の一部に関して2点質問いただき,有益な議論を行うことができました。さらに,発表後のショートブレークでも海外・国内研究者の方々に発表内容に関して質問をいただき,今後の研究に有用なアドバイスをいただきました。

Zeolite 36(4): 133-134 (2019)

学会会場の様子

会期中はPlenary,Keynote,Invited講演を含め多くの講演を拝聴しました。特に,ゼオライト合成に関連して金属種を含むゼオライト合成とその触媒応用に関連する研究発表を多く拝聴しました。筆者自身の研究テーマとも非常に近いこともあり発表内容を理解しやすく,多くの研究者が様々な手法を用いて金属含有ゼオライトを合成しているなと感じ,関連研究を知ることができたとともに,自身の今後の研究にもつながるような知見も得られました。一方,ゼオライトの触媒応用に関連した発表では,Christopher W. Jones先生の「Hierarchical Zeolites as Catalysts: Syn­thesis, Structure and Reactivity」という題目のPlenary講演が印象に残りました。MFI型ゼオライトナノシートの触媒活性に関して,Si/Al比に着目し,その活性の変化を追っており,ナノシート形態の場合に通常のゼオライトの触媒活性とは異なる傾向を示すといった研究成果を発表されていました。シート状のゼオライトは筆者も扱っている物質で興味のある部分であり,その形態に由来する触媒活性の変化を知ることができ,非常に感銘を受けました。

会期4日目の夜にはConference Dinner(IZC’19 Gala Dinner)が開かれ,多くの先生方が出席されました。学生の参加者は少ない中,この機会にさらに世界的に著名な先生方と交流を深めたいと思い,学生の身ながら参加させていただきました。Conference Dinner中にはInternational Zeolite Association(IZA)が設置している数々の賞の授与式も執り行われました。The 2019 IZA AwardにはWilhelm Schwieger先生,The 2019 Don Breck AwardにはMark E. Davis先生,The first Young Researcher AwardにはManuel Moliner先生が受賞されました。そしてIZA Honorary Membershipsには,日本から辰巳敬先生を始め3人の先生方が選出されました。Conference Dinnerではこれらの世界的に著名な先生方と交流でき,励ましのお言葉もいただくことができました(写真)。

今回,IZC’19に参加することで自身の研究に関連する情報・知見を収集する機会になるだけでなく,海外研究者と交流・議論もでき,貴重な経験にもなりました。中でも若手の研究者,学生と各々の研究について議論した後,名刺交換も行い,海外研究者とのつながりを構築できたのは有意義な経験であったと思います。さらに日本の研究者の方々の多くが口頭にて研究発表されており,ゼオライトおよびその関連分野における日本のプレゼンスの高さを感じました。

Zeolite 36(4): 133-134 (2019)

Conference DinnerにてWilhelm Schwieger先生と共に

Zeolite 36(4): 133-134 (2019)

Conference Dinnerにて先生方と共に

(左から筆者,辰巳敬先生,野村淳子先生,里川重夫先生)

本国際会議への参加に当たり,指導教員である黒田一幸先生,下嶋敦先生,和田宏明先生をはじめ,多くの方にご指導とご協力をいただきました。この場を借りて感謝申し上げます。また,末筆ではございますが,「若手研究者のIZC’19海外渡航費用助成」によりご支援いただいたZMPC2018実行委員会並びに日本ゼオライト学会,そして関係者の皆様方に厚く御礼申し上げます。

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