日本ゼオライト学会 刊行物 Publication of Japan Zeolite Association

ISSN: 0918–7774
一般社団法人日本ゼオライト学会 Japan Zeolite Association
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5 アカデミーセンター Japan Zeolite Association Academy Center, 358-5 Yamabuki-cho, Shinju-ku, Tokyo 162-0801, Japan
Zeolite 36(3): 89-90 (2019)
doi:10.20731/zeoraito.36.3.89

レポートレポート

4th Euro Asia Zeolite Conference(EAZC)国際会議参加報告

東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻

発行日:2019年7月15日Published: July 15, 2019
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2019年1月27日から30日にかけて,イタリア共和国・タオルミーナで開催された4th EAZCに参加しました。タオルミーナはシチリア島の北東部に位置する人口1万人ほどの小さな町ですが,シチリア屈指のリゾート地としてイタリア人には非常に好まれている街のようです。筆者のイタリア友人も,新婚旅行でタオルミーナに滞在したことがあると言っておりました。会場となったホテルの屋上からは,地中海とエトナ火山を望むことができ,大変素晴らしい環境で研究議論に打ち込むことができました。このエトナ山の噴火が学会前日に起こってしまい,会場最寄りの空港が閉鎖され,島内の遠い別の空港に飛行機が到着するトラブルがあったようです。

Zeolite 36(3): 89-90 (2019)

会場からの眺め.エトナ山からの噴煙が確認できる.

発表件数は,Plenary lecture 4件(Prof. Stefan Kaskel, Prof. Avelino Corma, Prof. Tatsuya Okubo, Prof. Zhong-min Liu),Keynote lecture 4件(Prof. Jihong Yu, Prof. Kyong Byung Yoon, Prof. Valentin Valtchev, Prof. Gabriele Centi),口頭発表66件,ポスター発表47件でした。3日目午後のみが二部屋に分かれてのパラレルセッションであり,それ以外は全員が一つの大きなホールに集まっての進行でした。研究発表のセッションタイトルは,「合成」「キャラクタリゼーション」「触媒」「分離・精製」「階層構造(Hierarchical)」に分かれていました。また「Industrial Session」が組まれており,企業発表が4件ありました。研究発表のほとんどがゼオライトを扱ったものであり,それ以外の多孔体に関する発表は少なかった点は,ゼオライト研究発表会とは異なるように感じ取りました。集中してゼオライトについての理解を深めることのできる有意義な4日間となりました。特に,Prof. Avelino Corma による「Zeolites as nano reactors. Going beyond the active sites」と題した基調講演,Prof. Jihong Yuによる「Fabrication of nanosied and hieralchical single crystalline zeolite crystals」と題した基調講演,更には研究発表の話題から,ゼオライト内の結合の原子レベル制御とマクロ構造の精密設計を両立し,新たな機能を発現させることが注目されているように感じました。その潮流は,近年のシミュレーション技術を利用した目的物の予想・評価の発展に起因するとも察することができます。

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発表会場の様子

筆者自身は,2018年4月に東京大学・大久保/脇原研究室にポスドクとして所属し,ゼオライト研究をスタートさせました。今回のEAZCでは,博士論文研究の一部から,金属酸化物ナノシートの階層構造を用いた人工光合成系の構築について発表いたしました。ゼオライト色の強い学会で,場違いともいうべき研究内容ではありましたが,どうやら「ナノシート」という言葉がゼオライト分野でホットな話題であるようなので,もう少し精進しようかと思う次第です。

この学会の最大の特長は,毎日のランチとコーヒーブレイク(1日に2~3回)で,参加者全員での時間共有ができることであると感じました。参加者も多すぎず(~150人程度),気になる研究発表をしていた参加者に気軽に話しかけられる点は魅力的だと感じました。ランチテーブルにはシチリア産の赤白ワインも置かれており,饒舌になりながら先生方と研究について熱く語ることができたのは非常に良い経験でした。全体を通して,ゼオライト分野に入ったばかりの筆者にとっては,分野をコンパクトに見渡し,大きな研究の潮流を感じ取り,更には自己紹介をする場として,大変有意義な4日間でした。

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ランチ会場の様子

末文ではありますが,本学会の運営にご尽力された先生方に感謝の意を述べ,私の学会参加報告を締めくくらせていただきます。

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