日本ゼオライト学会 刊行物 Publication of Japan Zeolite Association

ISSN: 0918–7774
一般社団法人日本ゼオライト学会 Japan Zeolite Association
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Zeolite 36(3): 88 (2019)
doi:10.20731/zeoraito.36.3.88

基礎講座基礎講座

第七回

発行日:2019年7月15日Published: July 15, 2019
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ゼオライト以外の規則性多孔体は何がありますか?

ゼオライト以外の規則性多孔体には,規則性メソポーラス物質や金属有機構造体(metal-organic framework: MOF)があります。MOFについては,基礎講座第六回(Vol. 36, No. 2)の記事を参照してください。規則性メソポーラス物質は,メソ孔領域(2~50 nm)の均一な細孔に加え,高い比表面積を有し,触媒担体や吸着剤,分離膜などへの応用が期待されています。特に,ゼオライトなどのマイクロ孔(<2 nm)に比べ大きな細孔空間を有することから,比較的大きな分子の反応場として利用されています。

1988年に早稲田大学の黒田らがケイ酸塩シート構造を有するカネマイト(NaHSi2O5·3H2O)とアルキルトリメチルアンモニウムイオン(CnTMA; nはアルキル炭素数)との反応によって初めてメソポーラスシリカの合成が報告されました1–3)。その後1992年に,Mobil社によりオルトケイ酸テトラメチルとCnTMAによりメソポーラスシリカ(MCM-41)の合成が報告されました4)。以降,メソポーラスシリカに関する研究が一気に広がり5–9),2008年に日本で初めて量産化されました10,11)。メソポーラス物質の組成として,研究当初から発展した二酸化ケイ素(メソポーラスシリカ)に加え,酸化アルミニウムや,ニオブ,タンタル,チタン,ジルコニウム,セリウム,スズの各酸化物12–14),炭素材料や金属材料などの合成も報告されています15,16)

規則性メソポーラス物質の細孔構造(細孔径・周期構造)は,テンプレートの種類や出発原料,反応温度など種々の条件によって変化します。周期構造として,二次元ヘキサゴナル,三次元ヘキサゴナル,キュービックなどがあります17–21)。細孔構造制御のテンプレートとして,カチオン性・アニオン性・非イオン性の界面活性剤が広く使用されています。

用語説明

[1] テンプレート:鋳型剤ともよばれる。細孔を形成させるため,界面活性剤の分子集合などを利用する。骨格構造を作製した後,焼成などによりテンプレートを除去することで,多孔質材料を作製できる。

引用文献References

1) “均一メソ孔を有するメソポーラス物質の合成化学”,ゼオライト,12(2)(1995) 48–55.

2) T. Yanagisawa, T. Shimizu, K. Kuroda and C. Kato, Bull. Chem. Soc. Jpn., 63(1990) 988–992

3) T. Yanagisawa, T. Shimizu, K. Kuroda and C. Kato, Bull. Chem. Soc. Jpn., 63(1990) 1535–1537.

4) C. T. Kresge, M. E. Leonowicz, W. J. Roth, J. C. Vartuli and J. S. Beck, Nature, 359(1992) 710–712.

5) “シリカ界面活性剤メソ構造体薄膜の合成”,ゼオライト,14(3)(1997) 97–103.

6) “有機基を主骨格に導入したメソポーラス物質”,ゼオライト,18(1)(2001) 26–33.

7) “水溶性シリカ前駆物質を用いたメソポーラス物質の合成”,ゼオライト,25(2)(2008) 45–50.

8) “発光性有機基を導入したメソポーラス有機シリカ”,ゼオライト,26(3)(2009) 85–91.

9) “金属配位子を骨格に導入したメソポーラス有機シリカ”,ゼオライト,29(4)(2012) 150–155.

10) “メソポーラスシリカの量産化と調湿材としての応用”,ゼオライト,27(1)(2010) 2–9.

11) “合成ゼオライト・メソポーラスシリカの国内メーカーの取り扱い製品と代表物性一覧”,ゼオライト,28(4)(2011) 158–160.

12) “有機分子集合体を鋳型とした多孔質アルミナの合成”,ゼオライト,14(3)(1997) 104–111.

13) “非シリカ系メソポーラス金属酸化物薄膜の新展開”,ゼオライト,30(3)(2013) 85–94.

14) “架橋ホスホン酸化合物から合成する非シリカ系メソポーラス材料”,ゼオライト,35(4)(2018) 129–138.

15) “メソポーラス金属の展開”,ゼオライト,23(2)(2006) 47–57.

16) “糖を原料とした水熱手法による多孔質カーボンの合成とナノ構造制御”,ゼオライト,35(1)(2018) 1–12.

17) “中空および鈴型の構造を有するメソポーラスシリカの合成とその利用”,ゼオライト,32(3)(2015) 71–79.

18) “単分散球状メソポーラスシリカの合成と応用”,ゼオライト,25(2)(2008) 59–66.

19) “円柱状マクロ細孔内でのメソポーラスシリカ形成”,ゼオライト,24(2)(2007) 118–124.

20) “メソポーラスシリカ薄膜の蒸気合成”,ゼオライト,22(2)(2005) 36–42.

21) “メソポーラスモレキュラーシーブ”MCM-41”の細孔径制御”,ゼオライト,16(1)(1999) 10–15.

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