ゼオライトはどのように社会で利用されていますか?
ゼオライトは,イオン交換能,吸着機能,分子篩機能,固体触媒作用を有することが知られています。これらの性質を利用して,ゼオライトは洗剤用ビルダー,脱水剤,化学物質の分離,抗菌・脱臭剤,石油精製/石油化学触媒等,化学工業・環境・生活分野において幅広く利用されています。
イオン交換能の応用例としては,界面活性剤の機能発現の阻害要因となるマグネシウムやカルシウムイオンをナトリウムA型ゼオライトとのイオン交換によって除去する(硬水の軟水化)洗剤用ビルダー1)や,放射性セシウム・ストロンチウムを含む高濃度汚染水からの放射性物質除去2)等が挙げられます。
吸着機能の利用としては,微量の水分除去が典型例として挙げられます。A型・X型ゼオライトはシリカゲルやアルミナと比べて水との親和性が極めて高く,空気や各種ガスの脱水精製や,溶媒・冷媒等の乾燥に使用されています。空気を極低温に冷却して酸素・窒素・アルゴン等を分離する深冷空気分離プロセスでは,低温で固化して配管を閉塞する水と二酸化炭素を,冷却前にゼオライトで除去します3)。また冷媒乾燥用に,カーエアコンや冷蔵庫の冷凍サイクル内に使用されたり,複層ガラスの結露防止のためにガラスの間に充填されたりしています3)。バイオエタノールの脱水にも,ゼオライト成形体やゼオライト膜が使用されています4)。ハイシリカゼオライトは工場から排出される有害な揮発性有機化合物(volatile organic compounds (VOCs))の吸着除去や濃縮に広く利用されています5)。ゼオライトパウダーは樹脂に混合することも可能なため,吸水・脱臭機能のある樹脂フィルムや包装材料としても使用されています。
ゼオライトの分子篩機能を利用した代表的な使用例としては,ゼオライトの均一な細孔径を活用した,ガソリンのオクタン価向上のための5Aゼオライトによるイソパラフィンからノルマルパラフィンの分離6),13Xゼオライトによるパラキシレンとメタキシレンの分離7)等が挙げられます。また,窒素と酸素の分子径や極性の差を利用して,工業用・医療用の酸素発生装置にもゼオライトが使用されています8)。
また特殊な例としては,Y型やA型ゼオライトに銀を導入することで抗菌機能が付与され,生活空間における抗菌剤・脱臭剤等として使用されています9)。
なお,ゼオライトの触媒機能の応用については,次項で説明します。