日本ゼオライト学会 刊行物 Publication of Japan Zeolite Association

ISSN: 0918–7774
一般社団法人日本ゼオライト学会 Japan Zeolite Association
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Zeolite 35(3): 121-122 (2018)
doi:10.20731/zeoraito.35.3.121

レポートレポート

Workshop, Advances in Zeolite Chemistry and Catalysis参加報告

大阪大学大学院工学研究科

発行日:2018年7月15日Published: July 15, 2018
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2018年5月21日〜25日までチェスキー・クルムロフにて開催された表記学会に参加して参りました。チェスキー・クルムロフは「世界で一番美しい町」として近年大変注目を集めているチェコの古都です。石畳の小道の両側に,白やベージュに塗装された石壁と鮮やかな赤茶色の屋根の家屋や教会が並ぶ,いかにも中世ヨーロッパといった風情の町で,中心にはモルダウ川が流れ,その畔の丘に13世紀築の立派な石城が建っています。学会発表はこの城の脇にある小ホールで行われました。発表は全66件,内訳はPlenary Lecture 6件,Keynote Lecture 1件,Oral Presentationが27件,Poster Presentationが32件で,総参加者数は100名程度,内日本人は15名程度でした。

Zeolite 35(3): 121-122 (2018)

会場となったČeský Krumlovの風景

初日は移動とWelcome Partyのみで,学会の本番は2日目から。講演のトップバッターはMartens教授。「層間にピラーの入った部屋なんてこの学会にぴったりだね」なんてジョークから始まった発表はモノマーからボトムアップ的にシリカのポリマーを作るという研究に関するもので,普段MOFの構造を眺めている身には親近感のある興味深い内容でした。

Zeolite 35(3): 121-122 (2018)

会場内の様子

構造決定に関する研究ではKenvin先生の講演と続く仲井先生の講演が印象に残りました。普段は触媒の合成や応用に関する研究に触れることが多いため,恥ずかしながらこういった物理的な内容に関する最新研究は集中して勉強した事がありませんでした。しかし実際にお話を伺うと,きちんと数学的モデルを立て,それに沿った測定法を開発するという研究手法の奥深さを体験できたと共に,普段使っている測定の背後にある物理モデルの限界を理解するという点でも,こういった最新研究を学んでおく有用性を感じました。

吸着の分野では,「ここ18年の研究成果を18分で発表します」との口上から始まったSayari先生のアミン修飾したナノ細孔材料によるCO2やSO2の吸着に関する講演が最も印象に残っています。吸着材における吸脱着メカニズムや水蒸気による影響,不活性化の経路など,宣言通りの濃い内容で,吸脱着の詳細なメカニズムの分析手法について多くを学ぶ事ができました。

Park教授の定年記念の講演も行われましたが,こちらもCO2の利用に関する非常に広範な内容に関するものとなりました。分野は触媒,酸化剤,酸素化剤,超臨界CO2等,範囲は基礎研究から実用化まで圧倒されるような内容に目が眩みながらも,単一の化合物からここまで化学が広がるものかと興味深く拝聴しました。

学会におけるイベント面でのハイライトは2日目にエクスカーションとして開催されたモルダウ川のラフティングです。この日は快晴に恵まれ,いかだの漕ぎ手のお兄さんのジョークを交えた解説もあり,美しい町や城の魅力や歴史を存分に堪能することができました。また,最終日のバンケットでは町の3つ星ホテルにご招待頂き,生バンドのジャズを聞きながらワインと料理を楽しみました。社交ダンスを踊る先生方や学生も多く,壁に絵や彫刻が飾られた異国情緒あふれる空間も相まってヨーロッパの伝統を肌で感じる貴重な機会となりました。

私事ではありますが,現在本学会のOrganizerであったJiří Čejka先生の研究室にて短期留学をさせて頂いています。本学会で学んだ事,また,これから留学を通して学ぶ事を通じて,私もゼオライトの世界を支えるピラーの一本に成らねばとの思いを新たにした学会でありました。

Zeolite 35(3): 121-122 (2018)

会場(左)前で先生方と共に.左から後輩の増田くん,筆者,Jiří Čejka先生,後輩の吉井くん,Milan Hronec先生

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