日本ゼオライト学会 刊行物 Publication of Japan Zeolite Association

ISSN: 0918–7774
一般社団法人日本ゼオライト学会 Japan Zeolite Association
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Zeolite 35(3): 120 (2018)
doi:10.20731/zeoraito.35.3.120

レポートレポート

2018年度ゼオライトフォーラム 参加報告

早稲田大学大学院先進理工学研究科応用化学専攻博士課程1年

発行日:2018年7月15日Published: July 15, 2018
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2018年度ゼオライトフォーラムが6月11日に東京大学武田先端知ビル内の武田ホールで開催されました。今年は「ゼオライトの新たなる展開」と題して,企業の方々や学生を含め多数の参加があり,ユニオン昭和株式会社の松倉実様,日立造船株式会社の相澤正信様,信州大学の金子克美先生の講演を拝聴しました。

Zeolite 35(3): 120 (2018)

フォーラム会場の様子

初めに,ユニオン昭和株式会社の松倉実様が「ゼオライトの環境/福島汚染水処理分野への応用―ゼオライトの技術開発と使用例―」という題で講演されました。原子力発電所内から排出された冷却水には放射性セシウムやストロンチウムなどの放射性物質が含まれているため,それらの除去が必要です。講演では,それら放射性物質の除去のためにイオン交換能を有するゼオライトが利用されており,事故から7年経った現在でも汚染水処理が重要な課題であることを改めて学びました。また最近のゼオライトの応用例として,自動車やエネルギーなどの産業分野だけでなく住宅などの広い分野にわたってゼオライトが応用されていること,そして適材適所に様々な種類のゼオライトが用いられていることを知り,ゼオライトが産業において大きな役割を担っていることを実感しました。

次に,日立造船株式会社の相澤正信様が「日立造船におけるゼオライト膜技術の開発状況―脱水・ガス分離事業を対象として―」という内容で講演されました。ゼオライト膜の基礎からその性能向上に向けた開発・設計方針に関する話題だけでなく,その実用例をわかりやすく説明いただきました。中でも脱水用ゼオライト膜が使用されている国内最大級のバイオエタノールプラントが6年半もの間,ゼオライト膜の交換修理をすることなく運転し続けることができたという事例を知り,その技術力の高さに非常に感銘を受けました。

最後に,信州大学の金子克美先生が「ナノスケール細孔および窓の新奇な物理化学機能」と題して,カーボン材料がもつナノ細孔やナノ窓に関する最新の研究成果について講演されました。中でも,単層カーボンナノチューブ空間内に常圧以下で硫黄を導入すると,超高圧圧縮効果により硫黄原子が1次元に配列した結晶が形成するといった研究成果や,グラフェン中の微小な欠陥(ナノ窓)を小さな気体分子の分離媒体として用いると,ナノ窓が特異な分離挙動を示すといった研究成果を知ることができました。カーボン材料やゼオライトをはじめとする多孔質物質が持つ未知の機能にさらなる研究のひろがりと発展を感じるとともに,先生の深い専門的知識と研究姿勢は非常に勉強になりました。講演会終了後には懇親会が開催され,ここでも活発な意見交換が行われました。

今回のゼオライトフォーラムで最近のゼオライトの応用事例や細孔の機能に関する研究成果について学ぶことができ,非常に有意義な時間を過ごすことができました。このような素晴らしい機会を提供してくださった講演者の皆様,そしてホストの大久保先生をはじめとする関係者の皆様にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。

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