日本ゼオライト学会 刊行物 Publication of Japan Zeolite Association

ISSN: 0918–7774
一般社団法人日本ゼオライト学会 Japan Zeolite Association
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5 アカデミーセンター Japan Zeolite Association Academy Center, 358-5 Yamabuki-cho, Shinju-ku, Tokyo 162-0801, Japan
Zeolite 35(3): 118-119 (2018)
doi:10.20731/zeoraito.35.3.118

基礎講座基礎講座

第三回

発行日:2018年7月15日Published: July 15, 2018
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ゼオライト骨格に入る元素はどのようなものがありますか?

ゼオライトは,狭義では結晶性のアルミノシリケートを意味します。ゼオライトの骨格構造は,図1に示すようなTO4四面体(T=Si, Al)が頂点の酸素原子を共有して連結した三次元ネットワークにより構成されています。また,TO4四面体の連結パターンが変わることによって様々なゼオライト骨格構造が形成されます。ゼオライト(アルミノシリケート)骨格のTサイト(SiまたはAl)の一部を他の元素で同型置換したものはメタロシリケート(広義ではゼオライト類縁化合物)と呼ばれています。このとき置換可能な元素は,4配位をとることができ,イオン半径が0.01–0.07 nm程度1)のものであるとされています。Tサイトに入り得る元素として,Be,B,P,Ti,Mn,Fe,Co,Zn,Ga,Ge,Asなど2)が報告されています。

Zeolite 35(3): 118-119 (2018)

図1 TO4 四面体(T=Si,Alなど)及びTO4四面体からのゼオライト骨格構造(三次元ネットワーク)形成の模式図。

ゼオライト骨格構造図は,2)から引用。

SEMによるゼオライト粉末の観察でのチャージアップ現象への対処方法

走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope, SEM)は,試料の表面形態,元素の種類の分布,組成等を測定する装置です。電子線(プローブ電流)を試料に照射すると,試料表面から2次電子,反射電子,特性X線などが放出されます(図2)。電子線を2次元的に走査しながら,2次電子の多いか,少ないかを検出し,1枚の画像にすることで,試料表面の凹凸を観察することが出来ます。試料に入射した電子は,エネルギーを失って試料中に吸収されます(吸収電子)。試料が導電性であれば,電子は試料内部から試料ステージへ流れますが,ゼオライトなどの非導電性試料の場合,電子が試料中に留まるため帯電が発生し,明るさにむらが生じる,輝線が入る,像が歪む,SEM像に立体感がないなどの現象がみられます。このことをチャージアップ現象と言います(図3(a))。

Zeolite 35(3): 118-119 (2018)

図2 SEMの概略図

Zeolite 35(3): 118-119 (2018)

図3 (a) チャージアップ現象が起こっているSEM像 (b) 加速電圧を10 kVから1 kVに下げたことでチャージアップがなくなり,かつ表面構造も明瞭に観察できる

提供:日本電子(株),朝比奈俊輔様

対処法としては,下記の方法があります。

・ゼオライト表面に導電性膜を塗布する3,4)(金属コーティング(Pt-Pd, Os)またはカーボンコーティング)。塗布量が多いと,表面の凹凸情報が失われる。

・金属コーティングを行わない場合は,試料の単位表面あたりに照射する電子のエネルギーを小さくする。(加速電圧を下げる(図3(b))。または,照射電流を小さくする。)2次電子の放出量が減ると,観察しにくくなる。

上記の方法以外に,冷陰極形電界放出電子銃やインレンズまたはセミインレンズ方式対物レンズ,リターディング機構(減速機構)を有するFE-SEM(FE:Field Emission(電解放出型))を用いた観察が有効です3,5)

謝辞Acknowledgments

本講座に用いたSEM像は,日本電子(株),朝比奈俊輔様に提供頂きました。御礼申し上げます。

用語説明

2次電子
入射電子が試料に衝突した時にその表面から放出される電子。
反射電子
入射電子が試料中を拡散する過程において,試料表面から再度放出された電子。その強度は,試料の原子番号が大きいほど,大きいため,反射電子像から試料の組成分布もわかる。
特性X線
入射電子に高いエネルギー準位に励起された電子が低いエネルギー準位に遷移する際に,そのエネルギー差に対応するX線が放出される。そのエネルギーは,元素に固有であり,これを用いて微小領域の定性定量分析が可能である。
吸収電子
入射電子が試料中を拡散する過程において,試料内部に吸収される電子。
加速電圧
入射電子を放出するために,電子銃の陰極と陽極の間にかけられる電圧
照射電流
試料に照査される電子線内に流れる電流。通常の2次電子観察では,照射電流として10 µA程度が使われる。

引用文献References

1) R. D. Shannon, Acta Cryst., A32, 751 (1976).

2) Structure Commission of the International Zeolite Association (IZA-SC), Database of Zeolite Structures (2017). http://www.iza-structure.org/databases/

3) “走査電子顕微鏡法によるナノ多孔質材料の解析”,ゼオライト,34 (1) (2017) 19–27 .

4) 新・走査電子顕微鏡,日本顕微鏡学会関東支部編,共立出版,978–4320034730.

5) “FE-SEMを利用したナノ多孔体の細孔構造観察の進展”,ゼオライト,28 (3) (2011) 95–102.

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