日本ゼオライト学会 刊行物 Publication of Japan Zeolite Association

ISSN: 0918–7774
一般社団法人日本ゼオライト学会 Japan Zeolite Association
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Zeolite 35(2): 80 (2018)
doi:10.20731/zeoraito.35.2.80

レポートレポート

第2回参照ゼオライト討論会報告

富山大学研究推進機構水素同位体科学研究センター

発行日:2018年4月15日Published: April 15, 2018
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「レシピがあれば,どんなゼオライトも再現する。」

ゼオライト学会の皆様はおそらく,この思いを心に秘めていることと思います。NH3-SCRやMTO反応に高活性が報告されているSSZ-13(CHA型)は,BEA,FAU,FER,MFI,MORに続く第6のBigとなるポテンシャルを秘めた,現在最もホットなゼオライトの一つであります。しかしながら悩ましいことに,物性や特性が,合成法に依存することが知られています。

本検討会は「いつでも,どこでも,誰でも,参照(標準)試料となりうるSSZ-13を合成する,その方法を提供する」を目指し,東京大学小倉賢先生のかけ声で,平成29年7月の第1回討論会からスタートしました。今回は,ゼオライト学会前日の平成29年11月29日に,岐阜大学近江靖則先生のお世話によって,岐阜大学サテライトキャンパス多目的講義室にて開催された,第2回目の討論会でした。今回は,7月以降に実施した,

① 合成チーム(岐阜大・近江先生,成蹊大・里川先生,大阪大・西山先生,早稲田大・松方先生,富山大・田口)が,Si/Al=10のSSZ-13をそれぞれ合成する。これらの提供試料に,

② 触媒調製チーム((株)シナネンゼオミック・工藤様,東大生研・大西先生)がCuイオン交換を行い,SCR活性評価を行う。

③ 触媒解析チーム(名古屋大・薩摩先生,鳥取大・片田先生,東工大・横井先生,マイクロトラックベル(株)・吉田様)がキャラクタリゼーションを行う。

の結果報告と討論の会でした。

討論会では,小倉先生から上述した趣旨説明の後,小倉研究室の大西先生から,今回試験した全10個のCu-SSZ-13触媒について,SCR反応の活性評価が紹介されました。当初の予想と期待通り,試料によってCuイオン交換率,触媒活性,耐水熱安定性がバラバラでした。なお,筆者の提供試料がダントツの最低活性を示しました。

活性評価に引き続き,合成チームの近江先生から,種々のSi源とAl源による生成物の変化と,合成条件の探索結果の報告,小倉先生ならびに筆者からIZAのZones法による合成,阪大西山先生からドライゲルコンバージョン法によるSSZ-13合成について,それぞれ提供試料の報告を行いました。

続いて,工藤様からCuイオン交換法の説明と交換率のまとめの報告があり,名大薩摩研究室の植田様から,In-situ UV-Vis測定の報告がありました。UV-Vis-MS(Operando)分析では,SCR活性はイオン交換率よりもCu2+の割合に依存することが報告されました。この結果は,遡るとSSZ-13のAlサイト,すなわちSSZ-13合成法に影響することが示唆されます。また,吉田様から全てのCu-SSZ-13試料のN2吸着法による細孔解析が報告され,SCR活性は,ミクロ細孔容積,比表面積,ならびに外部表面積とほぼ相関がある事が示されました。一方,興味深い点は,どの試料の細孔容積も理論値より低い事実であり,今後のSSZ-13評価の留意点の一つになると思われます。

最後に総合討論として,これら物性,特性がバラつく要素について意見交換を行いました。特に溶解性を考慮したSiとAl出発源の選択に議論が集中し,次回開催に向けた方針の意見集約を行いました。この様に,本会は参加者がデータを共有することによって参照SSZ-13を目指す,濃厚な討論会となりました。

本討論会以降も合成チームでは情報交換を行っていますが,原稿執筆中にも阪大西山先生から息をのむデータと美しいSEM写真が配信されています。次回討論会は,6月に東大本郷で開催されるゼオライトフォーラムに付随して開催されることになっており,ご興味ある方のご参加をお待ちしております。また,SCRは評価ツールの一つであり,「SCR活性大会」ではありません。他の評価方法をご担当いただける方にも是非ご参入頂きたいとのことです。よろしくお願いいたします。

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