2.1. Atomisticシリカ多孔体モデル構築
従来,細孔表面原子をあらわに考えない理想的なシリンダー型細孔モデルを用いた分子シミュレーションにより,吸着挙動や毛管凝縮挙動の理解が試みられてきたが,近年,実際の規則シリカ多孔体の細孔表面には原子オーダーのラフネスが存在することが明らかにされている9)。比較的小さな細孔ではこの表面ラフネスが毛管凝縮挙動に与える影響を無視できないことから,シミュレーション結果と実験結果とを厳密に比較するためには,ラフネスを考慮したAtomisticな規則シリカ多孔体モデルの構築が必要である10)。そこで本研究では,X線構造解析により得られるMCM-41の細孔壁近傍の電子密度分布9)をもとに,Atomisticモデルを構築した。
まずは,分子動力学(Molecular dynamics; MD)法によりアモルファスシリカブロックを構築した。MD法は,設定された分子間の相互作用ポテンシャルをもとに分子間に働く力を計算し,分子集団系の運動方程式を解くことでそれぞれの分子の軌道を求める手法である。今回採用したBKSポテンシャル11)は,Si–Oが四面体構造をとる時に最安定となるような相互作用ポテンシャルであり,これに従いクエンチMDシミュレーションを行うことでアモルファスシリカが自然と構築される。得られたアモルファスシリカブロックを円筒状にくり抜き,最後に,MCM-41のX線構造解析から得られる細孔壁近傍の電子密度分布を満たすように,細孔表面のSiおよびO原子をランダムに削除・再生していくことでAtomisticシリカ多孔体モデルを構築した。なお,実際の規則シリカ多孔体の細孔表面O原子はH原子と結合し水酸基として存在していると考えられるが,H原子はサイズが小さく,Arなどの希ガス吸着分子との相互作用は無視できるため,本研究ではH原子を考慮していない。得られたAtomisticモデルは,低圧における吸着シミュレーションにより細孔表面への吸着状態を良好に再現できること,また,中性子散乱スペクトルが実験結果に符合していることから,その妥当性が示されている10,12)。
2.2. Ar吸着シミュレーション|grand canonical Monte Carlo法
構築したAtomisticモデルに加え,古くから用いられている細孔表面原子をあらわに考えない滑らかなシリンダー型細孔モデル13)を用いてAr吸着シミュレーションを行った。二体間相互作用ポテンシャルuにはLennard–Jones(LJ)12–6ポテンシャル,
を用いた。ここで,rは分子間距離,σは分子の大きさを特徴づけるパラメータ,εは相互作用の強さを特徴づけるパラメータである。三体間相互作用などの多体間相互作用は無視し,系全体のポテンシャルエネルギーは二体間相互作用の和で表せるとした。吸着シミュレーション手法にはgrand canonical Monte Carlo(GCMC)法を用いた。MD法では分子集団の運動方程式を解き,時々刻々得られる微視的状態(つまり全分子の位置および速度)から,物理量(例えば全エネルギー)を計算し,その時間平均を求めることで平衡状態における系の物理量を計算することができる。一方Monte Carlo(MC)法では,統計力学により記述される配置の出現確率に従うよう,分子集団の微視的状態(つまりは全分子の座標)をランダムに発生させ,それぞれの微視的状態における物理量の平均(アンサンブル平均)を求めることで,平衡状態における系の物理量を計算することができる。特にGCMC法は,化学ポテンシャルμの粒子浴,温度Tの熱浴と接した体積Vの分子集団(grand canonicalアンサンブル)の平衡状態の描像を与える。具体的には,細孔セルにおいて吸着分子の挿入・移動・削除試行を行い,試行前後のポテンシャルエネルギー変化とμ,V,Tで決まる統計力学に基づく確率分布から,各試行のAccept/Rejectを判断する。Acceptの場合は系の微視的状態が更新され,Rejectの場合は試行前の状態に戻る。これをおおよそ105/atomステップ繰り返し,各ステップにおける物理量(エネルギーや分子数)の平均値をもとめることで,μ,V,Tで規定される平衡状態の情報を得ることができる。化学ポテンシャルμのバルク気相の圧力Pは,LJ流体の状態方程式や,Widomの分子挿入法15)を適用した分子シミュレーションにより容易に計算可能であるため,種々のμにおけるGCMC法により細孔セル内の分子数Nを求めることで,吸着等温線(P vs. N at constant T)を計算することができる。
毛管凝縮は,細孔内における凝縮核生成を必要とする活性化過程であり,その遷移状態は自由エネルギー的に不利な状態,つまりは統計力学に基づく確率論的に「発生しにくい」状態である。GCMC法は計算時間の制限があるため,実験的に観測される毛管凝縮圧Pcondではエネルギー障壁を乗り越える(つまり確率的に発生しにくい遷移状態を観測する)ことができず,結果,エネルギー障壁が十分に低くなる,より高い圧力PcondGCMC(>Pcond)において毛管凝縮が観測される12)。したがって,GCMC法のみでは毛管凝縮のような活性化過程を含む現象を定量的に理解することが困難であり,ましてやその温度,細孔径依存性を予測することは不可能である。そこで,以下に述べるような自由エネルギーを媒介にした速度論的な検討が必要となる。(GCMC法の計算ステップ数や分子数を十分に多くすることで,Pcondを直接予測することも原理的には可能であると期待されるが,増やすべきステップ数が膨大であるため現実的ではない。どれほどのステップ数が必要であるかについても後ほど議論する。)
2.3. Gauge cell Monte Carlo法
凝縮のエネルギー障壁を見積もるためには,多分子層吸着状態と凝縮状態の中間状態を解析せねばならない。そこで,体積Vporeの細孔セルと体積Vgasのバルク気相セル(gaugeセル)の二つのシミュレーションセルを用意し,全系において分子数N,体積V=Vpore+Vgas,温度T一定のもと,セル内,セル間の分子の移動試行を繰り返すシミュレーション手法であるgauge cell Monte Carlo法16)によりFig. 2aに示すような連続なS字型の吸着等温線(van der Waalsループ)を計算した。種々のNにおいてシミュレーションを実施し,細孔セルに存在する分子数およびバルク気相セルにおいて計算される系の化学ポテンシャルから吸着等温線が計算される。この手法もGCMC法同様,NVTの条件(canonicalアンサンブル)から統計力学の原理により決定される確率分布を満たすように,試行のAccept/Rejectが行われる。一方,GCMC法とは異なり,系の分子数Nを固定し,細孔に流入する分子数のゆらぎを制限することで,実際の吸着等温線測定では観測し得ない,絶対不安定領域を経由するS字型の吸着等温線を計算することができる。この等温線は連続であるため,吸着量を化学ポテンシャルで積分することで系の自由エネルギーを計算することが可能になる。
得られたS字吸着等温線にMaxwellの等面積則を適用することにより,平衡転移点μeqを求めた。μeqは多分子層吸着状態(凝縮前)と凝縮状態(凝縮後)の自由エネルギーが等しい点であり,つまりは熱力学的に決定される平衡論的な毛管凝縮圧を表す。
多分子層吸着状態α(分子数Nα)を基準とした,ある状態(分子数N)の自由エネルギーΔW(μ, N)を,以下の式17)に従ってS字等温線μs(N)を積分することで求めた。
毛管凝縮のエネルギー障壁ΔWa(μ)は,多分子層吸着状態αから遷移状態β(分子数Nβ)へ変化する際の自由エネルギー変化で表されることから,ΔWa(μ)=ΔW(μ, Nβ)により計算される。μeqにおける自由エネルギー変化ΔW(μeq, N)をFig. 2bに示す。多分子層吸着状態αと凝縮状態γの自由エネルギーは確かに等しく,また,毛管凝縮過程には遷移状態βが存在することがわかる。さらに,μが大きくなるにつれ(つまり,圧力Pが高くなるにつれ),エネルギー障壁が低くなっていることが確認できた。
2.4. 毛管凝縮の速度定数|遷移状態理論
毛管凝縮のエネルギー障壁がもたらす速度論を理解すべく,速度定数k(μ)を求めた。活性化過程を記述する遷移状態理論18,19)によると,k(μ)は,
ただし,
ここで,Cは遷移状態βにおける平均吸着速度,p(μ)は遷移状態βが発現する確率,Dは細孔径,Lzは細孔軸方向のシミュレーションセル長さを表す。なお,p(μ)の分子は遷移状態βにおける微視的状態数,分母は分子数0の状態から分子数Nβの状態までの全ての微視的状態数の総和を表す。ここで,p(μ)に含まれるNβ, ΔWa(μ),ΔW(μ, N)はシミュレーションセルの長さLzに比例する量である。したがって,毛管凝縮現象を的確に捉えるためには,毛管凝縮の特徴長さLを決定し,このLあたりのNβ,ΔWa(μ),ΔW(μ, N)を考える必要がある。VishnyakovとNeimarkによると7),毛管凝縮は細孔の内部で液ブリッジが生成することがきっかけで進行し,この液ブリッジの長さがおおよそ細孔径D程度であることから,毛管凝縮の特徴長さLは細孔径Dであると提案している。そこで本研究においても式(5)に示すように,DあたりのNβ,ΔWa(μ),ΔW(μ, N)を用いてp(μ)を求めた。遷移状態βにおける平均吸着速度Cは細孔内への吸着分子の拡散速度により決定されると予想される。ナノスケールの細孔では,分子拡散よりもクヌーセン拡散が支配的であり,クヌーセン拡散係数は
で表される。ただしmは分子量である。これから,本研究で対象とする2–8 nmの細孔径および75–100 Kの温度範囲では,ナノ細孔内での拡散速度のオーダーは変わらないことがわかる。後に議論するとおり,毛管凝縮圧を予測するためには,速度定数の詳細な値ではなく,そのオーダーが重要になるため,本研究ではCは温度,細孔径によらず一定であると見做し,無次元速度定数k*(μ)=k(μ)/C=p(μ)を用いて議論を行う。
3.1. GCMC系における毛管凝縮圧の予測
Fig. 3a–dに細孔径D=3.0, 4.0, 5.0, 6.0 nmの滑らかなシリンダー型細孔モデルを用いて求めた無次元速度定数の化学ポテンシャル依存性を示し,Fig. 3e–fには,同じ細孔モデルを用い,GCMC法およびgauge cell MC法により計算した87 KにおけるAr吸着等温線を示す。平衡転移点μeqにおける速度定数k*(μeq)は,D=3.0, 4.0, 5.0, 6.0 nmでそれぞれ,10−8,10−23,10−48,10−72となった。この結果は,μeqでは毛管凝縮が遅すぎる(つまり発生する頻度が低すぎる)ために,GCMCシミュレーションの計算時間内に毛管凝縮が観測されなかったことを示唆している。そこで,「GCMCシミュレーションの計算時間内に毛管凝縮を観測し得る十分に速い速度」を表す臨界速度定数k*c, GCMCを以下のように決定した。Fig. 3eのD=3.0 nmを用いたGCMCシミュレーション結果に着目すると,毛管凝縮はμcondGCMC/εff=−10.84で生じており,また,Fig. 3aに示すとおり,このμcondGCMCにおける速度定数はk*(μcondGCMC)=10−4であった。この結果より,GCMCシミュレーションにおける臨界速度定数をk*c, GCMC=10−4と決定した。D=4.0, 5.0, 6.0 nmにおいて,速度定数がこの臨界速度定数と等しくなる化学ポテンシャルを探索し(Fig. 3b–d),これを予測毛管凝縮点μcondGCMCとしたところ,シミュレーション結果を良好に再現できた(Fig. 3f–h)。さらに,Fig. 4に示すとおり,k*c, GCMC=10−4を用いることで2–8 nmの幅広い細孔径においてGCMCシミュレーションにより計算されるμcondGCMCを予測することに成功した。
両端が解放されたシリンダー型細孔内で凝縮している液体が蒸発する場合,気泡核の生成を必要とせず,細孔入口のメニスカスが単に後退することで進行するため,緒言でも述べた通り毛管蒸発は,通常,平衡な相転移挙動となる。しかし,本研究におけるGCMCシミュレーションでは,周期境界条件により無限に長い細孔を想定していることから,蒸発が進行するためには細孔内での気泡核の生成が必要となる。結果として,Fig. 3e–hに示すとおりGCMCでの毛管蒸発は準安定状態(μeqよりも低いμ)からの非平衡相転移となる。そこでμcondGCMC同様,k*c, GCMC=10−4により毛管蒸発点μevapGCMCの予測を試みた。予測したμevapGCMCはシミュレーション結果と良好に一致しており(Fig. 3e–hおよびFig. 4),これらの結果は,k*c, GCMC=10−4がGCMCシミュレーションにおける臨界速度定数として妥当であるということを裏付けるものであると言える。
さらに,Atomisticモデルにおけるk*c, GCMC=10−4の適用可能性も検証した。Fig. 5a–cにはそれぞれ,MCM-41(細孔径3.3 nm)を模したAtomisticモデルを用いて計算した毛管凝縮の速度定数の,75, 80, 87 Kにおける圧力依存性を示し,Fig. 5d–fにはそれぞれ,同じ細孔モデルを用いてGCMC法およびgauge cell MC法により計算した75,80,87 KにおけるAr吸着等温線を示す。全ての温度において,k*c, GCMC=10−4により予測されるμcondGCMCがシミュレーション結果を良好に再現していることを確認できた。
以上の結果により,k*c, GCMC=10−4は105/atom MCステップのGCMCシミュレーションにおける臨界速度定数であり,またこの値は,細孔径,細孔モデル,温度に依らない普遍的な値であることが明らかとなった。
3.2. 実測毛管凝縮圧の予測
同様の手法により,実験により測定された毛管凝縮圧Pcondの予測を試みた。Fig. 5d–fにMCM-41(細孔径3.3 nm)を用いて測定した75, 80, 87.3 KのAr吸着等温線を示す。また,Fig. 5 g–iにはgauge cell MCシミュレーション結果から描画した,75 Kにおける多分子層吸着状態α,遷移状態β,凝縮状態γにおけるスナップショットを示す。遷移状態βでは,液膜の厚みは多分子層吸着状態αに比べ厚くなっているものの,メニスカスの形状は円筒状を維持している。これはシリンダー型細孔内での凝縮核の形状は,ブリッジ状ではなく円筒状であることを示している。gauge cell MC法により求めた平衡転移圧Peqは,いずれの温度においても実験の脱着枝に一致しており,毛管蒸発過程が平衡な相転移過程であることを確認できた。75 Kおよび80 Kでは毛管凝縮はPeqよりも高圧で生じており,準安定状態からの相転移過程であることがわかる。Peqにおいて凝縮核が生成するために必要な時間が,実験の平衡待ち時間に比べて非常に長い,つまりPeqにおける毛管凝縮速度が非常に遅いため,Peq<Pcondとなり,ヒステリシスが観測されたと考えられる。Fig. 5dからわかるとおり,75 Kでは相対圧Pcond/P0=0.34において毛管凝縮が進行しており,この圧力における無次元速度定数はk*(Pcond)=10−17であった(Fig. 5a)。この結果より,「実験の平衡待ち時間内に毛管凝縮を観測し得る十分に速い速度」を表す,実在系の臨界速度定数k*cをk*c=10−17と決定した。これを用いて80 KにおけるPcondを予測したところ(Fig. 5b),実験結果を良好に再現することに成功した(Fig. 5e)。さらに,87 KではPeqにおいて速度定数がk*cよりも大きいことから(Fig. 5c),Peqにおいて毛管凝縮が進行し,吸着ヒステリシスが生じないということも予測することができた(Fig. 5f)。細孔径の異なるMCM-41(細孔径3.9 nm)においても同様に,k*c=10−17を用いることで75,80,87.3 Kの毛管凝縮・吸着ヒステリシス挙動を予測可能であることも確認している。
準安定状態から生じる毛管凝縮の予測手法の幅広い温度・細孔径への適用可能性を検証すべく,k*c=10−17を用いてSBA-15における毛管凝縮挙動の予測を試みた。SBA-15はMCM-41同様,均一なシリンダー型細孔が規則的に配列した構造をもつ多孔性シリカ材料であり,その細孔径は通常MCM-41よりも大きい。滑らかなシリンダー型細孔によりSBA-15をモデル化し,87.3,90,100 KにおいてAr吸着等温線を計算した。滑らかなシリンダー型細孔モデルの細孔径は,87.3 Kで計算されたPeqが実験の脱着枝に一致するよう,6.4 nmと決定した。Fig. 6に計算したAr吸着等温線を実験結果とともに示す。87.3 Kだけではなく90 Kおよび100 KにおいてもPeqが実験の脱着枝と良好に一致していることがわかる。また,MCM-41と同様,k*c=10−17を用いて実験のPcondを再現することに成功した。以上の結果から,k*c=10−17は温度,細孔径に依らない普遍的な値であることが明らかとなり,この値一つで広範な温度・細孔径における毛管凝縮挙動の予測が可能となった。
3.3. 毛管凝縮の速度定数の圧力依存性
Fig. 5a–cに示されるとおり,圧力が僅かに変化するだけで,毛管凝縮の速度定数は桁が劇的に変化していることがわかる。これは,たとえ平衡待ち時間を多少長くしたとしても,観測される毛管凝縮圧はほとんど変化しないということを意味する。このことは,サンプルが同じであれば,測定する人や場所,装置に依らず(つまり多少の測定条件の違いがあったとしても),ほぼ同じ吸着等温線が得られるという経験的な事実に符合する。また,Fig. 5aからわかるとおり,細孔径3.3 nmのMCM-41について,75 KのPeqにおける凝縮の速度定数はk*(Peq)=10−27であり,これは臨界速度定数k*c=10−17よりも1010分の1である。これより,この系において吸着ヒステリシスのない可逆な等温線を観測するためには,通常の1010倍の平衡待ち時間が必要であることがわかる。通常の平衡待ち時間はhourオーダー(103 s)であるため,可逆な等温線を観測するためには,約103 s×1010=1013 s=100万年の年月を待たねばならず,事実上不可能であるということが明らかとなった。
3.4. GCMC系と実在系の臨界速度定数の比較
GCMCシミュレーションにおいて,計算ステップ数を10倍(つまりは計算時間を10倍)にすると,発生確率が10分の1のレアイベントを観測できると予想される。毛管凝縮の無次元速度定数k*(μ)は毛管凝縮が発生する確率と解釈できることから,105 MC step/atomではk*(μ)=k*c,GCMC=10−4以上の確率で発生する毛管凝縮のみ観測できたことがわかる。これから,計算ステップ数を10倍の106 MC step/atomとすると,k*(μ)=10−5の発生確率の毛管凝縮を観測することができる,つまり,より低圧(低化学ポテンシャル)で毛管凝縮を観測することができると予想される。したがって,GCMCシミュレーションのみで実験の毛管凝縮挙動を再現しようとするならば,実在系の臨界速度定数はk*c=10−17であることから,必要な計算ステップ数は105 MC/atomのk*c, GCMC/k*c=1013倍となる。現状,105 MC/atomのシミュレーションの実施にdayオーダーの時間がかかっていることから,GCMCシミュレーションにより毛管凝縮圧を直接予測するためには,100億年オーダーの計算時間が必要であることとなり,現実的に不可能であることがわかる。