日本ゼオライト学会 刊行物 Publication of Japan Zeolite Association

ISSN: 0918–7774
一般社団法人日本ゼオライト学会 Japan Zeolite Association
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Zeolite 32(4): 150-151 (2015)
doi:10.20731/zeoraito.32.4.150

レポートレポート

第23回ゼオライト夏の学校参加報告

北海道大学大学院総合化学院 博士後期課程2年

発行日:2015年12月10日Published: December 10, 2015
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2015年9月3日から5日にかけて第23回ゼオライト夏の学校が神奈川県三浦市,マホロバ・マインズ三浦にて開催されました。今回の夏の学校は6名の講師の先生方を含めて56名(うち学生43名)が参加し,ゼオライトの基礎から応用までの幅広い内容を学びました。

初日,最初の講義は産業技術総合研究所の遠藤明先生に「ガス吸着および蒸気吸着によるナノ多孔質材料の細孔特性評価」という題目でご講演いただきました。ガス吸着を用いて細孔特性を評価する上で知っておくべきことを測定編と解析編に分け,イメージ図を用いながら基礎からご解説いただきました。ゼオライトの特性評価を行う上で,不可欠な細孔特性評価について,原理から復習するとてもいい機会でした。続いて,東ソー株式会社の小川宏先生による「合成ゼオライトの製法と工業化」と題したご講演でした。ラボスケールでのゼオライト合成では,結晶化因子を整理しながらご解説されました。さらに,後半部では,工業化における変動因子(4M因子:原料(Material),機械(Machine),人(Man),方法(Method))の明確化の重要性について理解が深まりました。

講演終了後の懇親会では,三浦海岸の魚介類に舌鼓を打ちながら,研究室ごとに研究室紹介を行い,参加者同士の親睦を深めることができました。

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懇親会の様子

2日目,最初の講義は国立科学博物館の門間綱一先生による「天然シリカクラスレートの結晶構造解析」という題目でご講演いただきました。ご講演では門間先生自身が発見した千葉石,房総石を中心として広義のゼオライトの一種であるクラスラシルの結晶構造解析についてご紹介いただきました。メラノフロジャイト,千葉石,房総石それぞれが有する結晶構造について,分子動力学的シミュレーションを用いながらも,地質学的なアプローチを行っていることが非常に新鮮でした。続いて,「固体酸性質の解析」という題目で鳥取大学の片田直伸先生にご講演いただきました。ゼオライトの大きな特徴である固体酸性について,その定量的な測定法と解析原理をご解説いただきました。特に,結晶構造と酸性質の関連性では,数式だけではなく,アニメーションを用いてご説明いただけたので,視覚的にも理解を深めることができました。

2日目の講演終了後は,ポスターセッションが開かれました。計27件のポスターボードの前には人が群がり,非常に活発な議論が交わされました。特に,参加者の大半を占めていた学部4年生,修士1年生にとって,発表する経験を得ることができた非常に有意義な時間だったのではと思います。参加者の投票により,ポスター賞(高石賞)は北海道大学の中岡尚太さんと横浜国立大学の福岡拓也さんの2名に贈られました。

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ポスター発表の様子

最終日の朝は北海道大学の増田隆夫先生に「ナフサ接触分解の触媒反応工学的研究」と題し,ご講演いただきました。ゼオライトを触媒反応に用いる上で課題となる分子の細孔内拡散に対する結晶の微小化の有用性を反応工学に基づいてご解説いただきました。ナフサ接触分解を例に挙げ,ゼオライトの酸点上における反応速度と細孔内における分子の拡散係数によって決まるThiele数,触媒有効係数を用いながらご説明され,触媒設計の指針となる重要な知見を得ることができました。最後に,JX日鉱日石エネルギー株式会社の早坂和章先生に「ゼオライト触媒を使用した石油精製プロセス開発」という題目でご講演いただきました。分子レベルでの反応を制御しながらも,スケールアップの際に生じる問題の解決について反応工学的にご解説いただきました。特に,通常の流動接触分解(FCC)プロセスとは逆にダウンフローで原料を供給する高過酷度流動接触分解(HS-FCC)では,反応器内における流体の滞留時間が均一化され,水素移行や熱分解などの二次的に発生する反応を抑制し,ライトオレフィンを効率的に生産されるお話しが印象に残っています。

2泊3日の第23回ゼオライト夏の学校は,講演や懇親会などを通してゼオライトの設計・合成・解析に関する知見を得ることができ,充実した時間を過ごすことができました。一方で,他大学の学生,先生の方々と交流することができ大変良い経験となりました。最後になりますが,ご多用中の所,興味深いご講演を頂きました講師の先生方,および企画・運営頂きました皆様にこの場をお借りし厚く御礼申し上げます。

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参加者の集合写真

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