日本ゼオライト学会 刊行物 Publication of Japan Zeolite Association

ISSN: 0918–7774
一般社団法人日本ゼオライト学会 Japan Zeolite Association
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5 アカデミーセンター Japan Zeolite Association Academy Center, 358-5 Yamabuki-cho, Shinju-ku, Tokyo 162-0801, Japan
Zeolite 32(4): 144-149 (2015)
doi:10.20731/zeoraito.32.4.144

レポートレポート

ZMPC2015概要報告

発行日:2015年12月10日Published: December 10, 2015
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1. はじめに

ZMPC2015(International Symposium on Zeolites and Microporous Crystals 2015)が,2015年6月28日(日)から7月2日(木)まで札幌市の札幌コンベンションセンターで開催された。増田委員長(北大)のもと,山下(阪大,副委員長),神谷(北大,総務),窪田(横国大,財務),近江(岐阜大,広報),片田(鳥取大,プログラム),小倉(東大,プログラム)をコアメンバーとして,2013年秋より準備を開始した。最終的には68名の国内組織委員会,56名のInternational Advisory Board(IAB)を組織して,学会の準備を進めた。また,15学協会より協賛を頂いた。詳細はホームページ(http://www.knt.co.jp/ec/2015/zmpc/index.html)を参照されたい。

同時期に分野が一部重複する国際会議がアジア圏で開催されたため,講演者・参加者が集まるか心配されたが,何とか無事に学会を終了し,11月の理事会・総会で報告することで,我々の任務は完了した。ここでは,反省や今後の課題も含めて,ZMPC2015の概要を報告する。なお諸氏による学会参加報告が,すでに本誌ゼオライトVol. 32, No. 3に掲載されているので,あわせてそちらも参照されたい。

ZMPCの第1回は,1990年に東京で開催された。当時はZMPCではなくCMPC(Chemistry of Microporous Crystals)と呼ばれていた。その後,ZMPC1993(名古屋),ZMPC1997(東京),ZMPC2000(仙台),ZMPC2006(米子),ZMPC2009(早稲田),ZMPC2012(広島)とほぼ3年ごとに開催され,今回はその第8回となった。国際ゼオライト学会が主催するIZC,欧州ゼオライト連合が主催するFEZA,ゼオライト学会が主催するZMPCがそれぞれ3年ごとに,重ならないように開催されている。諸先輩のご尽力により,ZMPCは世界の関係者から主要なゼオライト国際会議として高い評価をいただいている。2003年に札幌で開催予定であったZMPC2003はSARSの影響で中止となり,それから10余年を経て今回,ZMPC2015として札幌で開催できたことを,組織委員として非常に嬉しく思う。

2. 発表・参加募集

前述したように同時期にアジアで分野が重なる国際会議があることが判明し,発表者・参加者が集まるか心配された。また,前回ZMPC2012の参加者数が過去最大(464名)であったことも,組織委員会としてプレッシャーを感じた。そのような中において広報活動に多くの力を注ぎ,最終的に435名(うち海外209人,国内226名)(招待・協賛61名,会員・一般249名,学生109名,同伴16名)の方に参加して頂いた。前回には及ばなかったものの,400名の大台を超え組織委員会としては安堵した。参加国別の構成を表1に示す。ZMPC2012と比べて国内参加者数が減少した(273名→226名)。一方,中国からの参加者が大幅に増えており(17名→53名),これが全体の参加数者の確保に大きく貢献した。しかし,欧米諸国からの参加者数はやや減少しており,次回の組織運営および広報活動において解決すべき課題である。

表1 国別参加者数
オーストラリア1(1)スロバキア1(0)ノルウェー1(2)ブルガリア1(3)
ポルトガル2(0)フィンランド2(0)ロシア3(4)デンマーク3(1)
ベルギー3(4)イギリス4(9)トルコ4(0)スペイン4(3)
ポーランド4(5)オランダ5(6)イタリア5(5)チェコ5(16)
フランス6(8)ドイツ7(9)スウェーデン12(8)サウジアラビア1(4)
UAE3(0)エジプト0(2)アメリカ15(20)カナダ0(2)
ブラジル1(0)メキシコ1(2)インド5(3)インドネシア3(0)
フィリピン1(0)台湾23(27)韓国30(24)中国53(17)
日本226(273)その他0(6)
合計435人(海外209人).※カッコ内の数字は,前回(ZMPC2012)の参加者数

組織委員およびInternational Advisory Boardメンバーからの推薦をもとに,最終的にPlenary Lecture(PL)6件(うち国内2件)とKeynote Lecture(KN)17件(うち国内5件)を決定した。表2に一覧を示す。なお,ZMPC2015に合わせて来日されたIZAアンバサダーのFrançois Fajula博士(CNRS,フランス)に特別講演(SL)をお願いし,懇親会直前に講演して頂いた。Fajula博士の来日中の様子は,本誌ゼオライトVol. 32, No. 3に掲載されているので,そちらを参照されたい。

表2 招待講演のリスト
講師所属,国題目
PL-1Giuseppe BellussiEni S.p.A., ItalyHybrid organic-inorganic, crystalline or pseudo-ordered, porous silicates
PL-2Michael TsapatsisUniversity of Minnesota, USA2-dimensional zeoltes: from high-quality exfoliated nanosheets for thin film formation to self-pillared nanosheets for catalysis and adsorption
PL-3Qianjun ChenUOP, USAInnovations in Zeolite Synthesis and Applications at UOP
PL-4Minoru MiyaharaKyoto University, JapanFluids in Nanopores and Adsorption-driven Structure Transition of Compliant Crystals
PL-5Ferdi SchüthMax-Planck-Institut für Kohlenforschung, GermanyPorous polymers as catalysts and catalyst supports
PL-6Tsuneji SanoHiroshima University, JapanHigh potential of interzeolite conversion as an alternative method for zeolite synthesis
SLFrançois FajulaCNRS. University of Montpellier, FranceGreen Sustainable Science and Technology Supported by Worldwide Researchers' Community for Micro- and Meso-porous Materials
KN-1Yuriy RomanMassachusetts Institute of Technology, USALewis acid zeolites for biomass conversion: insights on reactivity, characterization, and stability
KN-2Yoshihiro KubotaYokohama National University, JapanPreparation of high-performance zeolite catalysts through the control of defect sites
KN-3Cong-Yan ChenChevron Energy Technology Co., USAInvestigation of Shape Selective Properties of SSZ-87 and Other Zeolites via Hydrocarbon Adsorption and Catalytic Test Reactions
KN-4Naonobu KatadaTottori University, JapanVariation of Brønsted Acid Strength of Aluminosilicates: Measurements and Analysis of Its Origin
KN-5Emiel J.M. HensenEindhoven University of Technology, The NetherlandsOn the role of defects in the deactivation of zeolite SSZ-13 in the methanol-to-olefins reaction
KN-6Zhongmin LiuChinese Academy of Sciences, ChinaRecent progress on fundamental researches of MTO reaction
KN-7Fernando ReyInstituto de Tecnología Química, SpainNew Organic Structure Directing Agents for Synthesis of Zeolites
KN-8Feng-Shou XiaoZhejiang University, ChinaGreen routes for synthesis of zeolite catalysts
KN-9Manuel MolinerInstituto de Tecnología Química, SpainRationalizing the synthesis of small pore zeolites with large cavities
KN-10Furio CoraUniversity College London, UKStructure and catalytic activity of transition metal doped AlPOs – a computational perspective
KN-11Raul LoboUniversity of Delaware, USANovel Active Sites and New Opportunities in Zeolite Catalysis
KN-12Masaru OguraUniversity of Tokyo, JapanPurification of Diesel Engine Exhaust using Zeolite Catalysts
KN-13Masahiko MatsukataWaseda University, JapanMicroporous Membrane Technologies for Energy and Chemicals Production
KN-14Matthias ThommesQuantachrome Instruments, USAProgress and challenges in the physical adsorption characterization of mesoporous zeolites
KN-15Jorge GasconDelft University of Technology, The NetherlandsRational design of structured catalysts and membranes
KN-16Christian SerreUniversitè de Versailles Saint-Quentin-en-Yvelines, FranceFrom synthesis to applications of stable MOFs
KN-17Hirotomo NishiharaTohoku University, JapanZeolite-templated carbons and their applications

広報活動として,First Circular/Call for papers (2000部)を国内外の学会等で配布した。また,ホームページならびに電子メールを使い参加と発表を呼びかけた。電子メールによる広報活動は,過去のZMPC参加者に加えて,過去数年のMicropor. Mesopor. Mater.誌,J.Porous Mater.誌,FEZA要旨集の責任著者に対しても行った。ZMPCと深く関係したこれらの責任著者への広報活動により,ZMPC2015において最近のホットな話題をいくつか提供でき,また新規参加者を開拓できたのではないかと思っている。

最終的な発表件数は,基調講演(PL,6件),特別講演(SL,1件),招待講演(KN,17件),口頭発表(94件),ポスター&RRR発表(177件)の計295件となった。過去最大の発表件数(347件)であった前回には及ばなかったが,ZMPC2009,2006と同等の発表件数を確保することができた。なお,発表者が事前参加登録を行わないと発表がキャンセルになるようにしたため,当日のキャンセルはほぼゼロであった。ただし,事前参加登録を行わずにキャンセルとなった発表が55件発生し,催促や登録状況の確認など事務局の負担は大きかった。同様の問題は他の国際会議からも聞いており,発表申込者のモラル向上が求められる。発表分野の構成を図1に示す。発表分野の構成は前回とほぼ同じであった。

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図1 発表の分野構成

3. 学会準備と運営

学会の運営に際しては近畿日本ツーリスト北海道と契約し,参加申込みの受付だけでなく,発表申込みとアブスラクトの審査も同社のシステムを利用した。同社の投稿・審査システムは過去に札幌で開催された数回の国際会議での使用実績があり,その都度,ブラッシュアップされてきているので,片田先生・小倉先生の両プログラム委員長の指揮の元,大きな混乱もなく審査が行えたと思う。また,会場の準備なども多くの部分を同社が行い,組織委員の仕事は大きく軽減された。予算的には北海道大学での開催が望ましいが,全参加者を一度に収容できる規模の会場を確保できないため,全日程を札幌コンベンションセンターで開催した。コンベンションセンター内の4会場を同一フロアーに確保し,基調講演とバンケットを特別会議場で,それ以外の講演・発表を隣接したA〜C会場の3室で行った。A〜C会場は非常に広く,部屋の前半分は口頭発表用に机と椅子を配置し,後ろ半分はポスター会場として使用した。空間的に余裕を持ってポスターボードを配置できたため,ポスター発表特有の窮屈さもなく,発表者・聴講者とも発表に集中できたと思う。前回と同様にスタッフTシャツを作成し,学生アルバイトと一部スタッフも着用した。Tシャツ背面には筆書きで「ぜおらいと」と印刷し,袖にはZMPCのロゴマークを付した。

タイムテーブルは基本的に前回を踏襲し,初日受付の混雑緩和のため初日(6月28日)は参加登録とウェルカムパーティーのみとし,翌日からの3日半に講演を集中させた。質疑応答も含め,口頭発表は20分,招待講演と特別講演は30分,基調講演は60分とした。プログラム委員会はアブストラクトの質を最大限に重視しつつ,研究グループの重複,分野と地域のバランスを考慮して口頭発表の採択を決定した。ポスター発表は2回に分け,しっかりと議論ができるよう十分な時間を確保した(図2,3)。

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図2 講演の様子とZMPC2015立看板

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図3 ポスター発表の様子

前回と同様,参加者にはプログラム付Abstract集の冊子体とExtended Abstractが保存されたUSBメモリーを配布した。また,カンファレンスバッグは不織布で制作した簡易的なものを用意し,Tシャツと同じ「ぜおらいと」の文字とロゴが印刷されたオリジナルデザインのものを配布した。

Social Program

学会3日目の午後にエクスカーションを実施した。北海道の文化を学ぶコースと自然を知るコースの2コースを用意し,参加者は事前にコースを選択した。文化を学ぶコースは,NHK朝の連続ドラマ「まっさん」で話題となった余市ニッカウヰスキー余市蒸溜所と小樽運河を回った。一方,自然を知るコースは,活火山がほとんど無い欧米からの参加者を意識して洞爺湖有珠山ジオパークの見学をメインとし,昭和新山周辺の散策を取り入れた。参加者の割合は2:3程度であった。約半数のバスに英語通訳を付け,海外からの参加者にも楽しんでもらうよう配慮した。あいにく小雨交じりの天候であり,北海道の雄大な景色を楽しむことは難しかったようであるが,参加者には楽しんで頂けたと思っている(図4)。最終的に札幌ビール園に全参加者が集結し,ジンギスカンと札幌ビールを十分に堪能してもらった。「これぞ札幌」を感じてもらえたと思う。ホールを貸し切った400人による大ジンギスパーティーは,バンケットとは異なりカジュアルな雰囲気に包まれ,参加者の友好が大いにはかられたようである。直前まで各コースの参加者数が確定しない中でも緻密に計画を立てて頂いた近畿日本ツーリスト北海道と現場スタッフ,ツアーガイド役の学生アルバイトに感謝する。

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図4 エクスカーションの様子

学会4日目の夜に,札幌コンベンションセンター特別会議場においてバンケットを行った。現地実行委員荻野(北大)の司会のもと,最初に増田委員長が挨拶し,北海道大学総長 山口佳三先生,IZA会長Giuseppe Bellussi博士,北海道庁経済部佐藤和哉様から祝辞を頂いた後,ゼオライト学会元会長 小野嘉夫先生の乾杯で開宴となった。北寄貝など道産食材を使った欧風料理を提供させて頂いた。宴の途中で女太鼓士による迫力ある和太鼓が演奏されるなど,終始,和やかな楽しい会となった(図5)。バンケットと同じ時間帯に学生を対象としたスチューデントパーティーをビアレストランで開催した。司会,誘導など学生が主体となってパーティーを取り仕切った。英会話もままならない日本人学生も,外国からの参加者と打ち解けることができたようで安心した(図6)。

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図5 バンケットの様子

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図6 スチューデントパーティーのひとコマ

今回,新たな試みとして日本企業の技術力を紹介するランチョンセミナーを3日間,開催した。初日はリファイナリー,2日目はペトロケミカル,3日目は触媒・分析機器とテーマを設定し,各日,3〜4社に会社と自社技術を紹介してもらった。ランチョンセミナー参加者には弁当を配布した。連日,セミナーチケットは全て無くなるほど大盛況であった。各社15分程度の持ち時間は,丁寧に説明するには足りず逆に自社ビデオを流すには長く,やや中途半端の感があった。これは反省事項である。

プレシンポジウム

プレシンポジウムは,小倉賢先生が委員長となり本体直前の6月26,27日に東京(東大,生産技術研究所)で開催した。“Zeolite for SCR”をテーマとした招待講演があり,参加者は61名であった。参加報告が本誌ゼオライトVol. 32, No.3に掲載されているので,詳しくはそちらを参照されたい。

財務

参加者数によっては赤字の恐れもあったため,慎重に予算を組むとともに,余分な支出の削減に努めた。会期前に収入の目処をつけるため,また発表のキャンセル対策も兼ねて,事前参加登録を強く推奨した。具体的には,早期登録(Early bird)を安く設定し,通常登録(Regular)と当日登録(On-site)が割高になるようにした。その結果,当日登録は数名であった。これは,予算管理の上で極めて有効であった。

近年,札幌では国際会議が多く開催されるため,道や市の助成を得ることは年々,難しくなっている。また,動き出しが遅かったせいもあるが,ZMPC2015では外部団体からの助成金も得られなかった。このような状況の中で助成して頂いた,北海道大学工学部には深く感謝する。また,ゼオライトに関連する企業からも,展示,ランチョンセミナー,広告,協賛として多くの支援を頂いた。最終的な収入は約2700万円となり,様々な削減努力と適切な支出管理によって,約50万円が黒字になりゼオライト学会国際交流基金に返金した。収入が不確定な状況では,赤字を恐れるために積極的な支出をすることがためらわれるが,前述のように今回は会期前に収入の目処が立った中でのハンドリングであったため,安心して運営することができた。

なお,ZMPC2015の開催にあたりご支援いただいた,北海道大学工学部,旭化成ケミカルズ(株),出光興産(株),カンタクローム・インスツルメンツ・ジャパン(合),クラリアント触媒(株),JX日鉱日石エネルギー(株),住友化学(株),ダッソー・システムズ・バイオビア(株),東ソー(株),(株)ヒロ,日揮(株),日揮触媒化成(株),(株)日本触媒,(株)ノリタケカンパニーリミテド,マイクロトラック・ベル(株),マイクロメリティックスジャパン(合),三井化学(株),(株)三菱化学科学技術センター,三菱レイヨン(株)に心より感謝する。

4. おわりに

以上,ZMPC2015の概要を説明した。IZA会長のBellussi博士を始めとするIZA council memberから,プログラム構成,発表の質ともに問題なく,この状態を維持し継続した国際会議にして欲しいとの要望を受けた。また,IZAアンバサダーのFajula博士から頂いた「perfect」のお褒めの言葉は,組織委員として大いに励みになった。

最後になりますが,助成を頂いた北海道大学ならびに様々な形で支援頂きました関係各社,IAB・組織委員の皆様,運営にあたり献身的に働いて頂いた近畿日本ツーリスト 岡本氏に感謝いたします。また,実際の運営に尽力いただいた現地実行委員の皆様(北大:清水研一,荻野勲,岩佐信弘,小林広和,中坂佑太,阿久津和代,室工大:神田康晴,東工大:多湖輝興,首都大:村山徹)ならびに学生スタッフの皆様に,心より感謝する。

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