日本ゼオライト学会 刊行物 Publication of Japan Zeolite Association

ISSN: 0918–7774
一般社団法人日本ゼオライト学会 Japan Zeolite Association
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5 アカデミーセンター Japan Zeolite Association Academy Center, 358-5 Yamabuki-cho, Shinju-ku, Tokyo 162-0801, Japan
Zeolite 32(3): 71-79 (2015)
doi:10.20731/zeoraito.32.3.71

解説解説

中空および鈴型の構造を有するメソポーラスシリカの合成とその利用Synthesis of Mesoporous Silica Spheres with Hollow and Rattle-type Structures and Their Application

東京工業大学大学院理工学研究科応用化学専攻Department of Applied Chemistry, Graduate School of Engineering, Tokyo Institute of Technology ◇ 〒152-8552 東京都目黒区大岡山2-12-1-E4-4 ◇ 2-12-1 Ookayama, Meguro-ku, Tokyo 152-8552, Japan

受理日:2015年6月26日Accepted: June 26, 2015
発行日:2015年9月10日Published: September 10, 2015
HTMLPDFEPUB3

形状や構造制御によるメソポーラスシリカの高機能化を目指し,中空および鈴型の構造に制御したメソポーラスシリカを合成した。本稿では合成法と構造を生かした利用法を紹介する。構造制御の方法として,親疎水性の異なるコア–シェル構造体を合成し,選択的に親水性部分を除去する方法を開発した。また,合成した中空メソポーラスシリカが内部に大きな空間を有しているという特長を生かして,薬物容器とミクロ反応容器として利用できることを見いだした。薬物容器の利用では,内包した薬物が一定の速度で放出する容器として利用できた。また,ミクロ反応容器としては,二相系反応に中空粒子を加えると,反応速度を約3倍に向上できることを見いだした。

We have controlled shapes and structures of mesoporous silicas to give novel functions to conventional mesoporous silicas. Here, synthesis of mesoporous silica spheres with hollow and rattle-type structures and their applications are introduced. The methods of selective removal of a hydrophilic part from core (hydrophobic)–shell (hydrophilic) structures was developed. To exploit the large void in the hollow particles, applications to drug vessels and microreactors were demonstrated. Drugs encapsulated in the hollow were released at a constant and slow rate. Addition of hollow mesoporous silica spheres as microreactors to two-phase reactions increased reaction rates almost three times.

キーワード:中空構造;鈴型構造;シリカ分解;薬物徐放;ミクロ反応容器

Key words: hollow structure; rattle-type structure; silica deformation; controlled release; microreactor

1. はじめに

規則性多孔体であるゼオライトや規則性メソポーラスシリカは,大きさの揃った細孔が規則的に並んでおり,また高表面積を有している。これらの特長を生かして,触媒担体や吸着剤として広く利用されている。我々は,規則性多孔体の構造や形状を制御して新たな機能を付加させることにより,高機能材料としての利用の開発を行っている。これまでに報告されている多孔体の形状制御としては,主に膜や微粒子化である。

我々は規則性多孔体の形状として多孔体内部に大きな空間をもつ中空構造に注目した。この大きな空間には様々な物質を大量に内包することができる特徴がある。中空の多孔体材料の合成法としては,いくつかの方法が報告されている。代表的な方法としては,ハードテンプレートを用いる方法がある1,2)。一般的には,ハードテンプレートとしてポリスチレンビーズを用い,その周りに多孔体を形成させて,最後の焼成によりポリスチレンビーズを除去する。この方法で合成された中空材料の大半は,不規則な細孔を有する材料である。近年になって,放射状の細孔を有する材料も合成されるようになった2)。ハードテンプレート法では,多孔体合成の前にハードテンプレートを合成する必要がある。このステップをなくした合成法に,ソフトテンプレート法がある3)。エマルションが形成する条件で多孔体を合成することにより,液滴がソフトテンプレートとなる合成法である。この方法のメリットはone-potで合成できることである。しかし,形状やサイズの制御が難しく,細孔構造も規則的ではない。したがって,これらのテンプレート法以外に,新たな合成法の開発が必要である。我々はメソポーラスシリカ粒子の内部を選択的に取り除くことにより中空構造の合成を目指した。粒子のコア部分とシェル部分で親・疎水性を変えることにより,その差を用いてコアのみの選択的分解を行い,中空多孔体を合成する方法を開発した4,5)

さらに,得られた中空メソポーラスシリカの利用法についても報告した4,5)。中空多孔体は大きな空間に様々な物質を内包することができる。例えば,内部に金属粒子などの触媒活性成分を内包した中空材料は,これまでにいくつか報告されている6)。しかし,それらの報告では中空という大きな空間を有効に利用していない。そこで,中空部と外部がメソ孔でつながった中空メソポーラスシリカの合成法と,大きな空間を有効に使用した利用法の開発を行った。

2. 中空メソポーラスシリカの合成法

2.1 炭酸ジメチルによるシリカの分解

親・疎水性の異なるコア–シェル構造のメソポーラスシリカ粒子を用いて,粒子内部のコアを選択的に分解することにより,中空のメソポーラスシリカを合成した4)。合成スキームをFig. 1のmethod 1に示す。

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Fig. 1. Scheme for the synthesis of hollow mesoporous silica spheres.

まず,コアが親水性でシェルが疎水性のコア–シェル構造の球状メソポーラスシリカを調製した。球状メソポーラスシリカは,Yanoらの報告に従い合成した7)。この合成法では,放射状の規則的に配列したメソ孔が形成され,粒子の成長が容易であるという特徴がある。そこで,コアには通常のメソポーラスシリカを合成し,単離することなく連続して,その粒子にプロピル基を有するメソポーラスシリカを粒子成長させた。このようにしてone-potでコアとシェルの性質が異なる球状メソポーラスシリカを合成した。その後抽出によりメソ孔の鋳型となる界面活性剤を除去した。

次に,親水性のコアのみを分解し,中空部を形成した。メソポーラスシリカであるコアの分解には,炭酸ジメチルによるシリカの分解反応を利用した8)。この反応は,分解触媒であるアルカリ金属塩が存在するところのみで進行する。そこで,疎水性部分にはアルカリ金属塩が担持されにくく親水性部分には担持されやすい性質を利用して,コアのみにアルカリ金属塩を担持し,中空部の形成を行った。分解触媒を担持したメソポーラスシリカに炭酸ジメチル蒸気を360°Cで流通し,分解生成物であるテトラメトキシシランの生成量を積算することにより,ちょうどコアが分解した量のテトラメトキシシランが生成したときに分解反応を停止した。得られた粒子の走査および透過電子顕微鏡(SEM, TEM)像をFig. 2に示す。分解処理前の粒子は球状で粒子径がほぼ均一である。処理後も粒子の形状や粒子径に変化は見られなかった。処理後の粒子をハンマーで破壊し観察すると,中空であることがわかった。さらにTEM観察からも,粒子が中空になっていることがわかった。放射状に配列したメソ孔を有する球状メソポーラスシリカを用いて合成しているため,得られた中空シリカも放射状の細孔を有する。また,この方法では,コアとシェルの比を変えることやコアが完全に分解する時間以上に分解時間を長くすることにより,容易にシェルの厚さや中空部の大きさを制御できる。

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Fig. 2. SEM images of hollow mesoporous silica spheres prepared by treatment with dimethyl carbonate.

(a) before the treatment, (b) after the treatment, (c) hollow spheres broken using a hammer, (d) TEM image4).

炭酸ジメチル処理による中空シリカを合成できたが,Fig. 1のmethod 1で示すように合成方法(特に触媒の担持操作)は煩雑で,かつ,大量合成に適していないという問題点がある。そこで,より簡便に合成する手法を開発した。

2.2 アンモニア水によるシリカの分解

シリカはアルカリ性の水溶液で分解することが知られている。この性質を利用してコア–シェル構造のメソポーラスシリカを用い中空シリカの合成を行った5)。炭酸ジメチルによる分解処理の場合と同様に,コアが親水性でシェルがプロピル基を有する疎水性のコア–シェル構造のメソポーラスシリカを用いた。コアはアルカリ性のアンモニア水により分解するが,シェルはプロピル基の保護により分解しないと考えた。この方法はコア–シェル構造のメソポーラスシリカをアンモニア水中で処理するだけであり(Fig. 1のmethod 2),炭酸ジメチルによる処理に比べて簡便であり,大量合成にも適している。

カチオン性界面活性剤である塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(C16TMACl)存在下で,アンモニア水による処理を行った。Fig. 3に処理後のSEM,TEM像を示す。処理後の粒子の形状も球状で,均一な粒子径であった。ハンマーで粒子を破壊すると中空構造であることがわかった。界面活性剤を用いない場合もアンモニア水の処理により中空構造が形成されたが,細孔径の分布が広がった。このことから,界面活性剤がないとアンモニア水の処理によりシェルの一部も分解する,すなわち,界面活性剤によりシェルの分解が抑えられることがわかった。通常のメソポーラスシリカ粒子とプロピル基を有するメソポーラスシリカ粒子を用いて,溶解速度を比較した。結果をTable 1に示す。界面活性剤が存在しない場合,溶解速度の比は10であった。界面活性剤が存在するとプロピル基を有するシリカの分解速度のみが低下し,速度比は24まで向上した。界面活性剤が存在すると分解速度の差が大きくなることにより,メソ孔径が揃った中空シリカが合成できることがわかった。この添加効果は,アニオン性の界面活性剤であるヘキサデカンスルホン酸塩やアルキル基を有しないテトラメチルアンモニウム塩を用いた場合には見られなかった。以上のことからFig. 4に示した機構によりシェルが溶解しないと推測した。表面のプロピル基と界面活性剤のアルキル基との相互作用によりシェルのみに吸着する。その時,カチオン部位がシリカ表面のSi–Oの対カチオンとなる。その結果,プロピル基と界面活性剤のアルキル基の両方により,アンモニア水からシェルが保護されると考えた。

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Fig. 3. Hollow mesoporous silica spheres prepared by treatment with ammonia aqueous solution.

(a) SEM image (inset: spheres broken using a hammer), (b) and (c) TEM images5).

Table 1. Dissolution rates for the mesoporous silica spheres in the absence and presence of the surfactant C16TMACl5).
C16TMACl surfactantMesoporous silica spheresInitial dissolution rate/mol L−1 min−1Ratio of initial rates
NonePure silica3.0×10−410
Silica grafted with propyl groups3.0×10−5
AdditionPure silica3.1×10−424
Silica grafted with propyl groups1.3×10−5
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Fig. 4. Speculated mechanism for the interactions between the mesopore walls and alkyltrimethylammonium ions5).

アンモニア水の処理による合成法は簡便であるが,得られた中空シリカの細孔径分布は炭酸ジメチル処理により合成した中空シリカと比べて若干広がりがあり,均一性に劣る。これは,界面活性剤を用いてもシェルが少し溶解しているためと考えられる。より細孔径が揃った中空シリカを得るためには炭酸ジメチルを用いる方法が適している。

3. 中空メソポーラスシリカの利用

3.1 薬物徐放用の容器

中空メソポーラスシリカは,内部に大きな空洞があるため,大量の物質を内部に蓄えることができる。薬物を内部に蓄えることにより,薬物容器としての利用が考えられる。中空メソポーラスシリカを薬物容器として用いる場合,中空部と外部は均一なサイズのメソ孔で繋がっているため,狭いメソ孔内を薬物が通ることにより放出速度が遅くなると期待できる。また,細孔が放射状に配列しているため放出経路の長さが最短でかつ均一であり,一定の放出速度になると考えられる。

薬物として9-フェニルアントラセンを用い,薬物の放出実験を行った4)。フェニルアントラセンを内包した中空シリカを窒素流通下130°Cに加熱し,気体となって放出される薬物の減少量の時間変化を測定した。結果をFig. 5に示す。細孔径が50 nmのシリカゲルの細孔に薬物を担持した場合,一定の速度で重量が減少した。これは,薬物が昇華し飽和蒸気圧分の一定量で放出したためであると考えられる。中空シリカを用いた場合,10時間程度はシリカゲルと同じ速度で減少した。その後,半分程度の一定速度で薬物が放出された。最初の10時間には中空粒子の外表面および粒子間空隙についた薬物が放出され,10時間以降のゆっくりとした放出は中空部からの放出であると考えられる。一方,中空ではないメソポーラスシリカを薬物容器とした場合,蓄えられる薬物量は少ない。また,放出される薬物量は時間とともに減少する。これはFickの拡散の法則に従ったHiguchi拡散モデルで説明されている9)。薬物を徐放させる場合,一定の速度で放出させることが望ましいため,中空でないメソポーラスシリカは薬物容器として適していない。我々は中空容器を用いると一定の速度で放出することを報告した。これは,中空内部は常に薬物の飽和蒸気圧となるため,粒子外部との薬物の濃度差は常に一定となり,細孔内の拡散速度が一定になるReservoirモデル10)により説明できると考えた。

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Fig. 5. Release of 9-phenylanthracene encapsulated in (a) silica gel and (b) hollow spheres into a vapor phase.

Release temperature: 130°C, dry air stream: 40 mL min−1, sphere: 30 mg, 9-phenylanthracene: 40 mg4).

以上のように,中空メソポーラスシリカでは,狭い細孔を薬物が通るため拡散律速になり薬物が徐放されること,および楽物の放出速度は常に一定であることから,薬物徐放容器として適していることを明らかにした。長期間効力が持続する防虫剤や除草剤などの容器として用いることが期待できる。

3.2 ミクロ反応容器

中空多孔体を化学反応に使用した研究が多く報告されている。その大半は,中空部に触媒活性種である金属内の粒子などを内包したものである。例えば,中空部に金属ナノ粒子を内包した報告では,多孔体のシェルにより金属のシンタリングが抑えられ,失活が抑制される,あるいは,中空部で反応物の濃縮が起こり反応速度が増加するという報告がある6)。しかし,中空多孔体の広大な中空部を有効に利用した研究はこれまで報告されていない。

中空メソポーラスシリカは内部の空間を有効に利用する方法として,二相系反応におけるミクロ反応容器としての利用を考えた。通常,二相系反応では,撹拌により液滴が生じて二相間の界面積が増大し,反応が促進する。さらに反応を進行させるためには,界面積を増加させるために界面活性剤,あるいは相間移動触媒を使用する。しかし,反応後の反応システムからこれらを回収することは難しい。我々が調製した中空メソポーラスシリカは直径約1 µmの球状粒子である。この大きさは,通常の液滴の大きさ(5 µm程度以上)よりも小さい。したがって,反応系内に中空シリカを加えることにより,内部に液体を内包した状態でもう一方の液相に移動すれば,すなわちミクロ反応容器として相間移動すれば,界面積が増大することが期待できる。

Fig. 6に,水相中に溶解した臭化ナトリウムと油相中の塩化ベンジルとの二相系ハロゲン交換反応に中空シリカを添加したときのイメージ図を示す。この反応では,撹拌に伴い,油滴が水相中に生成する。しかし,撹拌を停止すると直ぐに二相に分離することから,油滴は大きく,エマルションの安定性はかなり低い。この反応システムに中空メソポーラスシリカを加えた。臭化ベンジル収率の経時変化をFig. 7に示す。あらかじめ中空シリカの内部に水相を超音波振動により導入し反応に用いた結果,反応速度が増加した。中空ではない通常のメソポーラスシリカを用いると,同様に反応速度は増加するが,中空シリカの時に比べて増加量は少なかった。このことは反応速度のより増加させるには中空部が必要であることを示している。中空シリカは反応中,油相に移動していることを目視により確認した。したがって油相に移動する粒子の量を増加させると反応速度をさらに増加させることができると考えられる。そこで,油相になじみやすくするために中空シリカの表面を有機基で修飾した。メチル基,プロピル基,フェニル基で修飾すると,この順序で反応速度が増加した。撹拌時に油相に移動する粒子に数を測定した結果,反応速度の増加と同じ順序になった。このことから反応速度が増加する理由として以下のように考えた。水相を含んだ中空メソポーラスシリカが油相に移動することにより,水相と油相との界面積が増加し,反応速度が増加する。油相に移動した中空シリカ内の水相に溶解している臭化ナトリウムは反応により消費されるが,中空粒子が水相に戻ることにより水相から補給される。中空でないメソポーラスシリカを用いると,細孔内の少量の水相しかないため,油相中で臭化ナトリウムの量が急激に減少する。そのため反応速度を多少増加させるものの中空シリカに比べて増加量は小さくなると推測した。

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Fig. 6. Speculated reaction system in the reaction of benzyl chloride with sodium bromide in the presence of hollow mesoporous silica spheres5).

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Fig. 7. Benzyl bromide yield over time in the halogen exchange reaction between benzyl chloride and sodium bromide.

15 mmol of NaBr in 2 mL of water, and 15 mmol of benzyl chloride in hexane in an oil bath at 100°C, stirring at 1200 rpm. No spheres (a), non-hollow spheres (b), unmodified hollow spheres (c), hollow spheres modified with Me groups (d), Pr groups (e) and Ph groups (f). The mass of unmodified hollow spheres was 0.26 g, and the same number of modified spheres was added in each of the reactions using the modified spheres5).

水溶性のヒドロホルミル化触媒を溶解した水相と,油相として1-オクテンを用いた二相系ヒドロホルミル化に,中空メソポーラスシリカを加えて反応を行った。この反応では,オクテンの水への溶解度は低いため,二相の界面にてオクテンが触媒と接触することにより反応が進行する。中空シリカを加えると反応速度が増加し,フェニル基で修飾した中空シリカを用いるとさらに反応速度が増加した(Fig. 8)。中空シリカの有無にかかわらず,ノナナールへの選択率に違いは見られなかった,すなわち,中空シリカは触媒の性能に影響を及ぼさなかった。このことは,界面活性剤などを用いると金属錯体触媒に影響を及ぼすことに対して,中空シリカを用いる方法の利点となる。

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Fig. 8. Nonanal yield over time in the hydroformylation of 1-octene. In the autoclave, 1-octene (3.8 mmol) and the rhodium catalyst (7.5 µmol) dissolved in water (1.5 mL), the synthesis gas: 1.5 MPa. The reaction at 120°C, stirring at 260 rpm.

No spheres (a), unmodified hollow spheres, hollow spheres modified with Ph groups. The mass of unmodified hollow spheres was 0.20 g, and the same number of modified spheres was added in each of the reactions using the modified spheres5).

4. 鈴型メソポーラスシリカの合成と利用

3節にて,コア–シェル構造のメソポーラスシリカを用いて選択的シリカの分解を行うことにより,中空シリカが得られることを述べた。3層構造のメソポーラスシリカ(コアから疎水性–親水性–疎水性)を用いると,中空部の内部にメソポーラスシリカ粒子が存在する鈴型のメソポーラスシリカが合成できる。3層構造のメソポーラスシリカを合成し,アンモニア水を用いて分解反応を行った。得られた粒子と,ハンマーで破壊した時のSEM像をFig. 9に示す。外形は球状の粒子であるが,内部に小さい球状粒子が存在する5)

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Fig. 9. SEM images of rattle-type mesoporous silica spheres.

(a) spheres broken using a hammer, (b) spheres polished using argon beam, (c) image using incident electron accelerated at 30 kV5).

この鈴型メソポーラスシリカを酸触媒を有するミクロ反応容器として用いることを考えた。3層構造のコアの疎水性発現に3-メルカプトプロピルトリメトキシシランを用い,コアから疎水性(3-メルカプトプロピル基を有するシリカ)–親水性(通常のシリカ)–疎水性(プロピル基を有するシリカ)を合成した。その後,親水性部分をアンモニア水を用いて分解し,メルカプトプロピル基を有する鈴を内部にもつ鈴型メソポーラスシリカを合成した(Fig. 10)。その後,メルカプトプロピル基を酸化し,スルホン酸へ変換した。得られた粒子の断面を元素マッピングした結果,内部の粒子のみに硫黄が存在し,元素分析と酸量測定からほぼすべての硫黄はスルホン酸になっていることがわかった。

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Fig. 10. Scheme for the synthesis of rattle-type mesoporous silica spheres with sulfonic acid on the mesoporous walls of the cores5).

得られた粒子をエステル交換反応のミクロ反応容器として用いた。シクロヘキサン溶媒中に溶解している酢酸と1-プロパノールのエステル化を行うと,反応はほとんど進行しなかった(Fig. 11)。スルホン酸を有する鈴型のメソポーラスシリカを加えると反応が進行した。この鈴型のシリカの空洞部に水を内包させて,反応システムに加えた。このようにスルホン酸を有するメソポーラスシリカが水中に存在するミクロ反応容器として鈴型シリカを使用すると,反応速度が大幅に増加した。一相系の反応でも,鈴型の空洞部に溶媒を内包させて二相系の反応にすることにより,反応速度を向上させることができることを見いだした5)。この理由として,親水性の反応物である酢酸および1-プロパノールが溶解しやすい水相に溶け込み,これら反応物の濃度が高くなったこと,および生成したエステルは水相より油相に溶け出すために逆反応が進行しにくいことが考えられる。

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Fig. 11. Propyl acetate yield over time during the esterification of acetic acid with 1-propanol using the rattle-type spheres containing sulfonic acid moieties.

(a) The voids in the spheres were filled with water, (b) the spheres did not contain water, and (c) water was added but the spheres were not used5).

5. まとめ

親水性,疎水性という性質の異なるコア–シェル構造体を用いることによって,コアの選択的な分解を行い,中空メソポーラスシリカを合成する方法を開発した。この選択的な分解方法は,親疎水性という性質を変えるだけで選択的に局所分解を行うことができることを示している。この方法により,中空構造以外にも鈴型構造を含めて多孔体の様々な構造や形状の制御ができると期待できる。

また,中空メソポーラスシリカの内部の大きな空洞を生かした利用法として,薬物徐放用容器とミクロ反応容器を紹介した。このように多孔体の構造や形状を制御することで,多孔体の利用法のさらなる発展ができると考えている。

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