日本ゼオライト学会 刊行物 Publication of Japan Zeolite Association

ISSN: 0918–7774
一般社団法人日本ゼオライト学会 Japan Zeolite Association
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5 アカデミーセンター Japan Zeolite Association Academy Center, 358-5 Yamabuki-cho, Shinju-ku, Tokyo 162-0801, Japan
Zeolite 32(1): 1 (2015)
doi:10.20731/zeoraito.32.1.1

巻頭言巻頭言

完成と成熟

北海道大学大学院工学研究院 有機プロセス工学部門化学工学分野

発行日:2015年3月10日Published: March 10, 2015
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前会長である東京工業大学の馬場先生の後任として平成26年11月より2年間の任期でゼオライト学会の会長を努めます北海道大学の増田です。会長として本来求められる結果に少しでも近づけるよう努力したく考えておりますので宜しくお願いいたします。

前会長の馬場先生が巻頭言で述べられました様に,昭和61年に日本で初めて開催される国際ゼオライト会議の実施母体としてゼオライト研究会が昭和59年1月11日に発足して平成25年に30周年を迎えました。この間,SARSのため中止した2003年を除き,日本独自の国際会議として名称をCMPC(Chemistry of Microporous Crystals)からZMPC(Zeolite and Microporous Crystals)に変更しながらも3年ごとに開催されてきました。今ではこの会議が国際的に認知されているのは一重に会員の皆様のご尽力の賜ものであります。このZMPCは平成27年6月28日~7月2日にZMPC2015として札幌にて開催されます。研究発表,情報収集,人的ネットワーク形成は勿論のこと,避暑も兼ねて多くの会員の皆様が参加されますことを楽しみにしております。また,ゼオライト学会は発足時から今日に至るまで,ナノ・メソ多孔体に関連する研究者のCommunityとしてZMPC主催のほか,年4回のゼオライト誌発行,ゼオライト研究発表会,更にはゼオライト夏の学校とゼオライトフォーラムを開催することで,会員相互の情報交換の機会を提供してまいりました。その間,財政問題で窮地に立たされたこともありましたが,健全な学会運営が行える状態になり,本年度より一般社団法人としての認可を受ける準備に取り掛かれるようになりましたことは,一重に会員皆様のご努力によるものと感謝いたします。

既に会員の方はご存知のとおり,平成25年6月に内閣府の総合科学技術・イノベーション会議において3本の矢が発表されました。その中の二つの矢として,革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)と戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)が挙げられています。前者は「実現すれば,社会に変革をもたらす非連続イノベーションを生み出す新たな仕組み」を,後者は「基礎研究から実用化・事業化までを見据えて一気通貫の研究」を対象としています。ImPACTとSIPの両面で研究を進める上で,ゼオライトを始めとするナノ・メソ多孔体が担う役割は少なくありません。個別の多孔体材料の研究の深化はこの30年で大きく進展しましたが,ImPACTやSIPで活用するには“完成”されつつある個別の多孔体を要素技術として組み入れた新たな材料開発やシステム改良,つまりは社会実装を目指したシステムとしての“成熟”に関連する研究が必要であります。そのためには,会員皆様はもとより他学会も含めた一層の産官学連携が求められると思われます。この様な“個の完成”と“システムの成熟”の例として,日本発信の革新的科学技術である新幹線が挙げられます。昭和39年10月に東京-新大阪間で東海道新幹線が営業をはじめてから平成26年で50周年を迎え,現在も北海道への延伸工事が進められています。この間,軌道,信号システム,車両技術,電源方式,列車防護装置などの改良がなされたことで営業運転時の“完成”された状態から“成熟”した社会実装のシステムに進化したと考えることができます。

この様にゼオライト学会を取り巻く環境が変化する中で,ナノ・メソ多孔体関連の研究が成熟を目指して進展するためには,本学会の研究者Communityの活発な意見交換と今まで以上の産官学の密接な連携が必須であります。会員の皆様からの忌憚のない御意見をいただきながら健全な学会運営のため微力ではありますが努力する所存でございますので,宜しくお願いいたします。

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