日本ゼオライト学会 刊行物 Publication of Japan Zeolite Association

ISSN: 0918–7774
一般社団法人日本ゼオライト学会 Japan Zeolite Association
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Zeolite 31(4): 147-148 (2014)
doi:10.20731/zeoraito.31.4.147

レポートレポート

第22回ゼオライト夏の学校参加報告

大阪大学大学院工学研究科 マテリアル生産科学専攻 助教

発行日:2014年12月10日Published: December 10, 2014
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2014年9月1日から3日にかけて第22回ゼオライト夏の学校が神奈川県足柄下郡箱根町にある成蹊学園箱根寮にて開催されました。成蹊学園箱根寮は芦ノ湖の湖畔に位置し,寮からは富士山の遠景や芦ノ湖を行き交う遊覧船も眺めることができる絶好のロケーションでした。そのような素晴らしい環境の中,今回の夏の学校には5名の講師の先生方を含めて50名(うち学生36名)が参加し,ゼオライトの基礎から応用までの幅広い内容を学びました。関東の大学からの参加者が多い中,広島大や鳥取大から参加する学生もおられ,全国規模のネットワークを形成するよい機会となりました。

Zeolite 31(4): 147-148 (2014)

初日は豊橋技術科学大学の松本明彦先生が「気体分子吸着を用いた多孔体の細孔評価」と題して,気体吸脱着測定の原理とその解析方法について詳しくご説明してくださいました。吸着分子や多孔体の種類に応じて様々な解析が必要であることを初めて知った方も多かったはずです。筆者も学生の頃に松本先生から同様の講義を賜わったことがあり,そこで学んだ多孔質体の解析方法が教員になった今でも大変役に立っております。初日の講義終了後には,28件のポスター発表とそれに先立ったショートプレゼンテーションが行われました。夕刻に行われたポスター発表では,和気藹々とした雰囲気の中,学生どうしあるいは先生方と熱心にディスカッションする学生の姿が見られ,新たな知識を得るだけでなく自己の研究について再考する機会にもなったと思います。参加者の投票により,ポスター賞(高石哲男記念賞)には東京大学小倉研究室の小畠康宏さん,大阪大学山下研究室の中塚和希さんの2名が選ばれました。

2日目最初の講義は東京工業大学の横井俊之先生から「固体NMRによるゼオライトの構造解析」と題し,固体NMRの基礎と応用について具体的な解析データを例にご解説いただきました。固体NMRは自分で実際に操作できることが稀な装置ですが,うまく利用すればゼオライト骨格構造のナノレベルの情報が得られ,合成メカニズム解明やヘテロ原子の位置選択的導入などの研究には大きな力を発揮することが分かりました。続いて東京大学の小倉賢先生からは「ゼオライト触媒の科学と応用」と題し,ゼオライト触媒の応用例をゼオライトの基本的性質と関連付けながらわかりやすくご説明いただきました。板書を用いて“触媒反応とは何か?”“ゼオライトの基本性質とは何か?”からじっくりと力説してくださり,初学者の方にとっては非常に役に立つ講義であったと思います。特に,ゼオライトはミクロ多孔体でありながら,その細孔空間を利用するよりも表面機能を利用した反応例が多いことに気づかされ,まだまだ触媒として秘められたポテンシャルがあるのではないかと感じました。2日目の昼には屋外でバーベキューが行われ,炉を囲みながら親睦を深めることができました。その後は夕食時まで自由時間となっており,各人思いのままに,芦ノ湖畔散策に出かけたり,大涌谷や駒ヶ岳まで足を運ばれました。夕食後の懇親会では参加者全員が自己紹介を行い,お酒を交わしながら垣根のない親睦が深められました。

最終日は工学院大学の奥村和先生から,「ゼオライトを担体とした自発的分散による金属ナノ粒子の調製と触媒作用」という題目でご講義いただきました。ゼオライトの細孔空間を利用したPdやAuナノ粒子合成とその精細な分析結果に参加者から多くの質問が寄せられ,触媒反応への応用研究への関心の高さが伺えました。最後の講演では,三菱化学科学技術研究センターの武脇隆彦先生から,「ゼオライトの環境,エネルギー分野への応用」と題し,企業で開発されたゼオライトのヒートポンプ用吸着材や触媒担体,分離膜への応用についてご講演賜りました。製品化されたゼオライトの貴重な性能データを拝見できたばかりでなく,R&Dにおける具体的な研究戦略も伺い知ることができ,技術を社会に還元するために必要なエッセンスを感じとることができました。

ゼオライト夏の学校は参加者全員が互いに顔を見渡せるちょうど良い人数で,3日間かけてじっくりと学び,話し,(たまに)飲むことのできる素晴らしい勉強会です。まだ参加されたことがない方は是非来年こそは一度参加されることをお勧めします。筆者も教員という立場で5年ぶりに再び参加させていただき,先生方や他大学の学生,企業の方々と交流することができ大変良い機会となりました。夏の学校で共に学んだ仲間がゼオライト研究発表会などで再会し,また熱い議論が交わされることを切に望みます。

最後になりましたが,ご講演くださいました5名の講師の方々,本夏の学校にご参加くださいました皆様に心より感謝申し上げます。また,世話人の成蹊大学の里川重夫先生,(独)産業技術総合研究所の遠藤明先生には,開催場所の手配から車での送迎に至るまで,会の運営全般を引き受けていただきました。お二人のお力添えのお陰で参加者全員が充実した時間を過ごすことができました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

Zeolite 31(4): 147-148 (2014)

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