日本ゼオライト学会 刊行物 Publication of Japan Zeolite Association

ISSN: 0918–7774
一般社団法人日本ゼオライト学会 Japan Zeolite Association
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5 アカデミーセンター Japan Zeolite Association Academy Center, 358-5 Yamabuki-cho, Shinju-ku, Tokyo 162-0801, Japan
Zeolite 31(3): 97 (2014)
doi:10.20731/zeoraito.31.3.97

レポートレポート

2014年ゼオライトフォーラム参加報告

九州工業大学

発行日:2014年9月10日Published: September 10, 2014
HTMLPDFEPUB3

平成26年6月20日(金)に福岡県北九州市の九州工業大学百周年中村記念館多目的ホールにて2014年ゼオライトフォーラムが開催されました。本フォーラムはゼオライト学会と九州工業大学先端エコフィッティング技術研究センターが主催・共催となり,九州地区では初めての開催となります。今年度は「ミクロ構造やミクロ空間の制御による光触媒開発の最前線」をテーマに,触媒化学分野でご活躍されている横野照尚先生(九州工業大学),酒井健先生(九州大学),伊田進太郎先生(九州大学),井出裕介先生(物質・材料研究機構)の計4名の先生方の講演が行われました。フォーラム当日は総勢50名近くの参加者が集まり,講演会中は参加者間で積極的な意見交換がなされるなど賑わいを見せていました。また,九州工業大学の学生達も多く参加しており,先生方の講演を熱心に拝聴していました。

Zeolite 31(3): 97 (2014)

最初の講演は,横野照尚先生の「環境浄化とCO2資源化を指向した高感度光触媒の開発」でした。横野先生はこれまでに,酸化チタンの露出結晶面を制御し,光酸化・還元サイトをナノオーダーで選択的に分離・活性化させることに成功しています。本フォーラムでは,この露出結晶面制御酸化チタンが,CO2還元光触媒として働くことを研究結果を交えて報告され,光触媒の材料合成からCO2還元システムまで幅広い内容で講演を行われました。筆者も現在CO2還元光触媒に関する研究を行っているために,横野先生の講演は特に興味深く拝聴しました。

酒井先生は,「金属錯体を光触媒とする人工光合成系の開発」について講演を行われました。人工光合成を実現するためには,水分解により酸素や水素を発生させる触媒の開発が必要不可欠になります。これまでに酒井先生は,ルテニウム単核錯体が優れた酸素発生触媒であることを見出し,さらには白金錯体を用いた単一分子光水素発生デバイスの開発に成功されています。本フォーラムでは,錯体触媒の開発動向から水分解反応機構まで様々な内容で講演が行われました。酒井先生は密度汎関数法を用いた理論計算にも取り組んでおられるなど,多彩な分野に精通しており,筆者は大いに刺激を受けました。

伊田先生は,「二次元ナノ結晶の作製と光機能」という題目で講演されました。伊田先生はこれまでに,高表面積で高い結晶性を有する無機ナノシートに関する研究を進められており,近年n型とp型特性を示す半導体ナノシート単層膜合成に成功されています。本フォーラムでは,pn接合ナノシートの光触媒活性やデバイス応用などについて講演を行われました。ナノシートを積み木細工のように集積したり,異種材料をナノレベルで複合化させる伊田先生の研究は視覚的にも大変印象深く,ナノシートを利用した豊富な材料設計が魅力に感じました。

最後に,井出先生が「チタニアを巧く利用した光触媒反応」という題目で,層状構造への表面修飾やインターカレーション,さらには層間内反応を利用したチタニア光触媒に関して講演されました。井出先生の講演はオリジナリティに溢れており,光触媒の新しい応用の可能性を感じました。筆者自身,光触媒のさらなる発展のためには,新規アイディアの導入や異分野融合が必要であると考えており,井出先生の講演には大いに共感を覚えました。

講演後の懇親会は,九州工業大学百周年中村記念館多目的ホールにて行われ,先生方や参加者間で親睦がより一層深まるなど盛況のうちに会を終えることができました。

This page was created on 2017-03-28T11:27:44.617+09:00
This page was last modified on


このサイトは(株)国際文献社によって運用されています。