FAUを出発原料としてつくる高シリカCHA膜の合成と酢酸水溶液からの脱水性能
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脱AlしたFAU型ゼオライトを出発原料として用いて,様々なゼオライトを合成する「ゼオライト転換法」により高シリカCHA膜(Si/Al=ca.20)をα-アルミナ中空糸支持体の外表面に製膜することに成功した。得られた高シリカCHA膜は,浸透気化分離による酢酸水溶液の脱水において,優れた分離性能(透過流束Q=8 kg/m2・h,分離係数α=2500, 75°C)を示すとともに,1700時間を超えても安定した性能を有していた。転換法高シリカCHAの90 wt%酢酸水溶液に対する安定性を評価したところ,酢酸水溶液処理では140°CにおいてもXRDにより評価した相対結晶化度に変化はなく,さらに27Al-MAS-NMRスペクトルにおいても脱Alはほとんど観察されなかった。同様に,転換法高シリカCHAは,塩酸や硫酸などの様々な無機酸水溶液での浸漬処理においても,高い耐酸性を示した。一方,N,N,N-トリメチルアダマンタアンモニウムカチオン(TMAda+)を構造規定剤として用い,通常の非晶質シリカ源およびアルミナ源から水熱合成するにより得られるCHA型ゼオライトのSSZ-13は,90 wt%酢酸水溶液に対して優れた耐酸性を示したが,硫酸水溶液処理の場合には,相対結晶化度は23%まで低下するとともに,処理後のSi/Al比も17から68に増大した。この耐酸性の違いは,FT-IR測定から格子欠陥量の差に起因することが明らかとなった。すなわち, SSZ-13に比べて,転換法高シリカCHAの格子欠陥量は少なかった。また,BIB(Broad Ion Beam)-SEM観察からも,SSZ-13の破断面には欠陥に起因するメソ孔が観察されたのに対して,転換法高シリカCHAの破断面にはそうしたメソ孔がほとんど存在していないことが確認された。以上の結果より,「ゼオライト転換法」により合成した高シリカCHAは,格子欠陥が少なく優れた耐酸性を有していることが明らかとなった。
キーワード:ゼオライト膜;ゼオライト転換法;浸透気化;耐酸性;脱水膜
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