収差補正透過型電子顕微鏡によるゼオライト観察High-resolution Imaging of Zeolitic Frameworks with Aberration Corrected Transmission Microscope
一般財団法人ファインセラミックスセンター ナノ構造研究所Japan Fine Ceramics Center ◇ 〒456-8587 名古屋市熱田区六野二丁目4番1号
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磁場レンズの球面収差補正技術が確立したことにより電子顕微鏡の空間分解能は近年飛躍的に向上した。しかし電子線照射損傷による制約から,ゼオライトにおいては電子顕微鏡の性能向上に観察結果がリンクしていないのが現状である。その反面,多くの結晶性材料と比較して,ゼオライトの構造は複雑で単純な原子カラム投影とはならないことから,原子スケールでの直接観察には非常に高い空間分解能が要求される。そこで本稿ではわれわれの最近の研究結果をもとに,ゼオライト構造観察における収差補正電子顕微鏡法の有効性について解説する。球面収差補正技術では,これまでには不可能であった負の球面収差も利用可能であり,その場合は骨格構造が非常にシャープな明るい像として観察される。シャープな骨格像によって原子スケールに近い分解能での観察がゼオライトにおいても可能となる。
We demonstrated high-resolution imaging of zeolitic frameworks with spherical aberration corrected transmission electron microscopy (AC-HRTEM). Some types of zeolitic framework were observed by AC-HRTEM under the optimal optical conditions. Compared with the conventional imaging mode based on a positive spherical aberration and under-defocus, the negative spherical aberration (NCS) imaging mode brought bright sharper framework image. The amplitude contrast localized at atomic column positions contribute to enhancement of image contrast in NCS image synergistically with bright phase contrast. Since the projected atomic structure of zeolites are very complex, distinct image of zeolitic framework can help to distinguish each atomic column position.
キーワード:ゼオライト;収差補正電子顕微鏡;負球面収差イメージング;電子線損傷
Key words: zeolites; aberration-corrected TEM; negative CS imaging; electron irradiation damage
© 2013 ゼオライト学会© 2013 Japan Association of Zeolite
原子スケールでの構造情報を直接取得することが可能な高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)法は,非常に強力な解析手法として今日の材料科学の分野で必要不可欠な技術となっている。しかしゼオライトは複雑な結晶構造を有している上に電子線照射損傷による制約を大きく受けるため1–3),完全な原子スケール観察というものは未だ報告がなされていない。一方で電子光学では近年になって磁場レンズの球面収差補正装置が実現し,電子顕微鏡の空間分解能を飛躍的に向上させている4–6)。収差補正のない従来の装置の空間分解能では,ほぼ細孔とゼオライト骨格を分離できるまでに留まっていたが,収差補正電子顕微鏡(AC-HRTEM)法の適用によってより微細な構造情報の抽出が可能になると期待される。本稿では今後更なる発展が予測されるAC-HRTEM法について,我々の最近の成果を交えつつゼオライトを観察対象とした場合の有効性と注意点について解説したいと思う。
電子顕微鏡は光速近くまで加速された非常に波長の短い電子線を光源として利用するため,原子スケール観察においても回折限界による制約を受けない。一方で十分に波長の短いX線なども可視光に代わる光源としてその利用が古くから試みられている7,8)が,それらを集光可能なレンズの形成が容易ではないため,顕微鏡法として利用は限定されてしまっているのが現状である。つまり電子顕微鏡法は原子スケールで結晶試料内の構造観察を行えるほぼ唯一の手法ともいえる。しかしその反面,電子顕微鏡観察では試料が電子線との強い相互作用によって大なり小なり損傷を受けているということに留意する必要がある。金属材料などの場合では電子線損傷が問題になることは稀であるが,多孔性共有結合結晶であるゼオライトでは電子線への耐性が非常に低いために観察時における電子線損傷が常に問題となる。例えば高倍率な観察ほど試料にはより高密度な電子線が照射されるため,観察可能な最大倍率は試料の耐性によって自ずと決定されてしまう。電子線損傷のメカニズムは非常に複雑であるために加速電圧9,10)や試料温度11,12)といった要因によって複雑に変化するが,電子線損傷を抑える上で最も肝要なことは試料に注入される電子線の総量をとにかく抑えることである。像取得にかかる部分の電子線量は高感度な記録媒体によりある程度減らす事も可能であり,場合によっては適正露光以下で撮影した像に適宜画像処理を加えるといったことも行う。しかし現実問題として視野探し・試料傾斜合わせ・フォーカス合わせなどといった段階での電子線照射は無視できないことから,観察の可否は装置の性能以上にオペレーターの手際にも大きく影響を受ける。
HRTEM法はMenterによる結晶格子像観察13)に端を発し,装置分解能の向上とともに多波合成による原子スケール観察法14,15)へと発展したものである。余談ではあるが,Menterが行った初期の格子像観察の研究は有機顔料結晶やゼオライトといった材料が対象であり,電子線損傷が問題となる材料観察から今日のHRTEM法が出発していることは興味深い点でもある。ここでHRTEM法の原理から説明するが,そのためには幾何光学でなく波動光学的なアプローチが必要であり,まず単純化のために試料を弱位相物体として取り扱う。弱位相物体近似とは電子線が試料を通過する際に電子波の振幅は変化せず原子カラムのポテンシャルによって位相のみが僅かに変化するというものであり,非常に試料が薄い場合でのみ成り立つ。このような僅かに受ける位相変化によって試料出射面では透過波とπ/2の位相差をもつ散乱波とが生じる。このようにして試料から出射する透過波と散乱波はレンズの集光作用によって像面で収束されるが,理想光学系(無収差)では結像される電子線の干渉パターン(像)は倍率を無視すれば出射電子波動関数がほぼそのまま再現され,振幅一定で位置によって位相が異なる干渉パターン(像)が形成される。しかしCCDカメラや写真フィルムといった電子検出器で検出されるのは強度(振幅の二乗)分布のみであることから,結局は何も観察されないということになる。これに対してレンズ収差を仮想的な位相板として利用する方法を考えたのがScherzer16)である。まずレンズによる位相変化量χは散乱角θの関数で表され,寄与が小さい高次の収差を無視すればデフォーカス量Δfと球面収差CSにより(1)式のように記述される。
ここでλは電子線波長を示しており,Δfはアンダーフォーカス側を負の値としている。また散乱角θは空間周波数uと波長λとの積であることから位相変化量を空間周波数uの関数として(1′)式の様に表すことができる。
これを被関数としたsin関数は位相コントラスト伝達関数(PCTF)と呼ばれ,位相コントラストのつき方を表す関数として便利である。
理想的な位相板の条件とは散乱波のみに+π/2(同位相側)もしくは−π/2(逆位相側)の位相を付加するものであり,Scherzerは任意の球面収差に対してできる限り広い周波数域でこのような位相変調をあたえるようなデフォーカス設定ΔfSchを式(3)の様に示した。
ただしここでは新たに負のCSへも適用を拡張している。図1には例として典型的な200 kV TEM (CS=+0.5 mm)におけるScherzer条件でのPCTFを示した。
この光学条件では空間周波数~5 nm−1まではほぼ理想的な位相板と働くが,それ以上では位相コントラストが大きく振動してしまっていることがわかる。そのため~5 nm−1以上の成分は結像に寄与しないように対物絞りでカットされ,空間分解能が0.2 nm (=1/(5 nm−1))に制限されるということになる。球面収差係数はレンズ設計によりある程度小さくすることは可能であったが,構造上の制約により200 kVの場合でサブミリメートル程度が実質上の限界となっていた。また軸対称磁場レンズの球面収差係数は必ず正となることが既に知られており,そのため光学顕微鏡のように組レンズによって球面収差を打ち消す方法も電子顕微鏡においては実現が困難であった。
近年,球面収差補正技術が確立したことにより,それまではほぼ頭打ちとなっていた電子顕微鏡の空間分解能が飛躍的に向上した。球面収差補正装置とは非軸対称の多極子レンズを組み合わせた磁場レンズであり,それにより形成される負の球面収差によって対物レンズの正の球面収差を打消すというものである。図2には収差補正の原理を幾何光学的に模式図として示した。
収差補正装置を用いることによって球面収差をゼロにすることも可能であるが,HRTEM法における位相コントラスト形成には収差による位相変調を利用することが避けられない。従来のHRTEM法では任意の値で固定された球面収差係数に応じてデフォーカス値を調整し最適条件を形成していたが,AC-HRTEM法ではデフォーカスとともに球面収差係数も可変可能なパラメータの一つとして最適化が必要となる。それに対してLentzenらは情報限界gmaxを基準とした球面収差の最適設定を提案した17)。情報限界とはHRTEM像形成において可干渉領域の最大空間周波数である。Lentzenはこのような情報限界までの周波数に対しての位相変調と最小錯乱円を両立させる球面収差の設定を求め,それを最適収差CS,optとした。以下この観察条件をLentzen's CSモードとよぶこととする
最小錯乱円とは幾何光学的取扱いでの散乱波の像面における非局在化の大きさを示しており,その半径Rは(5)式からもとめられる。
Lentzen's CSモードにおける最適デフォーカスは求めたCS,optに対するSherzerデフォーカスとなり,その条件下では散乱波の非局在化が最小で十分な位相コントラストを得ることができる。
一方で,球面収差を完全に補正(CS=0)した場合に位相変調はデフォーカスによる項のみとなり,最適デフォーカス値は式(6)で示される。本稿ではこの観察条件をZero CSモードとよぶこととする。
2種類の観察モードではどちらも情報限界gmaxが空間分解能となるが,PCTFの形状は低周波数域で大きく異なる。表1には加速電圧200 kV,情報限界を10 nm−1としたときのそれぞれのモードでの設定値を示し,図3に部分干渉性による減衰項を含めたそれらのPCTFを示した。
球面収差係数 | デフォーカス | 錯乱円半径 | |
---|---|---|---|
Lentzen's CS | ±15 µm | ∓7.1 nm | 0.059 nm |
Zero CS | 0 µm | ∓4.0 nm | 0.10 nm |
(a) CS=+15 µm, Δf=−7 nm, (b) CS=−15 µm, Δf=+7 nm, (c) CS=0 µm, Δf=−4 nm, (d) CS=0 µm, Δf=+4 nm(実線:減衰を含めたPCTF,破線:包絡関数,点線:PCTF)。
それぞれのモードでの錯乱円半径は十分に小さく,高角散乱波のにじみが観察において問題とならないことがわかる。散乱波のにじみは界面や表面などといった非周期部分で強く影響を受けるので,界面などの精密な構造解析ではどちらのモードとも有効に働くことが推測される。しかし一方で小さなデフォーカス値を利用するZero CSモードでは低周波数領域においてその絶対値が低下していることがPCTFからは見てとることができる。低周波数成分の像コントラストは比較的大きな周期構造をもつゼオライトでは重要であり,空間分解能を低下させることなくゼオライトの十分な像コントラストを得るにはZero CSモードではなく,Lentzen's CSモードが有効であると考えられる。
収差補正技術を用いた場合,これまでは不可能であった負の球面収差というものも実現可能である。既に述べているように負の球面収差を用いた場合,正のデフォーカスつまりオーバーフォーカスが最適値となりPCTFの符合は反転する。PCTFが正の値となる場合,像のコントラストは反転し,原子カラム位置が明るいコントラストとして結像される。このようなイメージングモードは負球面収差(NCS)イメージング18–20)と呼び,逆に正球面収差とアンダーフォーカスによるイメージングは正球面収差(PCS)イメージングと呼ぶ。図3で示したようにこれらPCTFを比較すると符号が反転しているのみであることから,単純にコントラストが反転した像が得られるだけのようにも思われる。しかし実際の観察では弱位相物体近似は完全には成り立たないため,位相コントラストに加えて振幅コントラストの寄与も考慮する必要がある。透過する電子線の振幅は電子チャネリング効果によって原子カラム位置で増加する。その例としてある厚さのMFI構造を透過した200 keV電子線の位相と振幅のシミュレーションを図5に示した。図4には計算に用いた単斜晶系(a=2.0107 nm, b=1.9879 nm, c=1.3369 nm, β=90.67°)の構造モデル21)を示している。
ここで示す位相とは真空中を透過した場合の電子波がもつ位相からの位相シフト量であり,透過する試料の厚さが増加するに従って原子カラム位置での位相シフト量が増加していることが確認できる。この位相シフトに応じて散乱波の振幅は増加し,それがレンズ作用により像面での位相コントラストへと変換されるため原子カラム位置が“明るい”もしくは“暗い”コントラストとして観察されることとなる。一方で振幅コントラストはどちらのモードにおいても原子カラム位置が明るく結像されるように寄与するため,NCSイメージでは相乗的にコントラストがエンハンスされる。また位相変化パターンと比較してチャネリングよる振幅の増加は原子カラム位置に局在化しているため,振幅コントラストが効果的に結像に寄与するNCSイメージでは像コントラストが非常にシャープなものとなる22)。そこで我々はLentzen's CSモードを球面収差の最適設定とし,ゼオライトを観察対象とした場合のPCSおよびNCSイメージングの比較を行った。
観察試料としては市販MFI型ゼオライト(東ソー製:HSZ-840HOA)を用いた。試料はメノウ乳鉢により軽く粉砕を行ない,TEM用マイクログリッド上に分散・保持した。観察は球面収差補正子(CEOS社製:CETCOR)を装備した加速電圧200 kVの透過型電子顕微鏡(日本電子製:JEM-2200FS)により行なった。球面収差係数は+15 µmまたは−15 µmに設定した。像記録はSlow-scan CCDカメラ(Gatan社製:UltraScan 1000)を用いて行ない,Minimum Dose System23)(MDS)の併用により試料に対する総電子線照射量を最小限に抑えた。得られた実験像はシミュレーション像と比較することにより定量的解析を行った。像シミュレーションにはマルチスライス法24)を用い,入力する結晶構造パラメータは既知であるX線構造解析のデータを用いた。
図6にはMFIゼオライトのPCSおよびNCSイメージを示した。
ゼオライトの観察では電子線量が大きく制限されるうえ収差補正によって位相コントラストは大きく低下するため,どちらのモードにおいても生画像(図6a, c)は非常にノイズの多いものとなっている。しかし,像の高速フーリエ変換(FFT)パターンに高次スポットが現れることから,それらの像は十分に微細な構造情報を含んでいることが確認される。このような画像の周期性は像に含まれるランダムノイズの除去に利用することが可能であり,図6b, cにそうしたノイズ除去を施した像を示した。処理後の画像ではどちらのモードでの像においても従来のHRTEM法では不鮮明であった5員環や6員環の形状までが確認されるようになっている。特に図6dに示すNCSイメージではゼオライト骨格像が非常にシャープに結像されており,骨格の微細構造までが直接観察されるようになっている。このようなシャープな骨格像からはペンタシル鎖の向きなども直接判別できるため,例えばMFIとMEL構造が混在した結晶粒などのドメイン構造が容易に解析できることとなる。
次に像シミュレーションとの比較により適切な観察条件について検討を行った。図7にはデフォーカスと試料厚さに応じたシミュレーション像を示した。
ここで最適デフォーカス値はNCSイメージモードで+7 nm, PCSイメージモードでは−7 nmである。NCSイメージモードと比較するとPCSイメージモードでは観察条件に応じて敏感に像が変化することが確認される。これはPCSイメージモードにおいては振幅コントラストと位相コントラストの寄与が逆転しているため,像パターンが観察条件に応じて複雑に変化してしまうことによるものである。つまり試料の厚さが増すにつれて原子カラム位置での振幅が大きくなるため,PCSイメージではある試料厚さ以上では振幅コントラストが位相コントラストに勝り,原子位置の中心で明るいコントラストが生じることとなる。そのためPCSイメージモードにおいて原子カラム位置が暗いコントラストとして理想的に結像されるのは,非常に薄い(<~4 nm)試料を最適デフォーカスで観察した場合に限られる。シミュレーションとの比較から図6で示したPCSイメージは厚さ4 nmの試料を最適デフォーカスで観察したものであるとわかる。一方,NCSイメージシミュレーションの場合では観察条件による像変化は非常に緩やかとなっており,フォーカス合わせにおいて要求される厳密さが幾分緩和されることを示している。非常にシグナル強度の低い像によってフォーカス合わせを行うゼオライトでは厳密なフォーカス合わせが困難であることから,NCSイメージングモードではより構造像を得やすいという利点を有することが考えられる。ただし最適デフォーカス条件のNCSイメージングモードにおいても試料厚さが増すにつれ骨格内の微細なコントラストは原子カラム位置から外れてしまうため,NCSイメージモードにおいても試料厚さは可能な限り薄い方が良い。実際,図6に示すNCSイメージはシミュレーション像との比較により,試料厚さが4 nm程度の非常に薄いサンプルであることが確認される。
観察および像シミュレーションによる解析の結果,ゼオライト観察の高分解能化にAC-HRTEM法が非常に有効であることが確認された。またゼオライト骨格の微細構造解析にはPCSイメージモードに比べてシャープな原子カラム像を与えるNCSイメージモードはゼオライト骨格内のポテンシャルの可視化に有利であることが確認された。NCSイメージング法はゼオライト骨格のみならずカウンターカチオンの直接観察にも有効であり,我々は最近A型ゼオライトに吸着したセシウムイオンの直接観察に成功し報告25)している。しかし一方で収差補正によりゼオライト観察像における位相コントラストは大きく低下しているため,微細構造を明瞭に可視化するためには画像処理が必須となってしまっている。そのため画像処理を必要としないより確かな像を取得することが今後の課題であろうと考えられ,そのような問題を解決するアプローチとしては像記録の高感度化と高コントラスト結像法の開発が有効となる。高感度な記録媒体の開発という点では,電子を直接カウントすることが可能なCMOS検出器28)なども近年市販化されており,今後のカメラの性能向上によるゼオライト観察の高度化が大きく期待されている。しかし一方で,高コントラスト化という点ではレンズ収差による位相コントラスト形成では限界があり,理想的な位相板の開発が最も有効であると考えられる26–28)。現状では電子位相板はチャージアップ,コンタミネーションや工作精度の問題から高分解能観察が可能なほどの精度には達していないが,それらが解決されるようになれば高分解能・高コントラストでのゼオライト観察手法として大きな可能性を秘めているものと期待される。
また本稿ではふれなかったが,収差補正技術が確立して以降,HRTEM法以上に走査型電子顕微鏡(STEM)法が電子顕微鏡技術として大きく進展を果たしてきている。その理由としては非干渉性結像モードでの像解釈の容易さや分光装置などとの相性の良さが挙げられ,そういった特徴からゼオライトにおいても有効な観察手法29,30)の一つとなり得る。しかしSTEM観察では収束された強烈な電子プローブが試料上を走査されるため,耐性が低いサンプルでは不利もしくは全く観察ができないといった場合も出てくる。つまりSTEM観察では電子線損傷によって対象試料が大きく限定されてしまう点を考慮すると,ゼオライト構造解析においてはHRTEM法の更なる発展が今後も重要となってくる。ただし両手法には電子線損傷以外でも多くの長所・短所があるため,試料の耐性によっては観察手法を目的に対してうまく合わせていくことが必要とされる。
本研究の一部は,独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「規則性ナノ多孔体精密分離膜部材基盤技術の開発」の委託業務の結果得られたものである。また本研究の一部は文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム事業(京都大学微細構造解析プラットフォーム)の支援を受けて実施されました。また京都大学化学研究所倉田博基教授にはAC-HRTEM法について有益なご議論をいただきました。
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