「平成25年度 ゼオライトフォーラム」報告
東京大学大学院化学システム工学専攻
© 2013 ゼオライト学会© 2013 Japan Association of Zeolite
平成25年度のゼオライトフォーラムが,6月26日,早稲田大学18号館国際会議場にて開催されました。今年度の副題は「規則性多孔体利用技術の最前線」であり,多孔質材料の触媒特性・吸着特性を生かした応用について,4名の講師の方のご講演を拝聴することができました。当日はあいにくの雨にもかかわらず,約100名もの方が参加されました。
初めの2件の講演は吸着特性に着目したものです。最初の講演では,「CHA型ゼオライトの最近の応用展開」という題目で,三菱化学科学技術研究センターの武脇隆彦先生よりお話をいただきました。近年,小細孔ゼオライトに注目が集まっていますが,CHA型ゼオライトは特にその中でも応用の期待されているものです。CHA型ゼオライトの持つ吸着特性を生かした吸着式ヒートポンプへの応用,望ましい特性を得るための設計・開発過程を説明していただきました。それが商品化されたこと,更に排ガス触媒や分離膜として応用される可能性を秘めていることをご紹介いただきました。
続いて,「メソポーラスシリカの水蒸気吸着特性と省エネ空調技術への展開」という題目で,産業技術総合研究所の遠藤明先生よりお話をいただきました。メソポーラスシリカを除湿システムへ応用するに当たって吸着特性の温度依存性を考慮され,特に低温でも高い吸着・再生能を持つ多孔質材料の研究を説明していただきました。細孔内に吸着した水は凝固点が大きく低下するため,凍らないというお話は驚きとともに興味深いものでした。この効果により,気温が氷点下に達する寒冷地域でも使用できる大変有望な材料であることをお示しいただきました。
休憩を挟んでの後半2件は触媒特性に関するものでした。3番目の講演は,東京大学の小倉賢先生よりお話をいただき,題目は「多孔質SiONがもたらす固体塩基触媒特性」でした。不均一触媒に関して言えば,酸触媒と比べて塩基触媒の研究例,実用化例は少ないものの,炭素-炭素結合形成反応を引き起こす重要な触媒であることをご説明いただきました。「塩基触媒がニッチだからこそ研究するんです」というお話が印象的でした。メソポーラスシリカの骨格に導入した窒素をメチル化することによって,塩基性度を調整するという画期的な方法をご紹介いただき,化石資源の有効利用に向けて大きく前進していることをお話ししてくださいました。
最後の講演では,「USYとZSM-5の触媒活性はなぜ高いのか」という題目で,鳥取大学の片田直伸先生よりお話をいただきました。これらのゼオライトが酸触媒として高いアルカン分解活性を持つ理由を,Brønsted酸点の数や強度,濃縮効果や立体障害といった分子の形状など多くの視点から説明していただきました。複数ある可能性のうち,骨格内外のAl種が触媒活性に寄与しているのではないかということをお示しいただきました。最も使われているゼオライトであるUSYとZSM-5の活性の起因するところが,実は例外中の例外であったというお話がとても興味深かったです。
講演会終了後は大隈ガーデンハウスにて懇親会が開催され,講演から引き続き,有意義な議論が交わされました。
This page was created on 2017-04-06T09:52:22.881+09:00
This page was last modified on
このサイトは(株)国際文献社によって運用されています。