日本ゼオライト学会 刊行物 Publication of Japan Zeolite Association

ISSN: 0918–7774
一般社団法人日本ゼオライト学会 Japan Zeolite Association
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5 アカデミーセンター Japan Zeolite Association Academy Center, 358-5 Yamabuki-cho, Shinju-ku, Tokyo 162-0801, Japan
Zeolite 29(4): 158-164 (2012)
doi:10.20731/zeoraito.29.4.158

レポートレポート

ZMPC2012実施報告

発行日:2012年12月7日Published: December 7, 2012
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1. はじめに

ZMPC2012(International Symposium on Zeolites and MicroPorous Crystals 2012)は,2012年7月28日(土)から8月1日(水)まで広島市のアステールプラザにおいて開催された。佐野委員長(広大)のもと,角田(旭化成ケミカル,副委員長),犬丸(広大,総務),近江(岐大,財務),片田(鳥取大,プログラム),前田(東農工大,プログラム)をコアメンバーとして,2009年春より準備を開始した。最終的には58名の国内組織委員会,56名のInternationalAdvisory Board(IAB)を組織して,学会の準備を進めた。また,井上科学学術振興財団,泉科学技術振興財団,日本化学会中国四国支部より援助を,16学協会より協賛を頂いた。詳細はホームページ(http://www.zmpc.org/)を参照されたい。

経済状況が悪化しているなか,参加者が集まるかなど心配したが,何とか無事,学会を終了し,11月の理事会・総会で報告することで,我々の任務は完了する予定である。ここでは,反省や今後の課題を含めて,ZMPC2012の概要を報告する。なお諸氏による学会参加報告も本号に掲載されているので,あわせてそちらも参照されたい。

ZMPCはゼオライト学会が主催する国際会議である。記念すべき第1回はCMPC(Chemistry ofMicroPorous Crystals)1990として東京で開催された。これまでZMPC1993(名古屋),ZMPC1997(東京),ZMPC2000(仙台),ZMPC2006(米子),ZMPC2009(早稲田)とSARSの影響で中止をした2003年をのぞき,ほぼ3年ごとに開催されてきており,今回はその第7回となった。最近では,国際ゼオライト学会が主催するIZC,欧州ゼオライト連合が主催するFEZA,我々が主催するZMPCがそれぞれ3年ごとに,重ならない年に開催されている。諸先輩のご尽力により,ZMPCは世界の関係者から主要なゼオライト国際会議として高い評価をいただいている。

2. 発表・参加募集

準備を進めるなか,東日本大震災,原発の問題,ヨーロッパの経済不安,円高ユーロ安などさまざまな要因が重なり合い,発表者・参加者の減少を憂慮せざるを得なくなった。そのため,参加を促すように宣伝活動に力を入れ,また参加していただくには参加費をどれぐらいにしたらよいかを最後までコアメンバーで議論した。基調および招待講演者を含む参加者総数も過去最大の464名(うち国内273,海外から29カ国191;招待23,会員157,一般127,学生146,同伴11)となった。ちなみに前回のZMPC2009の参加者は387名(国内236,海外151)であった。参加国別の構成を表1に示す。組織委員およびIABメンバーより推薦をいただき,これをもとに,最終的にPlenary Lecture(PL)6件(うち日本2件),Keynote Lecture(KN)17件(うち日本4件)を決定した。表2に一覧を示す。

表1 国別参加者数
オーストラリア1ベルギー4ブルガリア3カナダ2
中国17チェコ16デンマーク1エジプト2
フランス8ドイツ9台湾27インド3
イタリア5カザフスタン1韓国24メキシコ2
ナイジェリア1ノルウェー2ポーランド5ロシア4
サウジアラビア4イギリス9スペイン3スウェーデン8
スイス1タイ3オランダ6米国20
日本273
合計464人(海外191人)
表2 招待講演のリスト
講師所属,国題目
PL-1Avelino CormaUniversidad Politécnica de Valencia, SpainNew organic structure directing agent for the synthesis of zeolites with different pore dimensions: catalytic implications
PL-2Takashi TatsumiTokyo Institute of Technology, JapanDesign of Zeolite Catalysts for Selective Production of Light Olefins—Catalysts for Naphtha Cracking and MTO Reaction
PL-3Ryong RyooKorea Advanced Institute of Science and Technology, South KoreaNew Opportunities in ZMPC Field with Hierarchical Zeolite Structure—Directing Surfactants
PL-4Jiří ČejkaJ. Heyrovsky Institute of Physical Chemistry, Czech RepublicZEOLITE UTL AND WAY BEYOND
PL-5Valentin ValtchevENSICAEN, Universite de Caen, CNRS, FranceZeolite properties: engineering beyond the natural limits
PL-6Kazuyuki KurodaWaseda University, JapanPreparation and Applications of Mesoporous Materials
KN-1Hyoung Jin ChoiInha University, South KoreaSmart layered material composites and their electrorheology
KN-2Freek KapteijnDelft University of Technology, NetherlandsNH2-MIL-53 a versatile MOF—from gas separations to optical applications
KN-3Stefan KaskelDresden University of Technology, GermanyMetal-Organic Frameworks and Porous Polymers
KN-4Masahiko MatsukataWaseda University, JapanDehydration of petrochemical products with zeolite membranes: A key technology toward large-scale energy saving
KN-5Russell E. MorrisThe University of St Andrews, UKSynthesis of zeolites and MOFs: Form ionothermal to protecting group approaches
KN-6Alexander NeimarkRutgers University, USABreathing MOFs—Thermodynamics and Dynamics of Adsorption Induced Deformation in MIL-53
KN-7Tatsuya OkuboThe University of Tokyo, JapanSimple Synthesis of Zeolites
KN-8Carlo PeregoIstituto Eni Donegani, Eni SpA, ItalyConversion of bio-derived feedstocks through zeolite catalysis
KN-9Wieslaw J. RothJ. Heyrovsky Institute of Physical Chemistry, Czech RepublicPractical and fundamental expansion of zeolites into new dimensions based on 2D layered structures
KN-10George ShimizuUniversity of Calgary, CanadaMetal organic frameworks for clean energy applications
KN-11Ben SlaterUniversity College London, UKUnderstanding properties from an atomsʼ eye view of ZIF and zeolite thin films
KN-12Takahiko TakewakiMitsubishi Chemical Co., JapanNovel water vapor adsorbent AQSOA for environmental benign adsorption heat pump
KN-13Hideaki TsunekiNippon Shokubai Co., Ltd., JapanDevelopment of diethanolamine selective production process using shapeselective MFI zeolite catalyst
KN-14Jeroen A. van BokhovenETH Zurich, SwitzerlandWhy does the performance of zeolites improve after mesopore formation?
KN-15Peng WuEast China Normal University, ChinaLayered zeolites: a platform for designing efficient catalysts
KN-16Yushan YanUniversity of Delaware, USAZeolite thin films for energy and water applications
KN-17Gregory J. LewisUOP, USASynthesis of Microporous Materials from Solution

印刷物としてはFirst Circular/Call for Papersのみを3,000 部作成し,これを国内外の学会等で配布することとし,並行してホームページと電子メールを使って発表・参加を募った。その結果,最終的な発表数は,基調講演(6件),招待講演(17件),口頭発表(95件)およびポスター&RRR発表(229件),計347件となり,前回の教訓を活かし当日キャンセルは大幅に改善された。分野別発表件数を図1に示す。発表分野の構成は,前回とほぼ同じであった。

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図1 発表の分野別構成

3. 学会準備

学会の運営に際しては,前回と同様に日本旅行と契約し,発表・参加申込みの受付も同社のシステムを利用した。しかし,本システムでAbstractの審査などすべての作業を同システムで行おうとしたが,プログラム委員会の思惑通りには働かず,思ったより作業に手間取った。会場は,当初広島市国際会議場を想定していたが予算的に折り合わず,ホテルなどさまざまな会場を検討した結果,アステールプラザで実施することとなった。参加者の導線を検討し,同一フロアーにA会場,B会場,C会場が設営できるようにした。組織委員会の手違いでA会場を7月28日の夕刻からしか借りていなく,急遽B会場でレジストレーションを行ったので参加者にご不便をかけたが,それを現地スタッフや学生アルバイトの奮闘により大きな混乱なく進行することができた。前回と同様に,学会参加者にスタッフだとわかりやすくするために,学会のTシャツを作製し,学生アルバイトにはこれを着用してもらうこととした。

日程は,毎年8月6日に開催される原爆記念式典の準備も考慮し,Welcome partyを7月28日に開催し,7月29日からを8月1日の計5日間とした。その日程のなかで,従来と同じ,口頭発表時間は質疑を含めて20分,KNは30分,PLは55分とした。プログラム委員会は熟慮のうえ,なるべく口頭発表の数が多くなるように,また他の会場と休憩時間がなるべく合うように参加者が会場の移動がスムーズにできるようにプログラムを組んだ。前回よりも1日短いこともあり,ポスター発表を2回で十分議論できるように時間を取り,参加者がスムーズにポスター発表を見て,議論できるように配置も工夫した(図2,3)。

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図2 開会式の時の写真

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図3 Avelino Corma教授のPlenaryレクチャーおよびポスター発表の様子

前回と同様に,Book of Abstractsのみを印刷・製本し,参加登録者に配布し,Extended AbstractはUSBメモリーに保存して提供した。またカンファレンスバッグは,2009年で評判がよかった同じデザインで色違いのものを選んだ。

Social Program

学会2日目のポスター発表後,エクスカーションを実施した。クルージング,厳島神社ということで,天候を心配したが,当日晴天で安堵した。また,バス8台を使って,会場から広島港までの送迎がスムーズに行えるか,宮島での移動にどれぐらいかかるか,就航時間が遅いと厳島神社を見学することが可能か,通訳をどのように配置するか,些細なことまで日本旅行と現場スタッフが何度も打合せをして計画を立てていただいたおかげで,当日は問題が発生せずスムーズに進行した。また,プリンスホテルでの会食は,参加者からバンケットみたいだと言われるほど,満足していただけたと思う。緻密な計画を立てて頂いた,日本旅行および現地スタッフ,当日の学生アルバイトには紙面を借りて感謝する(図4)。

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図4 エクスカーションの様子

学会3日目の夜にANAクラウンホテルにおいてバンケットを実施した。犬丸(広島大)の司会のもと,最初にJiří Čejka先生に挨拶いただき,次に辰巳先生(東京工業大学)の乾杯で開宴となった。アトラクションとして,ヤマタノオロチの神話を基にした神楽の上演があるなど,和やかな雰囲気の楽しい宴となった。バンケットと同じ時間帯にバンケットを申し込んでいない学生参加者とアルバイト学生のための懇親交流会をお好み屋で開催した(図5,6)。

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図5 バンケットの様子

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図6 スチューデントパーティの様子

昼食はチケットを事前に配布し,学会2〜4日目にブッフェレストランフォーシーズンで提供した。提供初日はレストランも大量の方が一度に来られ,料理の配膳,人の配置などで参加者にご迷惑をおかけした。翌日からは改善され,スムーズに昼食を取れたのではないかと思う。なお,今回は本会の実施にあたり,会場の手配,大会2日目広島県観光大使の派遣,同伴プログラム(茶会)など大会のさまざまな場面でご助言およびお手伝いしていただいた広島県コンベンションビューローおよび下岡様には大変感謝する。

プレ・シンポジウム

プレは京都(オーガナイザー:大久保達也先生)で実施した。ゼオライト合成に関する一流の研究者の講演があり,70名の参加で活発な発表・議論が繰り広げられたと報告をいただいている。

財務について

予算を組む段階で見込まれたのは,収入の減少である。すなわち,金融危機の影響で参加者および,外部団体からの補助金が減少することが予想された。そのため,キャンセル対策(申込だけを申請し,参加費を払わない)を講じ,また企業からの協賛金を積極的に行った。特に協賛金の確保において,日揮の猪俣様に大変ご協力していただき,感謝したい。最終的な収入は約2,800万円となり,また印刷費,飲みもの,Tシャツなどネットを活用し支出削減を努めた結果,約385万円の黒字となった。ゼオライト学会国際交流基金から300万円を準備金としていただいていることを考慮すると,実質約85万円の黒字である。今回,金融危機の影響で参加者の減少を予想し,なるべく多くの方に参加してもらうため,前回に比べ登録費を多少値下げした。なお,この値下げに関しては,参加者の参加増につながるかその有効性に疑問は残ったが,実行委員会で慎重に議論した結果,値下げを行い,結果的に参加者増につながった。しかし,on siteで登録した参加者が36人おり,約230万円の収入増に結びついたこと,また経費削減に努めたことが黒字の要因であり,実際に収支が赤字になる可能性もあった。そのため,経済状況などを鑑みて,参加費の決定は慎重に行うことが好ましい。

なお,厳しい経済状況のなかで,井上科学振興財団助成金,泉科学技術振興財団,日本化学会中国四国支部,アジレント・テクノロジー(株),旭化成ケミカルズ(株),千代田化工建設(株),クラリアント触媒(株),日揮(株),三菱化学(株),三菱レイヨン(株),日新精器(株),新東北化学工業(株),住友化学(株)からは大変貴重な補助をいただいた。ここに深く感謝する。また,ブース出展していただいた,日本ベル(株),(株)ヒロ,スペクトリス(株)マルバーン事業部,(株)菱化システム,セイケムアジア,(株)島津製作所,日揮触媒化成(株),太陽化学(株),東ソー(株)にも感謝する(図7)。

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図7 スポンサーパネル

おわりに

以上,ZMPC2012の概要を述べた。学会会期中にはIABと組織委員に出席いただき,ランチョンミーティングを実施し,開催・運営についてさまざまなアドバイスをいただいたので,以下に記載する。次回開催における検討課題としていただければと思う。

・発表の質は十分高い,アレンジ,scientificプログラムは非常によかった。

・フロアーからの質問が少ない。座長の人選はよいが,座長に口火を切ってもらうとよい。

・ポスターのショートプレゼンテーション,若い研究者向けの賞も検討に値する。

・正式な行事が多すぎるとの感想もあった。

・過去の有力な参加者のコメント,感想を宣伝に使えないか,との示唆もいただいた。

最後になりましたが,助成をいただきました財団ならびにスポンサーとなっていただきました関係各社,IAB・組織委員の皆様,プレシンポジウムのオーガナイザーの皆様,そして実際の運営に際しご尽力いただいた現地スタッフの皆様(広大:都留稔了,吉岡朋久,金指正言,長澤寛規,片桐清文,定金正洋,井出裕介,小河脩平,佐野研究室,都留研究室,犬丸研究室の学生の各氏)に,この場を借りて感謝する。

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