日本ゼオライト学会 刊行物 Publication of Japan Zeolite Association

ISSN: 0918–7774
一般社団法人日本ゼオライト学会 Japan Zeolite Association
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Zeolite 29(3): 104-105 (2012)
doi:10.20731/zeoraito.29.3.104

レポートレポート

2012年度ゼオライトフォーラム

東京工業大学大学院理工学研究科応用化学専攻 和田・鈴木研究室博士課程3年

発行日:2012年9月7日Published: September 7, 2012
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6月15日に2012年度の「ゼオライトフォーラム」が東京工業大学の大岡山キャンパスで開催されました。今回のフォーラムのテーマは「クリーンな未来をつくる環境浄化技術」です。大学や研究所の先生をお招きして,4件の講演が行われました。私は今年度のフォーラムに参加させていただきました。短い時間でしたが,講演や討論を通じて,貴重な知見を得ることができました。

今回の講演には,最近の環境浄化技術にかかわるホットな話題が多く含まれていました。まず,竹下健二先生(東京工業大学)が放射性物質で汚染された水の回復技術について講演されました。今,東北地方で福島原発事故による水の汚染が起きています。被災地でゼオライトによる放射能汚染水の処理も検討されていましたが,その除染能力は不十分です。竹下先生は,凝集沈殿法および吸着法による放射性核種の除去方法を紹介しました。具体的に,フェロシアン化鉄でセシウムカチオンをイオン交換吸着させた後,凝集沈殿剤でセシウムが吸着したフェロシアン化鉄を回収します。この技術が実用化すれば,汚染海水や漏えい地下水の浄化手法として大変期待されています。

Zeolite 29(3): 104-105 (2012)

フォーラム講演の様子

続いて,今井宏明先生(慶應義塾大学)がスーパーマイクロポーラスシリカを利用した揮発性有機化合物(VOC)の除去技術について紹介されました。VOCは紫外線照射を受けて,光化学オキシダントを生成し,光化学スモッグの発生の原因となります。トルエンやキシレンなどの有機溶剤はVOCの代表的な化合物です。VOCは通常光触媒や燃焼触媒による酸化,あるいは吸着剤により除去することができます。シリカは不燃性のため,活性炭とくらべVOCの吸着剤として安全です。今井先生のグループは,無溶媒合成法でメソポーラスシリカより細孔径が小さく,ゼオライトより細孔径の大きいスーパーマイクロポーラスシリカの合成法を確立しました。合成した材料をトルエンの吸着剤に応用した結果,市販シリカの三倍,また活性炭とほぼ同等の吸着力を示しました。さらに,メソポーラスシリカの応用の展開として,シリカ細孔内で量子ドットを形成し,量子ドットのバンドギャップを制御することもできました。異なるバンドギャップをもつ半導体を組み合わせ,光を選択的に吸収できる光触媒への応用が可能です。もの作りと光触媒の両方の観点から興味深くお話を聞かせていただきました。

また,VOC分解技術として,金賢夏先生(産業技術総合研究所)に低温プラズマとゼオライト複合システムを紹介いただきました。高吸着能力を持つゼオライトと酸化分解力の強いプラズマ触媒装置により,高いVOC除去性能力をもちます。省エネルギー型のプロセス設計は,通常の化学合成のみならす,環境浄化においても必須の技術であり,たいへん参考になりました。

最後に,堀越智先生(上智大学)はマイクロ波加熱を利用した技術について講演されました。マイクロ波による加熱手段は,すでに焼成プロセスや化学合成反応に応用されており,省エネルギー技術や環境負荷低減技術として期待されています。堀越先生の講演の中で,私は特に興味を持ったのは,マイクロ波照射下で,酸化チタンによる色素分解効率が向上した内容でした。私もゼオライトや酸化チタンを用いた光化学反応について研究しているので,自分の研究にマイクロ波加熱の技術を応用できるではないかと思いを馳せることができました。

このような講演会に参加し,ゼオライトやスーパーマイクロポーラスなどさまざまな物質を,プラズマやマイクロ波など多様なプロセスと複合的に利用することによる新たな環境浄化方法の可能性をお教えいただけました。また,研究のモティベーションを広く持て,自分の研究を推進していくことに大変役立ちました。このような会に参加させていただき,ゼオライト学会および本フォーラムを開催していただいた先生方に感謝いたします。

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