日本ゼオライト学会 刊行物 Publication of Japan Zeolite Association

ISSN: 0918–7774
一般社団法人日本ゼオライト学会 Japan Zeolite Association
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5 アカデミーセンター Japan Zeolite Association Academy Center, 358-5 Yamabuki-cho, Shinju-ku, Tokyo 162-0801, Japan
Zeolite 29(2): 55-61 (2012)
doi:10.20731/zeoraito.29.2.55

解説解説

バインダレスゼオライト成形体の創成Synthesis and Industrial Application of Binder-less Zeolite Moldings

(株)日本触媒GSC触媒技術研究所GSC Catalyst Technology Research Center, Nippon Shokubai Co., Ltd. ◇ 〒305-0856 茨城県つくば市観音台1-25-12

受理日:2012年3月21日Accepted: March 21, 2012
発行日:2012年6月10日Published: June 10, 2012
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シリカ成形体にアルカリ金属と有機構造規定剤(SDA)とを含浸担持し,加圧水蒸気雰囲気下で結晶化することにより,シリカ成形体自身をケイ素源とするバインダレスゼオライト成形体を合成する方法を開発した。SDAの選択やアルミニウム,鉄などの金属塩の共存により,広範な組成および種類のハイシリカタイプの結晶性メタロシリケートを合成できることから,比較的一般性の高い合成方法と言える。本法により得られるゼオライト成形体は結晶化度が高いうえ,原料に用いるシリカ成形体の外観(形状)とメソ細孔およびマクロ細孔の構造を保持できるため,工業用触媒開発のために重要となる物性(成形体の形状や大きさ,細孔容積,細孔径など)を簡便に設計可能である。これらの特長を活用することにより,液安法エタノールアミン製造法においてジエタノールアミンを形状選択的に合成可能なバインダレスゼオライト触媒を開発し,企業化に成功した。

Nippon Shokubai has developed the binder-less zeolite moldings which can be synthesized from porous silica moldings as the source silica of the zeolites. The binder-less zeolite moldings were prepared by loading alkali metal and non-volatile structure-directing-agent (SDA) onto the silica moldings, followed by treatment with steam. It seems that this developed method of the binder-less zeolite synthesis has some versatility because various crystal structure of high silica type metallosilicate can be synthesized by the choice of SDAs or the co-existence of hetero-atom compounds, i.e., Al, Fe etc., on silica moldings. The developed binder-less zeolite moldings not only have high crystallinity but also retain the shapes and the meso- or macroporous structures of the source silica moldings. Therefore, the morphological character of the binder-less zeolite moldings, i.e., shapes, size of particle, macropore size and volume etc., can be easily designed. Nippon Shokubai has successfully developed the catalytic process for selective diethanolamine production in the commercial scale using this binder-less zeolite catalyst.

キーワード:バインダレス;成形体;メソ細孔;マクロ細孔;MFI

Key words: binder-less; molding; mesoporosity; macroporosity; MFI

1. はじめに

MFI型などのハイシリカタイプのゼオライトは,分子サイズレベルの均質なミクロ細孔と酸点をもつうえ,耐熱性,酸強度,疎水性などの特性から固体触媒に適した材料である1)。例えば,流動床反応プロセスによるシクロヘキセン水和反応2)や気相ベックマン転移反応3)などのように工業的にも重要な触媒として知られている。これらのゼオライトは,いわゆる水熱合成法4)(hydrothermal synthesis: HTS法)やドライゲルコンバージョン法5)(dry gel conversiontechnique: DGC法)などの発展によって,化学的組成,結晶構造,一次粒子の形態などを様々に設計することができる。通常,結晶性の高いゼオライトを合成するためには,ケイ素源,アルミニウム源,アルカリ成分および有機構造規定剤(SDA)などを含む均質な“水性ゲル(hydrogel)”を前駆体として調製する必要がある。水性ゲルを水熱反応(HTS法)や,あるいは水性ゲルを乾燥して得たドライゲル粉末をVPT法6)(vapor-phase transportsynthesis)やSAC法5)(steam-assisted conversion)により結晶化する工程(DGC法)を経て合成されるため,これらの方法で得られるゼオライトは基本的に粉体となる。ハイシリカ型ゼオライト触媒の工業的利用の観点からは流動床反応プロセスだけでなく,触媒分離工程が不要な固定床流通式反応プロセスで使用できることが重要であるが,粉体だと触媒の保持方法や圧力損失が著しく高くなる問題点があり工業的には困難である。流通系で使うにはゼオライトを成形し,さらに,成形物の形状や大きさ,メソおよびマクロ細孔容積とその分布などの形態的特性を制御して,圧力損失を低減させると同時に成形体内部における物質移動速度を向上させて高い触媒有効利用率を実現しなければならない。ゼオライト自体は可塑性や自己焼結性をもたないため通常は無機酸化物をバインダとして添加して成形する必要があるが,無機バインダで成形する場合には上記の形態的特性をある程度制御できる反面,ゼオライトのバインダ成分への埋没や希釈効果による効率の低下,無機バインダによる副反応の発生という新たに生じる問題を考慮しなければならない。

一方,主にゼオライト膜合成の見地からDGC法を応用展開し,無機バインダの添加なしでゼオライト成型物を作製する報告がある。例えば,水上・清住らは7–9),前駆体のドライゲル粉体をディスク状に圧縮成型した後に結晶化することにより,ゼオライト粒子が緻密に凝集して実質的に無機バインダを含まないゼオライトディスクを作製した。また,粒子内部における物質移動速度の改善・向上を目的として,メソ細孔をもつMFI型ゼオライトを合成する様々な方法が研究されている1)。例えば,水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液や水熱処理などのポストシンセシス処理法(postsynthesis treatment)により,あらかじめ合成されたゼオライト粒子から脱ケイ素,脱アルミニウムする方法や,カーボンブラックやポリスチレン粒子共存下で水熱合成して得られたゼオライト粒子から共存粒子を焼成除去する方法(macrotemplating method),多孔性カーボン細孔内でのMFI型ゼオライトの合成(nanocasting method)などがあり,これらの手法によって細孔径が10〜100 nmのメソおよびマクロ細孔が形成される。すなわち,DGC法による緻密なゼオライト凝集成型物の作製方法とメソ細孔の形成・修飾法とを組み合わせれば,形態的特性が制御されたバインダレスゼオライト成形体を合成できると予想されるが,研究例は非常に少ないようである。本稿では,当社でジエタノールアミン形状選択的製造用触媒材料として工業的に実用化しているバインダレスゼオライト成形体の合成法10–12)について紹介する。本法はゼオライト合成反応後の成型工程やメソおよびマクロ細孔を二次的に形成するための工程が不要なシンプルな製法である。市販の非晶質シリカ成形品自体をケイ素源として用いて,水性ゲルやドライゲルなどの前駆体を調製するための煩雑な工程が不要で,かつ,メソおよびマクロ細孔構造に代表されるシリカ成形品の形態的特性を保持したバインダレスゼオライト成形体が得られる特長がある。原料となる多孔質シリカゲルは,成形体の形状,大きさ,細孔容積,細孔径などを高度に制御可能であり多様な物性をもつ製品が一般的に入手可能であることから,ケイ素源として用いるシリカ市販製品の選択がバインダレスゼオライト成形体の形態的特性を制御することと等価になり,工業的利用の観点から優れた合成法である。

2. バインダレスゼオライト成形体の合成

MFI型バインダレスゼオライト成形体の典型的な合成方法は次のとおりである。まず,市販のシリカビーズ(富士シリシア化学(株)社製,CARiACT Q-50, 10-20 mesh)に,水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPAOH)とNaOHの混合水溶液(A)を含浸後,80〜100°Cで乾燥させることによってSDAとNaOHをシリカ担体上に担持する。その後,加圧水蒸気で180°C,8時間処理するとMFI型シリカライト成形体が得られる(図1)。担持されるSDAとNaOHの量は,混合水溶液(A)の濃度によって調整される。すなわち,含浸される混合水溶液(A)の液量はシリカビーズの吸水量に丁度見合う容量であるから,水溶液(A)の濃度と吸水量の積が各成分の担持量となる。含浸する液量が吸水量より不足していたり,逆に,過剰にあってシリカビーズ外に残っている場合にはSDAとNaOHを均一に担持できなくなってバインダレスゼオライト成形体の結晶化度や形態的特性に悪影響が生じる。

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図1 バインダレスゼオライト成形体の合成方法

上記のシリカビーズの代わりにリング状などに成形された種々の多孔質シリカゲル成形体を用いると,その形状を保持したバインダレスゼオライト成形体が得られる(図2)。また,混合水溶液(A)にアルミン酸ナトリウムや硝酸アルミニウムを溶解させるか,あるいは,常法によりあらかじめアルミナを担持したアルミナ担持シリカ成形体を用いて,混合水溶液(A)を含浸担持して上述の操作を行うと,Al原子がT原子として骨格に取り込まれたバインダレスアルミノシリケート成形体が得られる。アルミン酸ナトリウムを用いる場合はNaOHは必須ではなく,アルミン酸ナトリウムのNa分で代替することができる。

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図2 種々形態のバインダレスゼオライト成形体の外観

3. バインダレスゼオライト成形体の物性

Si/Al原子比=30, Si/SDAモル比=15, Si/Na原子比=23の条件で合成したバインダレスゼオライト成形体を水洗して乾燥し,粉砕した後に測定したXRDチャートを図3に,SDAを焼成除去した生成物の29Si および27Al MAS NMR を図4に示す。XRDパターンは結晶性の極めて高いMFI構造を示しており,29Siおよび 27Al MAS NMRの結果と整合性があった。格子外(5, 6配位)のAlはほとんど存在しなことと,4配位Alに帰属されるシグナルの半値幅が結晶化前の1384 Hzから960 Hzに狭く変化することとを合わせて考えると,全てのAlがゼオライトのT原子として骨格内に取り込まれていることが示唆される。また,成形体断面や粉砕物粒子のエネルギー分散型蛍光X線分析によれば,生成したゼオライト粒子が均質な組成をもつことがわかる。

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図3 MFI型バインダレスアルミノシリケート成形体(as-made)のXRDパターン

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図4 MFI型バインダレスアルミノシリケート成形体の29Siおよび27Al MAS NMRスペクトル

比表面積およびメソ〜マクロ細孔容積(直径4 nm以上)の測定結果を表1に示す。表面積が80 m2/gのシリカビーズを原料に用いた場合,窒素を用いて測定したBET比表面積が380 m2/gまで大きくなる一方で,水銀圧入法による測定では24 m2/gと小さくなった。水銀圧入法による測定では細孔径が4 nm以下のミクロ細孔の内表面積が測定されないため,これらの表面積変化は,ゼオライト化によるミクロ細孔の生成を示すと同時に,生じたゼオライトがサブミクロンサイズの微細な結晶粒子から成っていることを示しており,実際のFE-SEM観察結果11)と整合性があった。また,図5に示す細孔分布は原料シリカと良く一致しており,これらの結果から,本法により合成されるバインダレスゼオライト成形体は,原料シリカ成形体の外観だけでなくメソおよびマクロ細孔構造が保持されることが明らかである。

表1 MFI型バインダレスアルミノシリケート成形体の細孔特性
BET (m2/g)水銀圧入法(>4 nm)結晶化度(XRDルーランド法)
Area (m2/g)細孔容積(ml/g)
MFIゼオライト380240.97〜100%
シリカビーズ80801非晶質
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図5 バインダレスゼオライト成形体と原料シリカ成形体の細孔分布曲線(水銀圧入法)

4. 他構造のバインダレスメタロシリケート成形体

Alの代わりにホウ素,鉄,ガリウムなどの塩または酸化物を担持した場合には,これらの元素をT原子として取り込んだバインダレスメタロシリケート成形体を得ることができる。これらのメタロシリケートは焼成によってSDAを除去した後に硝酸アンモニウム水溶液でイオン交換後,熱分解するとプロトン型に変換することができ,こうして得られたH-MFI型アルミノシリケートおよび鉄シリケート成形体はNH3-TPDにおいて,HTS法で合成された同構造のアルミノシリケートおよび鉄シリケートと同様の脱離曲線を与えた(図6)。これらの結果からもAlやFeなどのヘテロ原子がT原子として骨格内に取り込まれていることがわかる。また,SDAとしてTPAOHの代わりに種々の4級アンモニウム塩を用いると,水熱合成の場合と同一種類のゼオライト構造を有する各種のバインダレスゼオライト成形体が得られる(表2)。

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図6 H-MFI型バインダレスメタロシリケート成形体のNH3-TPDスペクトル

表2 SDAに対応するバインダレスゼオライト成形体の結晶構造
SDASi/AlSi/NaSi/SDA条件結晶構造
NPr4OHa30100180°C, 30 hMFI
NPr4OHa3030180°C, 8 hMFI
NPr4OH30020030180°C, 8 hMFI
NPr4OH16820180°C, 8 hMFI
NPr4OH5415180°C, 3 hMFI
NBu4OH241610170°C, 32 hMEL
MeNEt3OH362810180°C, 48 hMTW
NEt4OH30235170°C, 20 hBEA
NMe4OHa205170°C, 144 hRUT
a Al非担持サンプル(シリカライト)

5. 合成条件の検討と考察

Al成分を酸化物としてあらかじめシリカビーズに担持した成形体を用いて,SDAおよびNaOHの担持量と結晶化の関係を調べた(表3)。まず,シリカビーズに硝酸アルミニウム水溶液を含浸担持して焼成し,Si/Al原子比=16のアルミナ担持シリカビーズを調製した。これを加圧水蒸気で処理するとBET比表面積値が変化しないが,NaOHを担持した後に水蒸気処理すると6 m2/gに低下し,シリカ一次粒子がこの条件下で著しくシンタリングすることがわかる(entry 2)。NaOHの代わりにTPAOHを担持した場合(entry 3)や,Alに対して原子比で0.5当量のNaOHを担持した場合(entry 4)はシンタリングは大きく抑制された。XRD測定の結果,entry 1〜4の組成ではゼオライト化せず非晶質な生成物となり,entry 5のみでゼオライト化が進行してバインダレスゼオライト成形体が得られた。また,27AlMAS NMR測定ではシリカ上に担持されたAlはブロードなシグナルを与え4〜6配位の混合物であり,これにTPAOHのみを担持する(entry 3)と6配位構造が主成分に変化する一方,NaOHの存在により4配位構造が安定化することがわかった(entry 2, 4, 5)。

表3 前駆体組成比の影響
entryサンプル組成Al配位数BETb [m2/g]XRDb
1Al2O3/SiO2 : [S]Si16Al4, 5, 680非晶質
2[S]+NaOHNa1.3Si16Al46非晶質
3[S]+TPAOHSi16Al(TPA)0.84, 6a80非晶質
4[S]+TPAOH+NaOHNa0.5Si16Al(TPA)0.84a, 665非晶質
5[S]+TPAOH+NaOHNa1.3Si16Al(TPA)0.84380MFI構造
a 下線は主成分を表す b 180°C飽和水蒸気8時間処理後に測定

これらの実験事実から,Na成分は4配位のAlを安定化するために優先的に消費され,Alに対して過剰に存在するNa+がSi–O結合を切断・再結合(シンタリング)する機能をもつと考えることができる。すなわち,含浸担持時にシリカ表面でAlとNaOHとTPAOHが反応して4配位Alの複合体が生じ,さらに,水蒸気処理時には過剰に存在するNa+成分がシンタリング作用と類似の機構でバルクなシリカのSi–O結合を切断および再構成すると考えられる。本法によるバインダレスゼオライト生成過程ではケイ素に関する有用な化学的情報が得られていないが,松方ら13–16)が報告しているDGC法におけるゼオライトの生成過程を参照すると,含浸担持過程あるいは結晶化過程の初期段階でシリカ担体上にSDAと4配位AlとSiからなる中間体ナノ粒子がNaOHの関与によって生成し,この中間体あるいはいったん生成したゼオライトナノ粒子が再構成や再溶融過程を経ることによってシリカ担体上をマイクロメートルオーダーで移動できるのではないかと考えられる。シンタリング作用を伴いながら粒子内部までが均一な組成となってシリカ担体全体がゼオライト化し,その結果,シリカ一次粒子の凝集体である多孔質シリカゲルが均質で微細なゼオライト結晶からなる凝集体に転換されることになり,シリカ成形体の形態的特性を保持したバインダレスゼオライト成形体が生成すると推測される。

6. 当社における実用化の例

多孔質シリカ成形体は,吸着剤,触媒あるいは触媒担体として気相や液相条件での固定床プロセスで広く利用されているので,それらの形態を保持したバインダレスゼオライト成形体も固定床での利用に適した形態的物性をもつことになる。特に,構成するゼオライト結晶が微細であることに加え,反応物分子(あるいは生成物分子)がゼオライト粒子に至る(あるいは脱離する)までの道程が細孔径10 nm以上のメソおよびマクロ細孔であり,その細孔容積が0.5 ml/g以上であることから,物質移動の制約を抑制できる観点で理想的な細孔構造をもつ。これらの特長を活かして,当社では固定床反応装置を用いる液安法エタノールアミン製造用の触媒として実用化している10–12)

希土類イオン交換MFI型ゼオライトを触媒として用いると,アンモニアと酸化エチレンの逐次的開環付加反応(図7)の遷移状態を規制して形状選択的にジエタノールアミン(DEA)が得られる。この反応系は生成物であるエタノールアミン(EAs)による非選択的自己触媒反応を併発するため,固定床反応向けに利用するMFI型ゼオライト触媒は高活性でなければならない。なぜなら,触媒活性が低くなると自己触媒的な非選択的反応の割合が増加してDEA選択性が低下するからである。本法で得られるMFI型ゼオライト成形体をプロトン型にイオン交換し,これに硝酸ランタンを含浸担持後に熱処理してゼオライト酸点の約20%をLa3+でイオン交換した触媒を調製して反応評価を行い,同一組成の粉体ゼオライトに対して30 wt%のアルミナバインダを使用して成形した触媒の評価結果と比較した(表4)。アルミナ成形触媒ではDEA選択性が低下して,トリエタノールアミン(TEA)が増加するうえに,EAsの水酸基へ酸化エチレンが開環付加した副反応生成物が生じた。この結果は,アルミナバインダによる希釈・埋没効果のためゼオライト触媒の見かけの活性が低下して自己触媒反応比率が増加したことと,アルミナバインダを焼結させる加熱過程において,ゼオライト酸点上のLa3+イオンの一部がバインダ上へ移動して塩基点が生じ,塩基触媒による副反応(水酸基への酸化エチレン付加)が進行したことに起因する。すなわち,バインダレスゼオライト成形体を触媒材料に用いた場合には,ゼオライト触媒本来の性能が失われることなく発現できることになり,ジエタノールアミンの形状選択的な製造方法の実用化に初めて成功した。

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図7 エタノールアミンの生成反応式

表4 DEA合成反応評価結果
wt%Binder-lessAl2O3-Binder
MEA69.367.8
DEA30.227.1
TEA0.52.0
副生物trace2.1

7. まとめ

当社が開発したバインダーレスゼオライト成形体は,ケイ素源として用いるシリカ成形体の物性設計によって,形状,粒子径,メソおよびマクロ細孔構造等の形態的特性を容易に制御することができる優れた特長を持っている。バインダレスゼオライト成形体の合成工程は,粉体を扱わず,また,含浸,乾燥,加圧水蒸気処理,焼成,水洗およびイオン交換工程など,いずれも簡便な操作であるため,実用レベルにスケールアップすることが容易である点も特徴の一つに挙げられる。ゼオライトの含有率が実質的に100%の成形体なので,イオン交換操作や金属担持などの化学修飾が工業スケールで簡便に実施できる。また,成形体粒子は数10 nmのメソ〜マクロ細孔をもち,かつ,成形体を構成するゼオライト結晶(一次粒子)が微細なため,成形体粒子内部の物質移動や拡散に優位な特性を示し,ゼオライト本来の性能を成形体で実現できる。今後,合成可能な構造の拡張や機械的強度の向上などの技術課題に取り組みながら,ゼオライトを利用する種々の反応触媒への応用をはじめ,さらに,これらの特徴を活かした用途開発を行っていきたい。

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