日本ゼオライト学会 刊行物 Publication of Japan Zeolite Association

ISSN: 0918–7774
一般社団法人日本ゼオライト学会 Japan Zeolite Association
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5 アカデミーセンター Japan Zeolite Association Academy Center, 358-5 Yamabuki-cho, Shinju-ku, Tokyo 162-0801, Japan
Zeolite 29(1): 10-21 (2012)
doi:10.20731/zeoraito.29.1.10

解説解説

ナノ細孔系での物理吸着の新展開New insight into physical adsorption on nanoporous solids

1信州大学エキゾチックナノカーボンENCs Project, Shinshu University ◇ 〒380-8533 長野県長野市若里4-17-1

2千葉大学大学院理学研究科Graduate school of science, Chiba University ◇ 〒263-8522 千葉県千葉市稲生区弥生町1-33

受理日:2011年12月21日Accepted: December 21, 2011
発行日:2012年3月10日Published: March 10, 2012
HTMLPDFEPUB3

固体と気体分子との相互作用である,物理吸着,化学吸着,吸収および吸蔵は,相互作用時に分子と固体の構造を変えるか否かで判別できる。例えば,物理吸着では求引相互作用が分散相互作用であるために,分子と固体の構造が変わらない。しかし,ナノ細孔系では物理吸着といえども相互作用が強調され優れた吸着特性を示す。ナノ細孔体は多様であり,その吸着特性は大変異なっている。柱構造である細孔性配位高分子(PCP)結晶は本質的に壁構造を主とする他のナノ細孔体よりも高表面積をとりうる。PCP結晶には吸着に鋭敏な格子の柔軟性を示すものがあり,特定の圧力で気体を吸着するゲート吸着を起すことがある。新たな物理吸着現象に低温で顕著な量子分子篩効果がある。水素や重水素のように軽い同位体は量子的揺動によって実効サイズと分子間相互作用が異なり,ナノ細孔系では分子量の大きな分子がより吸着されるという顕著な分子篩性が現れる。また,疎水的な表面特性を有するカーボンがnmスケールの細孔をもつと,水蒸気を低圧から吸着できるようになり,あたかも親水性を獲得したように振舞う。この見かけ親水性には水分子クラスターと細孔とのフィッティングが関係している。

Physical adsorption, chemisorption, absorption and occlusion as the typical interaction between a gaseous molecule and solid can be classified by the structural change in the molecule and/or solid on the mutual interaction. Physical adsorption, of which attractive interaction originates from dispersion interaction, does not change both structures of the molecule and solid. However, physical adsorption in nanopores is highly enhanced due to the overlapped interaction potential between the molecule and pore wall; various kinds of nanoporous solids exhibit characteristic adsorption behavior. Porous coordination polymer (PCP) crystals having pillar frame structure can have larger surface area than other nanoporous solids consisting of wall frame structure such as zeolite and porous carbon. Some of PCP crystals have flexible nature, showing gate adsorption. Quantum molecular sieving effect is a new phenomenon in physical adsorption. Hydrogen isotopes can show different adsorption behavior due to the difference in the quantum fluctuation relating to the molecular weight; the quantum fluctuation difference in the isotopes gives a marked difference in adsorption in nanopores at low temperature. Water adsorption on nanoporous carbon of hydrophobicity shows apparent hydrophilicity depending on the matching between the pore width and cluster size of water molecules.

キーワード:ナノ細孔;物理吸着;ゲート吸着;分子篩;水吸着

Key words: nanopore; physical adsorption; gate adsorption; quantum molecular sieving; wateradsorption

1. 多様化するナノ細孔体

二酸化炭素削減と石油の枯渇に代表されるエネルギー問題,有用元素の枯渇,水資源の不足,そして放射性廃棄物の増加など,我々の身の回りには深刻な課題が山積し,しかもそれら課題が日々重大化している。このような人類の状況下において物質科学の役割,特にナノ細孔体にスーパースターとしての活躍が期待されている。ナノ細孔体の厳密な定義はないが,近く勧告されるIUPACの「ナノ細孔体」の定義は細孔径wが100 nm以下の細孔をさすことになろう。現在使用されているミクロ細孔(w<2nm),メソ細孔(2<w<50 nm),マクロ細孔(w>50 nm)の概念の中で,ミクロ細孔とメソ細孔を,更には100 nmまでの細孔を含む総称として「ナノ細孔」が使用されることになろう。ミクロ細孔と小さなメソ細孔に対応する細孔は,特に分子とイオンとの相互作用が強く,自発的な作用として分子あるいはイオンを濃縮・分離する優れた機能をもっている。分子(イオン)の濃縮・分離は上述の課題解決に鍵となるプロセスであるために,ナノ細孔体への期待が一層大きくなっている。ナノ細孔体は結晶性と非晶性ナノ細孔体に大別され,ゼオライトと活性炭はそれらの代表的物質である。結晶性ナノ細孔体は結晶構造由来のナノ細孔をもつために,細孔構造は本質的にユニフォームである。一方,非晶性ナノ細孔体の細孔構造は不均一であり,いかに細孔構造を制御するかが永年の研究課題である。1990年以降,このようなナノ細孔性固体のイメージとは違った新規ナノ細孔体が次々と登場した。まず,非晶性でありながら規則的細孔構造による明瞭なX線回折を示すメソ細孔性シリカが創製され,科学技術の舞台を魅了している。また,極だった物理特性を有するカーボンナノチューブが世に現れた(1991年)1)。カーボンナノチューブが登場してみると,実はカーボンファイバーとして実用化されていたものの中にナノチューブ構造が見出された2)。カーボンナノチューブは電気伝導性,熱伝導性,機械的特性などが従来の固体に比して著しく優れているので,化学的応用への展開の努力が続けられている。これらより少し遅れて,森らおよび北川らは配位子によりブリッジされた錯体結晶中の空間が吸着機能を有することを見出した3,4)。多孔性高分子錯体(porous coordination polymer; PCP)あるいは金属有機構造体(metal organic framework; MOF)の研究は爆発的に発展し,PCPは「有機ゼオライト」とも呼ばれるに至った。このPCPの中には特筆すべき格子の著しい柔軟性の代表的挙動で,ある一定の吸着圧力で急に吸着が起きるゲート的な新吸着現象を示すものがある5)。ゲート吸着は結晶構造の大きな変化を伴うものであり,剛性をもつ固体概念とは相容れないものである。

このように新たに登場した「ナノ細孔体」はいずれもスーパースターの素質を有し,各々の個性を伸ばしながら「人類生存のための技術」に寄与することが求められている。

代表的ナノ細孔体の特性を次に比較してみよう(表1)。ここでナノ細孔性カーボンにはナノチューブも含めている。ナノ細孔性カーボンの(△)印の所はナノチューブでは(○)である。またゼオライトは数々の構造を選べば,所定の細孔径が選べるので,「細孔径制御性」を(○)としてある。また,多くの細孔体が粒子間の凝集構造によるメソ細孔とマクロ細孔をもちうる。カーボンとシリカは調製法によってマクロ細孔を容易に付加しうる。他にも広く利用されている粘土鉱物や,触媒などに用いられている遷移金属酸化物細孔体がある。PCPの類似細孔体である共有結合性の集積構造体の細孔性の共有結合性有機構造体(covalent organic framework; COF)6)は熱安定性に優れている。ここではPCPに(×)が多い。しかしさらなる進歩で(◎)に転ずる可能性がある。つまりPCPの最大のメリットはデザイン性に優れ,合成化学手法の導入により今後の発展性が大である点である。フッ素有機化合物7)の中には独特の気体吸着性を示すものもある。他にもナノ細孔体を鋳型としてゼオライト構造を有するカーボン8,9)やカーボン構造を模したゼオライト10)など多様なナノ細孔体が生み出されている。

表1 細孔体の特性比較
ゼオライトカーボンPCPシリカ
電気伝導性×××
熱伝導性×××
熱的安定性
耐酸化性××
耐水性××
イオン交換性×××
細孔領域ミクロミクロ,メソミクロメソ
均一細孔構造性
細孔構造制御性
超高表面性(>1000 m2 g−1×
記号は定性的な指標。○:優れている,△:中間的,×:よくない

通常制御しうる機能性を創出するためには均一な所定の細孔径を有するナノ細孔体が望ましい。しかし,小分子次元の大きさのミクロ細孔系においては,しばしば細孔内拡散障害を生ずる。このために吸着速度と容量の低下,あるいは触媒能の低下が起こる。これらを防ぐために,ミクロ細孔内の拡散距離を短くする必要があり,ナノ細孔体の小粒子化あるいはメソ細孔の賦与などが試みられている。触媒能に優れるゼオライトにおいては特にミクロ細孔内拡散の迅速化が求められており,結晶の微粒化,アルカリによるメソ細孔創出,鋳型法によるメソ細孔賦与等が試みられている。陶らは典型的メソ細孔性カーボンであるカーボンエアロゲルを鋳型として,ZSM-5, NaYなどに均一なメソ細孔を賦与した10)。ZSM-5では大変に均一なメソ細孔を導入できた。図1にあるように走査型電子顕微鏡にて均一なメソ細孔が認められるが,窒素吸着法によっても本来のミクロ細孔に加えて,メソ細孔が賦与されていることがわかる。メソ孔を賦与したゼオライトの研究はさらに発展している11)

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図1 ZSM-5の走査型電子顕微鏡画像(上),窒素吸着等温線により算出した細孔径分布解析(下)

2. 気体分子とナノ細孔との相互作用―柱と壁細孔体の差異―

分子と固体の相互作用には「吸着」「物理吸着」「化学吸着」「吸収」「吸蔵」「収着」および「触媒作用」が知られている。「触媒作用」は「化学吸着」を経て分子を転換する現象で,濃縮現象を表している他の現象とは異なっている。残りの六つの現象の中で「物理吸着」「化学吸着」「吸収」「吸蔵」が基本的なものである。この4現象の明確な判別は相互作用する時に分子と固体の構造が変わるか否かで行うとよい12)表2にみるように4現象を明確に判別しうる。分散相互作用を主たる求引相互作用とする物理吸着では,分子も固体も構造は変わらない。しかし,化学吸着する時に分子は構造を変えるが,バルク固体の構造は不変である。もちろん固体表面層は変化する。モンモリロナイトと水との例にみるように,吸収において分子の構造は変わらずに固体構造のみが変化する。後述のPCPのゲート吸着はこの判別法によると吸収ということになる。吸蔵ではパラジウムと水素の相互作用のように,固体も分子も構造を変える。これらの4タイプの相互作用が基本的なものであるが,分子の構造が変わらない物理吸着と吸収を包含する意味で収着が使われることもある。また吸着は物理吸着を指すこともあり,また上述の四つの相互作用すべてを意味することもある。また社会的に広く使われる「貯蔵」が包括的な吸着の意味で用いられることもある。本稿では分散相互作用による求引相互作用で生ずる物理吸着と吸収に関わる話題を扱う。

表2 物質の濃縮過程における基本的な分子-固体間相互作用
分子の構造変化固体の構造変化
物理吸着
化学吸着
吸収
(狭義の)吸蔵

分子と固体との求引相互作用Φaは,分子の固体表面からの垂直距離をzとすると(1)式(1)Φa=定数z3

で与えられる。このために分子間距離の6乗に反比例する分子間相互作用よりも,遠方まで作用できる。細孔壁と分子との相互作用の場合には,平坦表面に比べて実効的に相互作用できる固体原子が多いために,相互作用ポテンシャルが大きくなる。スリット型の細孔の場合には相対する細孔壁原子間距離をHとすると,式(2)のように二つの細孔壁と分子との相互作用の重ね合わせ(2)Φt(H)=Φa(z)+(Hz)

が起こるので,全相互作用ポテンシャル(Φt)が強調される。円筒形細孔中に分子がある場合には,スリット型細孔中の場合よりも2倍程度のポテンシャル強調がみられることもある。細孔径が分子サイズに近い程ポテンシャル井戸は深くなる。これらの深い相互作用ポテンシャル井戸がナノ細孔の強い吸着性を生み出す。図2には単層カーボンナノチューブと窒素分子との相互作用ポテンシャルのチューブ径による変化を示す。チューブ径が分子径に近づく程ポテンシャル井戸が深くなる様子がみてとれる。

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図2 単層カーボンナノチューブとチューブ内側にある窒素分子との相互作用ポテンシャルのチューブ径による変化

空隙空間を有する固体を構築するには3次元ブロックを交互に積層する,2次元壁により3次元構造(壁細孔体)を保持する,日本の伝統的な木造建築のように,1次元の柱の組み合わせにより高度の空隙体(柱細孔体)を生みだす,という3通りがある。3次元ブロックの積層体は質量当たりの空隙量を大きくできない。物質の濃縮貯蔵上に有利なのは壁細孔体と柱細孔体である。分子と壁細孔体あるいは柱細孔体との相互作用をみてみよう。ゼオライトや活性炭は典型的な壁細孔体である。PCPは柱細孔体である。当然ながら壁細孔体よりも柱細孔体の方が質量当たりの高い空隙率を実現できる。PCPの高表面積と大きい細孔容積は構造の一次元性に起因する。それでは吸着の強さを決める求引相互作用から,壁細孔体と柱細孔体を比べてみよう13)図3は炭素原子からなる柱を隙間なく壁を形成していく時の窒素分子との相互作用ポテンシャルの深さが柱の数によってどのように変わるかを示している。この相互作用ポテンシャルは,後述の(4)式で表わされるLennard-Jonesポテンシャルにより求めている。これをみて直ちにわかることは1本の柱と分子との求引相互作用は大変に弱いが,柱が増えて壁を形成すると相互作用ポテンシャルの井戸が著しく深くなることである。したがって吸着の強さ,つまり低圧力域あるいは低濃度域からの吸着には壁細孔体が有利であり,質量当たりの表面積あるいは細孔容量は柱細孔体のほうが大きくなれる。また柱細孔体は3次元構造体の構築上の自由度が壁細孔体よりも大きく,構造多様性に優れている。反面,構造の熱的安定性は劣る。実際のPCPでは配位結合を用いているので質量当たりの高細孔度を犠牲にしているが,金属原子近傍の分散相互作用は強くなっている。また,水素結合等の比較的弱い結合によって柱細孔構造が維持されているので,吸着分子層と細孔体が一体としてエネルギー的に有利なように構造を変えられるメリットを有している。

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図3 壁を構成する炭素柱の数と相互作用ポテンシャル深さとの関係

相対ポテンシャルは炭素柱100本に対するポテンシャルとの比

3. ナノスケール環境に鋭敏な吸着

単層カーボンナノチューブ(SWCNT)でチューブ径が分子サイズよりも大きいと,チューブの内側と外側との両面の壁が分子に接することになる。SWCNTの全炭素原子は表面にあり,それも分子との相互作用ポテンシャルの異なる内壁と外壁とに寄与しており,通常の固体とは違う視点が求められる「表面性固体」である。表面性固体は壁面で分子と接することにより表面エネルギーつまり固体の凝集エネルギーが変わる。そのため時として固体の骨組構造を変えながら,分子を含む全系の安定性を高めようとする。SWCNTの骨組構造は共有結合で形成された強固なものであるために,分子吸着によって大きな変形を生むまでには至らない。しかしRBMとよばれるチューブの動径方向の振動数は分子吸着によって鋭敏に変化し,その振動数の変化は数万気圧でSWCNT周囲を圧縮する時と同程度となる14)。壁細孔体である活性炭ではグラフィティック構造を共役性のない結合によってブリッジしているために,細孔中への壁間の分子吸着によって細孔壁ならびに細孔が変化することがX線小角散乱およびX線回折から示されている15)

吸着する時鋭敏に構造を変える柔軟性が著しいのは多様な構造を取りうる柱細孔体のPCPである。図4に示すのは層状構造を持つ銅系PCP(ELM-11)の二酸化炭素吸着等温線である。この吸着等温線は従来の気体吸着等温線と全く異なり特定の閾値の圧力で吸着が開始され垂直に吸着がおこり,脱離側は吸着圧より低い圧力で垂直に脱着する。金子等はこの現象を「ゲート吸着」と名づけた5)。吸着及び脱着圧を吸着ゲート圧(Pg, ad),脱着ゲート圧とした。このゲート吸着現象はメタンでも認められた。興味深いことにPg, adの温度依存性をみると相平衡の熱力学的関係式であるvanʼt Hoff式に従う。このことはELM-11とメタンが新しい固相(3)ELM11(s)+CH4(g)=[ ELM11:CH4 ](s)

を(3)式に従って形成していることを示している。つまりメタンによってELM-11は新しいクラスレート化合物を形成すると見なすことができる16)。このことから厳密に言うならば,ゲート吸着を「ゲート吸収」と呼ばなければならない。このゲート吸着の開閉のバネ定数はゲート圧力から推定され,水素結合のオーダーであることが示されている5)。さらに構造的な理解はシンクロトロンX線回折によってなされた17)。二酸化炭素吸着時にELM-11のc軸が26%伸び,脱着時には収縮し元に戻る。この伸縮は繰り返し起こるが結晶構造は維持される。ただし,0.1 mmオーダーの結晶がµmオーダーの結晶に微細化される。ELM-11は二酸化炭素あるいはメタン等を呼吸する結晶と言ってもよいであろう。多段のゲート吸着は近藤らによって他の層状PCPで見出された18)。同様なゲート現象はFéreyらによるMIL-53でも認められ,彼らはBreathing現象と呼んだ19)。PCPの柔軟性に由来するゲート吸着は北川等によりさらに多くのPCPで見出されるに至った4)。その機構についてもFuchs等の半経験的統計力学アプローチ20),渡辺らの自由エネルギーからのアプローチ21)などにより研究され,理解が進んできている。しかし,気体圧力変化を検知して,コレクティブに結晶が構造を変える仕組みの理解はこれからである。

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図4 303 KのELM-11の二酸化炭素吸着等温線

4. 分子の量子的揺動由来の分子篩作用

電子が量子であることは論を待たない。波としての電子が電子顕微鏡としてナノの世界をビジュアルにしてくれている。さて分子の波動性はどうであろうか。水素原子でさえ電子の約1800倍も重いためにその波動性は無視できるほど小さい。de Broglie波長λt=h/(2πmkT)1/2で分子の揺動の程度を知ることができる。20 Kにおける軽分子である水素と重水素のλtは各々0.3 nm, 0.17 nmであり,大きな差がある。77 Kになると水素と重水素のλtは各々0.14 nm, 0.11 nmであり,差は0.03 nmと小さくなる。しかし,この差がナノスケールの細孔への吸着では大きな意味をもっている。既に産業として成立している空気分離による窒素と酸素の場合には,古典粒子としてのサイズでみると,窒素が0.36 nm(あるいは0.42 nm×0.30 nm),酸素が0.34 nm(あるいは0.38 nm×0.28 nm)であり,差はなんと0.02 nmにすぎない。酸素と窒素の四重極子モーメントの差異も関係しているが,古典的分子サイズの窒素と酸素が分子篩カーボンやゼオライトの1 nm以下の細孔への吸着によって分離され,広く社会に役立っている。このことからナノ細孔への吸着では,水素と重水素のλtの差は十分大きな意味を持っていると言える。金子等は4.2 Kにおけるスリット型ナノ細孔中でスリット幅方向での並進運動の量子化により,ヘリウムが古典粒子サイズよりも大きいことを示唆した22)。Beenakkerらは簡単なポテンシャル井戸の中の粒子モデルを用いて,チューブ空間の量子分子篩概念を理論的に示した23)。その後Johnsonらの経路積分法などを用いる理論的研究により,量子分子篩作用の可能性がより明確に示された24)。しかし実験的検証は大幅に遅れ,田中らによって単層カーボンナノホーン(SWCNH)について低温実験と量子シミュレーションによって初めて検証された25)。その後,SWCNT, PCP, あるいはAlPO4などについて,低温実験と量子シミュレーションからの研究がなされ,量子分子篩効果が明確に実証されるに至った26–28)

量子分子シミュレーションと古典的分子シミュレーションの違いは,ポテンシャルにある。古典的分子シミュレーションでは,Lennard-Jonesポテンシャル VLJ(r)((4)式)を用いるが,量子ポテンシャルでは分子のゆらぎを考慮する。近似的な量子ポテンシャルとしてはFeynman-HibbsポテンシャルVFB(r)((5)式)が40 K以上で用いられる。

(4)VLJ(r)=4ε{ (σr)12(σr)6 }VFH(r)=(6ukTπ2)23duVLJ(| r+u |)

(5)exp(6ukT2u2)

ここでrは分子間距離,σは古典的サイズパラメータ,εは対相互作用ポテンシャルの井戸の深さ,µは分子の換算質量である。

図5にはAlPO4-5の0.1 MPaの古典水素と量子水素との40 Kにおける細孔内充填状態を断面図で示す。古典水素では4個,量子水素では3個の分子がみえる。量子水素は揺動の影響で分子が大きくなっているため,古典水素よりも充填量が小さい。図6には0.87 nm×0.87 nmの1次元細孔を有する[Cu(4,4′-bipyridine)2(CF3SO3)]n(CuBOTf)の40 Kにおける水素と重水素の実験と量子シミュレーションによる吸着等温線を示す27)。水素と比べて・tが小さく実効サイズの小さい重水素の吸着量のほうが大きい。実線で示している量子シミュレーションの結果は,実験値を大体記述できている。ところが低圧部の吸着側の実測値がシミュレーションの吸着量より小さい。このシミュレーションはグランドカノニカルモンテカルロ法によってなされているので,シミュレーションの吸着量は平衡値である。ところが実験値は吸着の時間変化が小さくなったところで吸着平衡とみなしてプロットしている。小さな細孔では細孔内拡散が制限され,吸着平衡に達するのに長時間を要する。このために実験値が低圧領域ではシミュレーションの値より小さくなる。実際に,吸着平衡の待ち時間を伸ばすと吸着量が増える。吸着速度過程における量子分子篩効果も興味深い課題である。藤森らは水素と重水素混合ガスの量子分子篩性を流通法で新たに検討した29)。例えば0.7 nmのスリット細孔を有する活性炭素繊維(ACF)に重水素と水素の混合ガスを77 Kで吸着させた時の吸着される比率の時間変化を図7に示す。この場合には重水素の吸着優位性が時間とともに増大する。混合ガス系を用いた量子分子篩効果の実験的検討は始まったばかりであり,これから系統的な研究が求められる。この量子分子篩作用は量子流体系のナノ細孔への物理吸着であり,全く新しい物理吸着分野の誕生と言ってよいであろう。理論的研究が盛んであるが,重水素の濃縮分離などへの応用が期待されている。

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図5 AlPO4-5の0.1 MPa, 40 Kにおける古典水素(a)と量子水素(b)の細孔内充填状態の断面図

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図6 40 KにおけるCuBOTfの水素と重水素の実験と量子シミュレーションによる吸着等温線

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図7 77 KでのACFにおける水素と重水素の混合ガス吸着時の吸着比率の時間変化

5. 疎水・親水性転移もどきの吸着変化

固体表面の親水性あるいは疎水性をみるのに接触角が用いられる。接触角は水の表面張力の作用のために固体表面の粗さにも大きな影響を受けるが,固体表面の親水性・疎水性の代表的な尺度である。一方,より分子レベルで固体表面の親水性・疎水性を評価する方法として水蒸気吸着等温線の測定がある。水分子・固体表面間相互作用が強いと相対圧が小さいところで吸着量が大きく増大するので,表面は親水的であると判断できる。一方IUPACのⅢ型の吸着等温線のように,低相対圧でほとんど水蒸気吸着を生じない場合は,水分子と固体表面間相互作用が極めて小さく,親水的ではないことがわかる。

図8にピッチ系ACFと結晶化度のよいカーボンブラックへの水蒸気吸着等温線を示す。カーボンブラックへの水蒸気吸着量は極めて小さく30),相対圧が0.8になって漸く吸着が認められる。フッ素化したカーボンでは更に水蒸気吸着測定が困難となる31)。ACF試料の細孔径は0.7 nm, 1.0 nm, 1.1 nmであり,細孔径が大きくなる程吸着等温線の立ち上がりの相対圧が0.6以上となり,吸着ヒステリシスも顕著である。0.7 nm細孔の場合にはヒステリシスがほとんどなく,相対圧が0.3付近から吸着が始まっている。ピッチ系ACFの表面酸性基量は少ないために相対圧が小さい領域では水蒸気吸着量が零に近い。つまり疎水的にみえる。特に1.1 nm細孔のACFでは低圧域ではほぼ全く水蒸気を吸着しないのに,相対圧0.8あたりから吸着量が急増加して,最大吸着量は自重の8割近くに達する。あたかも疎水性固体が親水性あるいは吸水性固体に転移するような挙動である。実はこの現象は約80年にわたる長い疑問であった32)。大場・金子はこの現象が水分子クラスターの成長による自己安定化による“クラスター関与フィリング”機構で理解できることを示した33)In situ小角散乱法を適用してクラスターの成長・融合過程を実験とシミュレーションよって,クラスターの成長から均一吸着相への移行には準安定ルートがあるために吸着ヒステリシスを生ずることが解明されてきている34)。1.1〜1.3 nmの細孔中では,水分子クラスター状態,細孔壁上に単分子状に展開した状態および細孔中に均一に構造形成している状態が,細孔内の充填率の差異に応じて変わる。充填率0.4以下ではクラスター様構造,充填率0.4〜0.8では単分子構造,充填率が0.8以上では均一分布構造が最も安定である。しかし,分子動力学計算によるとクラスターと単分子構造間の転換は速度論的に不利であるために,吸着過程では吸着圧力の増加につれて,クラスターから均一分布構造へと吸着が進み,単分子構造を経由しない。このため吸着ブランチは準安定過程により生ずる。一方,脱着時は均一分散構造から単分子構造,クラスター構造へと安定状態を経て進むことができる。このために吸着ヒステリシスが生まれる。細孔径が0.7 nm以下の細孔では,充填率が0.6より大きいと単分子構造の安定化が増大し,かつ単分子-クラスター構造間の速度論的転換の禁止がとけるために,吸着ヒステリシスが消失する。また,吸着ブランチが準安定過程によることは次の研究から証明された35)。吸着等温線測定の一点ごとの測定に,5分から16時間平衡に達するまで待つと,測定待機時間が増加すると吸着ブランチが低相対圧側にシフトする。脱着等温線は変化しない。この検討によると一点測定毎に2000年程度待てば,吸着ヒステリシスが消失する。まだ十分な解明には至っていないがミクロ細孔が小さいと,水分子クラスターが小さい段階で細孔にフィッティングできるために低相対圧からの吸着が誘起され,親水性のように振る舞う。また吸着プロセスにおける小クラスター充填構造が水素結合ネットワークの均一吸着水構造との差異が極めて小さいために吸着ヒステリシスが消失する。この明瞭な事例が図9a)にあるように2層カーボンナノチューブ(DWCNT)の場合に見られる36)。高純度のDWCNTをアルゴン中にて2273 Kにて焼成すると細いDWCNT同志が融合して太いDWCNTに変化する(図9b))。このDWCNTはバンドルを形成しており,チューブ間間隙には1次元的に水分子が入れる。このサイトへの吸着は相対圧0.2付近から開始される。しかし,高圧加熱によってチューブ間間隙容量が小さくなり,チューブ径が太くなると大きな水クラスターによるフィリングがチューブ内空間に起こるようになるために,相対圧が0.6付近にならないと吸着が始まらない。AlPO4-5でも相対圧が0.2付近で水蒸気吸着等温線が急激に立ち上がる現象が知られている37,38)。上述したナノ細孔性カーボンと同様なクラスレート関与フィリングとみられる。

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図8 303 Kでの細孔径の異なるACFとカーボンブラックの水蒸気吸着等温線

ACF: 細孔径(a)1.1 nm,(b)1.0 nm,(c)0.7 nm, カーボンブラック:(d)

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図9 DWCNTsの水蒸気吸着等温線(a)とDWCNTs(左)およびアルゴン下で2273 Kにて焼成したDWCNTs(右)の透過型電子顕微鏡画像(b)

6. さらなる未開拓領域

細孔中への物理吸着は古い学問領域である。吸着学のバイブルのようなS. Brunauerの“The Adsorption of Gases and Vapours”(1944)の1章の初めに“The molecules that disappear from the gas phase either enter the inside of the solid, or remain on the outside, attached to its surface. The former phenomenon is called absorption, the latter adsorption. Often the two occur simultaneously; the total uptake of the gas is then designated by the term sorption.” という記述がある。現象に準拠した吸着と収着の差異が述べられているが,本稿ではより明瞭な概念の整理をした。上記の書中では様々な吸着データが紹介され,それらデータは最近の学術誌に掲載されているものに似ているものも多い。また,分散相互作用から吸着機構が論ぜられており,当時の「吸着学」がすでに十分格調の高い学術であることを示している。出版時から約70年の間における物理吸着の進歩は,well-definedなナノ細孔体が創製され,同時に細孔中の分子間構造も理解されてきたところにあろう。ゼオライトに情熱を傾注された高石哲男先生は吸着領域においても多大の寄与を果たされた39)。細孔中への吸着に関して極めて遅れている領域にイオン吸着がある。イオン吸着等温線の測定だけでは,イオン吸着の本質的進歩は望めない。カーボン系ではスーパーキャパシタに関連して,また放射性イオン除去・固定のために,イオンの吸着研究の必要性が認識されてきた。例えば筆者らはカーボンナノ細孔中の無機イオンが部分的脱水和を起こしていること40),有機イオンは規則的な配列構造をとっていること41)をX線吸収分光あるいはX線回折法で示している。全く新しい溶液中のイオン像につながると期待される。また,物理吸着と化学吸着の中間的吸着が,カーボンエッジで生ずることも明らかになってきた30)。ナノ細孔だけでなく固体表面のテラス・ステップ・エッジ,表面欠陥の制御とキャラクタリゼーションの進歩によって,吸着サイトと活性サイトがより明確に理解されるようになりつつある。一見完成した分野,研究しつくされたと思われる物質,例えば活性炭やゼオライトも,実は未開拓課題に満ちている。

謝辞Acknowledgments

千葉大学の大場友則助教,東京農工大学の近藤篤助教,京都大学の田中秀樹講師には,図の作成においてご助力をいただきました。記して謝意を表します。金子克美は地域卓越研究者結集プログラムの支援を受けている。

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