ゼオライトの科学:差異化のための戦略として
株式会社三菱化学 科学技術研究センター
© 2012 ゼオライト学会© 2012 Japan Association of Zeolite
最近の世界のエネルギー事情は,話題に事欠かない。地球温暖化に関わるCO2排出の問題,福島第一原発事故を発端とする原子力利用の是非,太陽光発電・バイオマス・風力等の再生可能エネルギー利用の機運,携帯電話に始まり,HEV・EVへの搭載が期待されるLi電池,さらに最近の米国におけるシェールガス革命とまさに次から次へと重要な課題が顕在化してきており世界のエネルギー需給の転換点にあることは疑いない。
そうは言いつつこうした課題に解決に取り組む研究者にとって共通したキーワードは“エネルギー資源の高効率転換,利用”であり,この具体的な手法としてのゼオライトに代表される規則性ミクロ多孔体の高度利用は非常に重要なものである。この10年前後において実用化されたゼオライトを用いた事例は触媒に限らずいくつもあげることができる。また昨年度,Science誌が取り上げた2011年度の技術革新の10大トピックスの中にゼオライト合成の技術的進歩があげられているといった事実はその重要性の証明であろう。
化学産業においてゼオライトを触媒や機能性無機材料としてとらえ,研究開発をしている立場から今後の課題について思うところを述べさせてもらうと
① 酸触媒に利用される場合の具体的な反応機構,外表面酸点の寄与についてわからないことが多い:中途半端に酸点が細孔内外に分布している触媒では,本質的形状選択性が失われている懸念が非常に大きい。
② 特に三次元多孔体ゼオライトについてより多くの合成的知見,物性的知見,触媒反応性についての知見が欲しい:つい最近までSDAが高価で実用化は無理と思われていたいくつかのゼオライトはその優れた実用性能が引き金となり実用化が近い。こうした可能性は他にもいくつも存在すると思っている。
③ 機能性無機材料として見た場合の結晶性,粒子形状,配向性などのモルフォロジー制御についての研究の深化が欲しい。
といった3点について切実に重要性を感じている。応用技術の上位概念として新興国がまねできない土俵としての“ゼオライトの科学の深化”が差異化技術の起点となり新しい触媒,材料,deviceにつながることを期待したい。
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