「平成23年度ゼオライトフォーラム」報告
東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻
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本年度のゼオライトフォーラムは,6月24日(金)東京大学本郷キャンパス,工学部11号館講堂にて開催されました。本フォーラムは,昨年の7月に逝去されました豊橋技術科学大学名誉教授,本学会名誉会員であられた高石哲男先生の追悼の意を込めてテーマを「ゼオライト温故知新」とし,「ゼオライトをはじめとする多孔質材料の歴史に学び,新しい技術を開発」という趣旨の下,現在ご活躍中の4名の先生方にご講演頂きました。参加者は当初の予定を遥かに上回る100名以上に達しており,盛大な印象を受けました。また講演後の質疑応答では様々な視点から活発な議論が交わされ,ナノ空間材料に対する関心の高さが窺われました。
開会の辞は,東京大学工学系の大久保達也先生よりいただきました。最初のご講演は早稲田大学理工学術院の山崎淳司先生より「ゼオライトの結晶構造研究の流れ―特に天然ゼオライトの(Si, Al)分布と結晶学的性質の相関について―」という題目で,天然ゼオライトの基礎,骨格構造の分類,天然ゼオライトにおけるこれからの課題について,ゼオライト合成研究の歴史も踏まえながら説明いただきました。また,高石先生によって提唱されましたConnectivity-configuration Matrices(CCM)法を用いたゼオライト骨格中の(Si, Al)分配の決定と物性の相関についても紹介いただきました。
2番目のご講演は信州大学エキゾチックナノカーボン研究拠点の金子克美先生より「ナノ細孔系における構造的物理吸着研究の流れ」という題目で,ナノ細孔空間での分子吸着・濃縮における基本概念,そしてナノ細孔空間が分子系に対して示すさまざまな分子機能(高圧効果,低温効果,濃縮貯蔵効果及び量子分子ふるい効果)について説明いただきました。また,固体構成原子の全てが表面に存在する「表面固体」,ここでは単層カーボンナノチューブ(Single-Wall Carbon Nanotube; SWCNT)を例に,表面固体のナノメートルスケールの分子環境鋭敏性についても紹介いただきました。表面固体の特性評価に関しては今後も研究展開が期待されている分野であり,著者自身も大変興味深く聞かせていただきました。
2件のご講演の後,コーヒーブレイクを挟み,3番目のご講演はBASFジャパンの竹中憲彦先生より「PCP/MOFの実用化に向けて」という題目で,活性炭やゼオライトよりも高比表面積,大細孔容積を示し,理論上ゲスト分子のアクセス不可能な空間(デッドスペース)をもたない金属-有機構造体(Metal-Organic Frameworks; MOF)の合成,特性,そして最先端の応用例まで幅広く紹介いただきました。特にMOFは水素貯蔵材料としての実用化が期待されており,BASFの実用化に向けた取り組みや,実用化に際しての今後の検討課題などについて説明いただきました。
最後のご講演は日産自動車株式会社総合研究所先端材料研究所の赤間弘先生より「自動車触媒におけるゼオライト〜現在・過去……〜」という題目で,これまでの日産自動車におけるCu-ゼオライト系リーンNOx触媒研究開発の紹介と,代表的な自動車触媒である吸着型三元触媒,ディーゼル酸化触媒,尿素-SCR触媒におけるゼオライト活用の現状と今後の展開についてさまざまな事例を踏まえながら解説いただきました。
講演終了後は東京大学構内の松本楼にて懇親会が行われ,高石先生の教え子である板橋慶治さんによる献杯のご発声の後,さらに活発な議論と意見交換が行われました。また,懇親会では高石先生のご令弟,高石昭吾様にもご参加いただき,高石先生との思い出を語っていただきました。最後に,ご講演いただきました講師の先生方に心より感謝申し上げます。
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