日本ゼオライト学会 刊行物 Publication of Japan Zeolite Association

ISSN: 0918–7774
一般社団法人日本ゼオライト学会 Japan Zeolite Association
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5 アカデミーセンター Japan Zeolite Association Academy Center, 358-5 Yamabuki-cho, Shinju-ku, Tokyo 162-0801, Japan
Zeolite 28(3): 107-108 (2011)
doi:10.20731/zeoraito.28.3.107

ゼオゼオゼオゼオ

IMMS2013 の日本開催に向けて

発行日:2011年9月10日Published: September 10, 2011
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1. はじめに

1990年に早大の黒田一幸先生らが,1992年にモービルR&Dの研究グループが,それぞれ独立に規則構造型メソポーラス物質の合成を報告し,これをきっかけにメソポーラス物質の研究は世界中に拡がり一つの研究分野を形成するに至った。メソポーラス物質に関する論文数は年々増加傾向にあり,2010年には3,500報を超えた(図1)。これはカーボンナノチューブの論文数を超えるものであり,メソポーラス物質に関わる研究者数が着実に増えてきたことを示す。

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図1 メソポーラス物質に関する論文数の推移

Keyword “mesoporous”

このような背景のもと,1998年にメソポーラス物質の国際組織IMMA(International MesostructuredMaterials Association)が発足し,IMMAの公式な国際会議であるIMMS(International MesostructuredMaterials Symposium)が同年にボルチモア(米国)で開催された。その後,ケベック(カナダ,2000年),済州島(韓国,2002年),ケープタウン(南アフリカ,2004年),上海(中国,2006年),ナムール(ベルギー,2008年),ソレント(イタリア,2010年)で開催され,そして次回の第8回IMMSは2013年に日本で開催することが決まった。黒田先生のパイオニア的な仕事やその後の日本人研究者の貢献を考えると,第8回での日本開催は遅すぎた感があるが,これは単に日本から開催地としての立候補をしてこなかったためである。IMMS2013の開催地として,日本とカナダの2 カ国が立候補したが,IMMA Councilメンバーの投票の結果,圧倒的多数で日本が選ばれたことは,日本開催への期待感の表れと思われる。なお,前回のソレント以降,IMMSの開催は2年ごとから3年ごとに変更された。

2. IMMS2013について

IMMS2013は,2013年5月20〜24日の日程で,兵庫県の淡路島にある淡路夢舞台国際会議場で開催される(図2)。本国際会議場は,自然豊かな環境の中に,最新鋭の会議設備,ホテル,レストランに加え,会議の合間に疲れを癒す遊び空間がちりばめられたリゾート地となっており,会議に集中して過ごすのに適した場所として選択した。表1 には,IMMS2013の組織委員会を示した。名誉委員長には,2006〜2010年にIMMAのPresidentを務められた黒田先生に就いて頂いた。発表は,Plenary(50 min), Keynote (30 min), Oral (20 min),そしてPosterから成り,過去のIMMSを踏襲し一会場ですべての発表を行う。参加者数は400名以上を見込む。IMMSには,この分野の世界の第一線の研究者が集まり,最新成果の紹介と活発な議論が行われる。最近の研究の動向としては,メソポーラス物質の合成と構造に関する研究だけでなく,応用を強く指向した研究が増えていることが挙げられる。従来の触媒や吸着剤に加え,センサー,発光材,電極材,電解質,ガス貯蔵材,除放剤,DDS,太陽電池,人工光合成,人工酵素など非常に多岐に渡っている。IMMS2013は,これらの最新成果の発表の場となるとともに,今後のこの分野の方向性を示す重要な会議になると考える。

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図2 淡路夢舞台国際会議場

表1 IMMS2013 組織委員会
Honorary Chairman:黒田一幸(早大)
Chairman:稲垣伸二(豊田中研)
Co-Chairman:山下弘巳(阪大)
Secretary General:木村辰雄(産総研中部)
Treasurer:吉武英昭(横国大)
Programs小倉賢(東大)
マヘンドラ・カプール(太陽化学)
Local Arrangement:野村淳子(東工大)
森浩亮(阪大)

3. メソポーラス物質とゼオライト学会との関係

図3には,ゼオライト研究発表会での総発表件数に対するメソポーラス物質に関する発表件数の比率の推移を示した。黒田先生らとモービルR&Dのグループの論文発表の直後の1993年から発表比率は年々増加し,2000年には25%を超え,その後はおおむね25〜35%の範囲で推移している。ゼオライト学会の中で,メソポーラス物質の研究が大きな柱の一つとなっていることを示す。また,ゼオライト学会が発行・主催する学会誌や講演会などでもメソポーラス物質に関する話題が頻繁に登場しており,多くの会員の関心を集めるところとなっている。IMMSの日本開催は,これら会員の国際舞台での発表と国際交流を促進するとともに,学生など若手研究の育成に大きく貢献するものと思われる。ゼオライト学会の会則には「本会は,天然および合成ゼオライト(ゼオライト類似の結晶性鉱物,モレキュラーシーブなどを含む)に関する基礎研究および利用技術の一層の発展を図るため,その研究開発に携わるものが一堂に集まり,情報や意見の交換を通じて相互に交流する機会を作ることを目的とする」とある。ゼオライト学会の発足当初の会則には,研究対象がゼオライトに限定されていたが,時代の変遷とともに,類似の多孔性物質にもその範囲が拡張されてきた経緯がある。

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図3 ゼオライト研究発表会でのメソポーラス物質に関する発表割合

ゼオライト学会(当時はゼオライト研究会)は,国際ゼオライト協会(IZA)の公式な国際会議IZC(International Zeolite Conference)の日本開催(7th IZC, 1986年)を機会に1984年に設立された。そして,財政面も含めた全面的なバックアップを行い,7th IZCを成功に導いた。また,1990年からは,ゼオライト学会が独自で主催する国際会議ZMPC(Zeolite and Microporous Crystals)を3年あるいは4年ごとに開催してきた。最近のZMPCでは,ゼオライトに関する研究発表に留まらず,メソポーラス物質に関する数多くの研究発表が行われるようになってきた。

4. おわりに

IMMSは,メソポーラス物質を主要テーマとするため,上記二つの国際会議と同列に扱うことはできないが,ゼオライト学会の大きな柱の一つにまで成長した研究テーマを扱う国際会議であり,ゼオライト学会の積極的な関与を期待したい。また,ゼオライト学会の個人および法人会員の皆様には,積極的な研究発表の申込みと学会参加および宣伝の場としての活用をお願いしたい。

IMMS2013の日本開催が,ゼオライト学会と会員の皆様の発展に大きく貢献できるように,組織委員一同全力を尽くして参りますので,何卒ご協力を賜りたくお願い申し上げます。

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