日本ゼオライト学会 刊行物

ISSN: 0918–7774
一般社団法人日本ゼオライト学会
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5 アカデミーセンター
Zeolite 26(3): 98-107 (2009)
doi:10.20731/zeoraito.26.3.98

解説

ゼオライトの形状選択性ビフェニル及びナフタレンのアルキル化を例として

岐阜大学工学部機能材料工学科 ◇ 〒501-1193 岐阜県岐阜市柳戸1番1

受理日:2009年4月14日
発行日:2009年9月10日
PDF

多環芳香族炭化水素,特に,ビフェニル及びナフタレンのアルキル化におけるゼオライトの選択性を中心に,形状選択性の発現機構を考察した。これらの反応では,最も小さい分子径を有し,形状選択性の指標である4,4'-ジアルキルビフェニル(4,4'-DABP)及び2,6-ジアルキルナフタレン(2,6-DAN)の選択率はゼオライトの細孔構造及びアルキル化剤の嵩高さに支配される。

ビフェニルのイソプロピル化では,一次元ストレート細孔を有する12 員環ゼオライトMOR,AFI及び14員環ゼオライトCFIは,高い4,4'-ジイソプロピルビフェニル(4,4'-DIPB)選択率を与えるが,ケージ型細孔を有する12員環ゼオライトATS及びIFR,14員環ゼオライトDON,SFH及び3次元ゼオライトFAU,BEA及びCONの4,4'-DIPB選択率は低かった。これらのゼオライトによる選択率の差は,細孔内において嵩高い異性体を生成する遷移状態が規制されることに基づく。即ち,MOR等のゼオライトでは,嵩高い異性体を生成する遷移状態が規制され,最も小さい4,4'-DIPB が選択的に生成する。しかし,そのほかのゼオライトでは,嵩高い異性体に対する立体規制が十分でないので,形状選択性よりも,速度論的及び/または熱力学的な支配を受ける。しかし,アルキル化剤を変え,嵩高い置換基を導入すると,MOR以外のゼオライトでも4,4'-DABPの選択率が向上した。このことは,置換基が大きくなるにつれ,大きいゼオライト細孔でも嵩高い異性体に対する立体規制が働く様になると考えられる。

同様の傾向がナフタレンのアルキル化においてもみられ,細孔構造とb,b-及び2,6-選択率の間に相関関係が存在する。

キーワード:ゼオライト;形状選択性;ビフェニル;ナフタレン;立体規制;遷移状態;細孔構造

This page was created on 2017-05-30T16:51:39.584+09:00
This page was last modified on


このサイトは(株)国際文献社によって運用されています。