日本ゼオライト学会 刊行物 Publication of Japan Zeolite Association

ISSN: 0918–7774
一般社団法人日本ゼオライト学会 Japan Zeolite Association
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5 アカデミーセンター Japan Zeolite Association Academy Center, 358-5 Yamabuki-cho, Shinju-ku, Tokyo 162-0801, Japan
Zeolite 42(4): 117-124 (2025)
doi:10.20731/zeoraito.42.4.117

解説解説

小細孔ゼオライトの骨格内Al原子分布制御と触媒性能Control of the Distribution of Framework Al Atoms in the 8-ring Zeolites and Its Impact on Catalysis

東京科学大学総合研究院ナノ空間触媒研究ユニットNanospace Catalysis Research Unit, Institute of Integrated Research, Institute of Science Tokyo ◇ 〒226–8501 神奈川県横浜市緑区長津田町4259

受理日:2025年7月22日Accepted: July 22, 2025
発行日:2025年10月15日Published: October 15, 2025
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小細孔ゼオライトの中でもCHA型アルミノシリケートゼオライトはメタノールから低級オレフィンへの反応(MTO反応)およびNOX選択的還元(NH3-SCR)用の触媒,メタン部分酸化用の触媒として注目されている。CHA型なアルミノシリケート型ゼオライトにおける骨格内Al原子の位置・分布に関する筆者らの最近の研究成果を紹介する。

The catalytic properties of aluminosilicate zeolites depend on many factors such as the pore structure, acid strength, and acid amounts. Among them, the acidic properties originate from the presence of protons balancing the negative charge induced by the framework Al atoms in tetrahedral sites (T sites). Recently, the distribution of Al atoms in the zeolite framework has been recognized as an important factor for activity and selectivity. Here, we have focused on the control of the distribution of Al atoms in the CHA-type aluminosilicate zeolite, which has been widely used as a solid acid catalyst in petrochemical catalytic processes and also in the methanol conversion process. We have found that the Al distribution is affected by the raw materials, especially Al and silica sources, for preparation of CHA-type aluminosilicate zeolite; the Al distribution was tuned by changing the ratio of aluminum hydroxide and FAU-type zeolite. We have successfully demonstrated that the Al distribution affected the hydrothermal stability of the zeolite and also catalytic performance.

キーワード:ゼオライト;骨格内Al原子分布;Tサイト;CHA型ゼオライト

Key words: zeolite; Al distribution; T-site; CHA-type zeolite

1. 緒言

ゼオライトのシリカ骨格にAl,Fe,Ti,Ga,Snなどの“ヘテロ原子”を導入することにより,ゼオライトの細孔(ナノ空間)内にヘテロ原子に由来する「触媒能」,ヘテロ原子の電荷に基づく「イオン交換能」を発現させることができる。これらの機能はヘテロ原子の“種類”と“導入量”に大きく依存する。最近,これらの因子に加え,ゼオライト細孔内の“ヘテロ原子の位置”も大きな影響を及ぼすことが見出されている。Al3+をシリカ骨格(SiO44−に導入する場合,1価の対カチオンが必須であり,Al原子は対カチオンの近傍に存在している。対カチオンとしてはNa+,K+等の無機カチオンや第4級アンモニウム塩やアミン類などの有機分子が用いられる。Al原子の位置は対カチオンの物性(電荷,サイズなど)に影響されると考えられる。これまで中細孔を有するMFI型アルミノシリケートであるZSM-5を対象とした骨格内Al原子分布制御と触媒性能に関する研究が注目されている。窒素酸化物の分解(deNOx用)触媒,メタノールからのオレフィン合成(MTO反応)用触媒,メタン部分酸化用,さらには小分子を対象とした分離膜として注目されている小細孔ゼオライトに関する検討例は少ない。

CHA型ゼオライトの持つTサイト(幾何学的に環境の異なるサイト)が1種類であることからCHA型ゼオライトのAl分布は主に骨格内のAl原子同士の距離について研究されており1),そのAl分布が各種反応活性に影響を与えることが報告されている2,3)。例えば,有機構造規定剤(1-adamantammonium cation hydroxide, TMAdaOH)のみを用いて合成を行うとAl原子同士が離れた位置に存在する孤立した(Isolated)Al種が優先的に形成される一方,水酸化ナトリウムとTMAdaOHを併用すると,近接した(pairing)Al種が高い割合で形成されるという報告がある1)。このように,CHA型ゼオライト骨格におけるAl原子の分布は,これまでほとんど電荷バランスの観点から研究されてきた。

本稿では,CHA型ゼオライトのAl分布に及ぼす出発原料の影響を明らかにするために行った,筆者らの最近の研究成果を紹介する。一般にCHA型ゼオライトは,TMAda+を有機構造規定剤(OSDA)として使用して,非晶質アルミノケイ酸塩ゲルから直接合成される。一方で,Si源およびAl源としてFAU型ゼオライトを用いたゼオライト転換法によっても合成可能なことが報告されている4,5)。出発物質,すなわちSi源およびAl源の影響は,CHA骨格における組成の観点からの研究は数多く存在するが,Al分布への影響についてはこれまで十分に調べられてこなかった。本稿ではまず非晶質シリカ,水酸化アルミニウム,FAU型ゼオライトなどの出発原料の比率を変化させて,CHA型ゼオライトを合成した際に見られるAl分布の違いについて説明する。関連して,Al分布がゼオライトの水熱耐久性に与える影響も示す。次に,OSDAを用いないCHA合成のケースについて説明する。最後にAl分布が触媒反応に与える影響についてメタン転換反応(MTM反応)およびメタノールtoオレフィン反応(MTO反応)を例に示す。

2. 低Al含有CHA型アルミノシリケートゼオライトのAl分布制御

CHA型アルミノシリケートゼオライトの合成方法はいくつか報告されている。Si源,Al源としては非晶質シリカ(Cab-O-Sil M5, Cabot),アルミン酸ナトリウム,水酸化アルミニウムの他,FAU型ゼオライトも用いることができる。近年,FAU型ゼオライトを原料にしたゼオライト合成が多数報告されている5)

筆者らはCHA型ゼオライトのAl分布の制御を目標に,出発原料が合成されるCHA型ゼオライトのAl分布に及ぼす影響を検討した。骨格内のAl原子分布の評価には固体29Si MAS NMRにより実施した。CHA型ゼオライトの合成はSiO2 : Al2O3 : NaOH : SDA : H2O=1 : 0.05 : 0.2 : 0.2 : 10の組成比で行った。Al源としてFAU型ゼオライト(JRC-Y-5.5(Si/Al=2.8))およびAl(OH)3を用い,二種類のAl源の割合を変化させることで合成を行った。Si源はCAB-O-SIL® M-5,有機構造規定剤はTMAdaOHを用いた。ここでは各サンプルをCHA-F-xxは全Al源中のFAU型ゼオライト由来のAl源の割合)と表記する。なお,Al分布の指標としてイオン交換特性から見積もられるIsolated/pairingではなく,CHA型ゼオライトのTサイトが1種類であることを考慮し,29Si MAS NMRスペクトルから算出されるSi(OSi)4-n(OAl)n種(Q4(nAl))の割合を用いている。

まず,出発原料として用いたFAU型ゼオライト(JRC-Z-Y5.5, Si/Al = 2.8)のAl分布を知るために29Si MAS NMRスペクトルを測定した結果(Fig. 1),-111 ppm付近にSi(OSi)4種(ここではQ4(0Al)と表記),-105 ppmにSi(OSi)3(OAl)1種(Q4(1Al)),-101 ppmにSi(OSi)2(OAl)2種(Q4(2Al)),-96 ppmにSi(OSi)1(OAl)3種(Q4(3Al)),-99 ppmにSi(OSi)3OH(Q3(0Al))のシグナルが観測された。各シグナルの波形分離の結果,各Si種の割合はQ4(0Al),Q4(1Al),Q4(2Al),Q4(3Al)=13.0,40.9,38.8,7.4%であった。まず,Fig. 2に原料のFAU量を大きく変えたCHA-F-0.10,CHA-F-1.0の29Si MAS NMR測定結果およびスペクトルの波形分離結果を示す。CHA-F-1.0ではQ4(3Al) : Q4(2Al) : Q3(0Al) : Q4(1Al) : Q4(0Al)はそれぞれ0 : 6.8 : 4.0 : 20 : 69,一方CHA-F-0.1では0 : 3.4 : 3.0 : 32 : 62となり,生成物中のQ4(2Al)量はCHA-F-1.0のほうが多く,Q4(1Al)量はCHA-F-0.1が多い結果となった。

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Fig. 1. FAU型ゼオライト(Si/Al = 2.8)の29Si MAS NMRスペクトル.

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Fig. 2. (a)CHA-F-0.1および(b)CHA-F-1.0の29Si MAS NMRスペクトル.

次に,原料中のFAU型ゼオライト由来のAl量が生成するCHA型ゼオライトに及ぼす影響をより明らかにするために,合成ゲル中のFAUの量を変化させて合成を行った。Fig. 3に原料のFAU型ゼオライト量と生成物のAl量,Q4(1Al)量,Q4(2Al)量との関係について示した。合成ゲル中に含まれるFAU型ゼオライト由来のAl量が多くなるほど,生成物中のQ4(1Al)量が減少し,Q4(2Al)量が増加した。出発原料であるFAU型ゼオライトのAl原子分布が生成したCHA型ゼオライトのAl原子分布に影響を及ぼしており,Q4(2Al)量が多いFAU型ゼオライトを用いたとき,生成するCHA型ゼオライトもQ4(2Al)量が増加すると考えられる6)。このように,原料中のFAU型ゼオライトの割合に依存して生成物中のAl分布(Q4(2Al)量)を精密に制御できることがわかった。

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Fig. 3. 原料のFAU型ゼオライト量と生成物のAl量,Q4(1Al)量,Q4(2Al)量との関係.

3. Al分布が水熱耐久性に対して及ぼす影響

Al分布が水熱耐久性に対して及ぼす影響についても検討した。CHA-F-0.1およびCHA-F-0.75に対して800°Cで水熱処理を行い,安定性を評価した。XRDピークパターンを確認すると,両試料とも水熱処理後に強度がわずかに低下しているが,CHA型構造は維持されていた。Fig. 4に各試料の水熱耐久試験前後の29Si MAS NMR測定結果を示した。水熱処理を行うことでどちらの試料ともQ4(1Al)由来(-105 ppm)のピーク,Q4(2Al)由来(-100 ppm)のピーク強度が減少したが,CHA-F-0.75はCHA-F-0.1と比べてQ4(1Al)由来のピークの減少率が大きいことがわかった。これは水熱処理により脱Alが進行し結晶構造が崩壊したためと考えられる。今回比較したCHA-F-0.75,CHA-F-0.1ともAl含有量はほぼ同じであり,欠陥量も大差はないことがわかっている。CHA-F-0.75はQ4(2Al)種を多く有していることを考慮すると,Q4(2Al)中のAl原子はQ4(1Al)中のAl原子と比較して脱アルミニウム化しやすいと考察できる。したがって,FAU型ゼオライトが高い割合で合成されたCHA型ゼオライトはQ4(2Al)の割合が高いため,水熱処理に対して安定ではないことが示唆された。

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Fig. 4. 水熱処理前後の(a)CHA-F-0.1および(b)CHA-F-0.75の29Si MAS NMRスペクトル.

4. 高Al含有CHA型アルミノシリケートゼオライトのAl分布制御

CHA型ゼオライトはOSDAフリーの条件であっても合成が可能であり,その際にはSi/Al比が小さくなることが知られている7)。そこで筆者らはOSDAフリーの合成条件において出発原料が与える影響を検討した。先ほどと同様に水酸化アルミニウムとFAU型ゼオライト(Si/Al = 15)をそれぞれAl源として用いてOSDAを使わずにCHA型ゼオライトを合成した。ゲル組成比や合成手法などは既報8)の通りである。本稿では非晶質シリカおよび水酸化アルミニウムを出発原料として合成されたサンプルをCHA-Am,FAU型ゼオライトを出発原料としてゼオライト転換法によって合成されたサンプルをCHA-FAUと表記する。

Fig. 5(A)には29Si MAS NMRスペクトルを示している。-110 ppm付近にSi(OSi)4種(Q4(0Al)),-104 ppmにSi(OSi)3(OAl)1種(Q4(1Al)),-98 ppmにSi(OSi)2(OAl)2種(Q4(2Al)),-94 ppmにSi(OSi)1(OAl)3種(Q4(3Al))のシグナルが観測された。Fig. 5(B)は29Si MAS NMRのスペクトルを4つのピークに波形分離して面積の割合を算出した結果を示している。この結果の,Q4(1Al)に対するQ4(2Al)の割合に着目すると,CHA-AmのほうがCHA-FAUよりも有意に大きな値となっていることがわかる。これはOSDAフリーの合成条件においてFAU型ゼオライトを出発原料としたゼオライト転換法によってCHA型ゼオライトを合成した場合,Q4(1Al)の割合が高くなることを示している。この傾向はOSDAを用いて合成した時の真逆となっている。これはFAU型ゼオライトを用いて合成されたCHA型ゼオライトがFAUのAl分布を一部引き継いでいるためと考察されている。つまりAl含有量が少ないFAUを原料に合成されたSi/Al比の小さいCHAは孤立した(Isolated)Al種の割合が多くなり,反対にAl含有量の多いFAUを原料に合成されたSi/Al比が大きいCHAは近接した(pairing)Al種の割合が多くなっている。

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Fig. 5. OSDAフリー条件で合成されたサンプルの(A)29Si MAS NMRスペクトルおよび(B)波形分離結果.

5. CHA型ゼオライト触媒のAl分布が触媒活性に与える影響

CHA型ゼオライトは,MTO反応の触媒として優れており,低級オレフィン,特にエテン(C2=)とプロペン(C3=)を選択的に生成することが知られている9–11)。そしてその触媒特性は,粒子サイズだけでなく酸性特性にも強く依存する。例えばMFI骨格中のAl分布はMTO反応における触媒性能に大きな影響を与える12)。そこで,Si/Al比がほぼ同じCHA-F-0.1,CHA-F-0.25,CHA-F-0.5を触媒として用いてMTO反応評価を行うことで,CHA型ゼオライトのAl分布がMTO反応における触媒性能に与える影響を明らかにした。

Fig. 6は,350°Cでのメタノール転化率と生成物選択率の経時変化を示している。Si/Al比と粒子形態が同程度であるにもかかわらず,触媒寿命に顕著な差がみられた。CHA-F-0.1,CHA-F-0.25,CHA-F-0.5のTOS=480分におけるメタノールの転化率はそれぞれ100,97,94%であり,この順序はQ4(2Al)構造の割合と一致していた。反応後の触媒に対してTG-DTA測定を行ったところ,コークに由来する重量減少がすべての触媒で確認されたことから,失活は構造変化ではなくコークの析出によるものと考えられる。またDTAプロファイルでは,すべての触媒がコークの燃焼に由来する二つの発熱ピークを示した。一つ目のピークはすべての触媒で455°Cに現れたが,二つ目のピークの検出温度には触媒間で顕著な差があり,それぞれ525,537,544°Cであった。これらの結果は,Q4(2Al)構造の割合が高い触媒ほど,重く燃えにくいコークが形成されやすくなることを示唆している。MTO反応におけるコークは芳香族化合物を経由して形成されており,その芳香族化合物は脱水素を介したプロピレンとブテンの連続反応によって形成されると考えられている13)。近接した(pairing)Al種は脱水素反応を促進することが報告されているため3)Q4(2Al)の割合が高いCHA-F-0.5は,CHA-F-0.1やCHA-F-0.25に比べ,重いコークを多く生成し,結果として失活が早まったと考察された。

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Fig. 6. (a)CHA-F-0.1,(b)CHA-F-0.25,(c)CHA-F-0.5におけるメタノール転化率と生成物の選択率の変化.反応条件:P(MeOH),5 kPa; W/F = 34 g h mol−1;反応温度,350°C.●: Conversion, ◇: propene, ▽: paraffin, □: ethene, △: C 4s, ○: DME, ◇: over C5.

CHA型ゼオライトは銅イオンをイオン交換サイトに導入することでMTM反応に活性を示す14)。そこでOSDAフリー条件にて合成されたCHA-AmおよびCHA-FAUに対してCuイオン交換を行い,触媒としてMTM反応に用いた(Fig. 7)。反応を促進するために,水蒸気とO2よりも酸化力が強いN2Oを用いて反応を行った。両触媒とも,メタン転化率は流通時間(TOS)とともに低下したが,Cu/CHA-FAUはCu/CHA-Amよりも高い値を示した。さらに興味深いことに,生成物の分布には明らかな違いがみられた。Cu/CHA-FAUでは,メタノールに加えて低級炭化水素の生成が確認された一方で,Cu/CHA-Amでは主にメタノールとCOが生成されており,炭化水素はほとんど生成しなかった。炭化水素の分布をFig. 7(c)に示すが,C2–C4などの低級炭化水素が選択的に生成していることがわかる。これはCHA型ゼオライト上でのMTO反応の典型的な特徴であり9),したがってCu/CHA-FAUがMTM反応によって生成されたメタノールをさらにMTO反応によって低級炭化水素へと変換したことが示唆された。

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Fig. 7. (a)Cu-H/CHA-FAUおよび(b)Cu-H/CHA-Amを触媒として用いたN2Oによるメタン酸化反応結果.(c)「Cu/CHA-FAU」の結果における炭化水素の生成物分布.反応条件:100 mg触媒;PCH4 : PN2O : PH2O : PAr=0.4 : 0.4 : 0.08 : 0.12(atm);全圧0.1 MPa;温度623 K;SV=1.5×104 mL h−1 g−1

Cu-H/CHA-AmとCu-H/CHA-FAUの触媒活性が大きく異なる要因を明らかにするために,in-situ NO吸着FTIR測定を用いてCu種の状態を観察した(Fig. 8)。活性部位を明らかにするために,623 Kで1時間N2Oによる活性化を行い,その前後でスペクトルを比較した。1800 cm−1付近のバンドはCu+部位に結合したNOに関連し,1900–1970 cm−1付近のバンドはCu2+種に帰属される15)。1800 cm−1のバンドに注目すると,Cu/CHA-FAU(A-1)のほうがCu/CHA-Am(B-1)と比較して強度が強いことがわかる。したがって,Alの分布がCu種の状態に顕著な影響を与えており,Q4(1Al)構造がCu+種の生成に有利であると結論づけられる。これはCu2+がCu+に比べて熱力学的に安定であり,負電荷が十分に存在するサイトではCuカチオンが二価状態を優先的に取るためであると推察される。またN2Oによる活性化後,1800 cm−1のバンドは両サンプルとも減少し,1900–1970 cm−1のバンドは増加した。これはN2Oによって一部のCu+種が活性化され,Cu2+種に変化したことを示している。そしてこのようにN2O活性化によってCu2+へと変化するCu+種こそがMTM反応の活性部位の形成に寄与しており,Cu/CHA-FAUではCu+種の割合が高かったことが,高いメタン転化率を実現した要因と考えられる。以上の結果から,CHAのAl分布は導入された金属種の状態に大きな影響を与えており,結果的にメタン転換反応の触媒活性向上に貢献したと考察された(Fig. 9)。

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Fig. 8. Cu/CHA-Am(A-1)とCu/CHA-FAU(B-1)のNO吸着FTIRスペクトルおよびN2O活性化後のCu/CHA-Am(A-2)とCu/CHA-FAU(B-2)のNO吸着FTIRスペクトル(5–1000 Pa,室温).

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Fig. 9. ゼオライト触媒のAl分布がメタン転換反応に与えた影響の模式図.

6. おわりに

本稿ではCHA型ゼオライトの骨格内Al原子の位置・分布を制御する手法,評価する手法,ならびに触媒性能について述べた。ヘテロ原子の中でも3価のAl原子は対カチオンの種類を変えることで位置・分布を制御することができる。CHA型ゼオライトの場合,用いるSiやAl源も得られるゼオライトのAl分布に影響を及ぼすことがわかった。結晶構造,骨格内Al量,粒子形態が同様であってもAl分布が異なれば触媒性能に違いが出ることがわかった。また,Al分布は水熱安定性にも影響を及ぼすことがわかってきている。将来,真に特定のTサイトにのみAl原子を配置するといった原子レベルでの制御が可能になれば,ゼオライトという材料のポテンシャルをさらに高めることができるであろう。さらにAl原子にとどまらず酸化活性を産み出すTi原子の制御も興味深い。また,今回紹介したCHA型だけでなく様々なゼオライト構造でもヘテロ原子の位置制御を達成し,結晶構造,ヘテロ原子の位置・分布,触媒活性やイオン交換特性の関係を解明していきたいと思っている16)。ヘテロ原子の位置を原子レベルで制御するということは,同時にゼオライト骨格形成過程を原子レベルから制御することに等しく,ゼオライトの生成機構の根本的な解明,さらに新しい結晶構造のゼオライトの合成が期待できると考えている。

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