日本ゼオライト学会 刊行物 Publication of Japan Zeolite Association

ISSN: 0918–7774
一般社団法人日本ゼオライト学会 Japan Zeolite Association
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5 アカデミーセンター Japan Zeolite Association Academy Center, 358-5 Yamabuki-cho, Shinju-ku, Tokyo 162-0801, Japan
Zeolite 42(2): 54-62 (2025)
doi:10.20731/zeoraito.42.2.54

解説解説

電解発生酸を利用したイミン系共有結合性有機構造体の制御合成と応用Controlled Synthesis and Application of Covalent Organic Frameworks via an Electrogenerated Acid-Driven Approach at the Electrode/Electrolyte Interface

東京科学大学物質理工学院応用化学系Department of Chemical Science and Engineering, School of Materials and Chemical Technology, Institute of Science Tokyo ◇ 〒226–8501 神奈川県横浜市緑区長津田町4259

受理日:2025年2月11日Accepted: February 11, 2025
発行日:2025年4月15日Published: April 15, 2025
HTMLPDFEPUB3

共有結合性有機構造体(COF)は,高対称性のモノマーからなる規則性細孔を持つ多孔性材料である。既知のCOF薄膜の合成法は,煩雑な低濃度長時間条件が要求されるため,短時間で制御性の良い薄膜化法が希求されている。本研究では,電解発生酸(EGA)を触媒として利用したイミン系COFの間接電解合成法を提案した。EGAは,電気化学反応により電極表面に局所的に生成するため,表面近傍においてイミン結合の形成を促進する。ジフェニルヒドラジンをEGA源とし,多官能性アミンモノマーとアルデヒドモノマーとの共存下電解することで,イミン系COFを電極表面に常温短時間で合成することに成功した。得られたCOF薄膜は結晶性や多孔性を有しており,また多様なイミン系COFに本手法は適用可能であった。このCOF薄膜の応用例として,撥水性のコーティングに利用可能であることを示した。短時間の電解により得られるスポンジ構造を持つ薄膜は,超撥水性を発現した。また,本手法によりCOFをシングルナノメートルスケールで形成したCOF/ナノカーボン複合体を作製した。このCOF/カーボン複合体電極は有機酸素還元電極触媒として高い活性を示した。本手法は,COF薄膜の電気化学的な応用を加速することが期待される。

Covalent organic frameworks (COFs) are porous materials with ordered pores composed of highly symmetrical units. Since conventional methods for synthesizing COF thin films typically require complex, low-concentration, and time-consuming conditions, the development of a rapid and controllable film fabrication technique garners attention. In this study, we propose an indirect electrochemical synthesis method for imine-based COFs using electrogenerated acid (EGA) as a catalyst. EGAs are locally generated on the electrode surface through electrochemical reactions, promoting imine bond formation at the neighboring electrode surface. By employing 1,2-diphenylhydrazine as the EGA source and conducting electrolysis in the presence of multifunctional amines and aldehyde monomers, we successfully synthesized imine-based COFs on the electrode surface at room temperature within a short time. The resulting COF thin films exhibited crystallinity and porosity, and this method was applicable to various imine-based COFs. As an application of the resultant materials, the COF thin films demonstrated their potential for hydrophobic coatings. The COF thin films with sponge-like structures obtained by short-duration electrolysis showed superhydrophobic properties. Furthermore, this method enabled the fabrication of COF/nanocarbon composites with a single-nanometer-scale COF layer. The COF/nanocarbon composite electrodes displayed improved activity as organic oxygen reduction catalysts. This method is expected to accelerate the electrochemical applications of COF thin films.

キーワード:共有結合性有機構造体;イミン結合;多孔性材料;電解発生酸;機能性薄膜

Key words: covalent organic frameworks; imine bonds; porous materials; electrogenerated acid; functional thin film

1. はじめに

共有結合性有機構造体(Covalent Organic Frameworks, COF)とは,対称性のモノマーが高秩序に配列した構造を有するネットワークポリマー材料である。2005年のYaghiらによるボロキシン系COFの発見1)を嚆矢とし,現在までに種々の分子構造を有するCOFが合成されている。重合反応時に形成される結合でCOFを分類すると,ボロキシン系・トリアジン系・ビニル系のものなどが知られており,とりわけ,イミン結合によってモノマーユニットを連結してなるイミン系COFは,モノマーの良好な入手性,酸条件による穏和な合成条件,などの利点を有するため多くの報告がある2,3)。多孔体としてのCOFの特徴として,モノマーの分子設計により細孔のトポロジーや壁面の特性をコントロールすることが可能である。このソフトマテリアル特有の長所を利用し,サイズ選択的な分子透過性の付与4)が可能な分離材料に,また細孔壁面をデザインできる吸着材として,低極性分子の選択吸着5),アミンの細孔壁面修飾による二酸化炭素回収6),固相マイクロ抽出7)などに応用が提示されている。一方で,COFの枠組で実現可能な細孔径には制限があることが予測されている。現状ではイミン系COFにおいて最大で細孔径5 nm弱のCOFが報告されており8),この制限は,共有結合で繋がった骨格の耐久性が構造の低密度化に抗しえないこと,に由来するとされている。

一般にイミン系のCOFの合成は,モノマーの混合溶液に酸触媒を加え加熱撹拌することでイミン結合形成を促進させる液相法が用いられる9)。この手法で得られるCOFは,おおむね数十ナノメートルから数マイクロメートルスケールの不定形粒子状の形態を有しており,COF内外の物質拡散が求められる応用や,異相との接触スケールが重要な複合材料としての利用には難がある。特に,表面修飾や電気化学的な応用においては,COFの薄膜化が希求される。これまでに,COF薄膜の合成のため界面を反応場とする手法が数多く報告されており,グラフェンのような高配向性基板の固液界面を反応場に用いるもの10),液–液二相系による界面重合11),また付着核成長を利用して担体表面にCOFを結晶成長させるもの12),などが代表的な手法とされる。それぞれ,低濃度長時間プロセスであることに由来する膜厚制御の困難や,配向基板や二相系のような煩雑な反応場の構築が必要であること,といった欠点があり,より短時間で制御性良くCOF薄膜を合成する手法の開発が期待されている。

電気化学的な材料合成は,電解質を含む溶液中に浸した一対の電極に通電することで,電極と溶存物質の間に電子移動を伴う反応を起こす手法である。穏和で低環境負荷であり,電位・電流の制御により反応の進行をコントロール可能であるという長所があり,酸化・還元をトリガーとして生成する材料を,電極表面に局所的に作製する系に広く応用されている。電解メッキのような古くから実用されている手法に留まらず,近年では有機機能材料の作製にも用いられており,酸化重合による導電性高分子の作製などが広く知られる13,14)。直近では,COFの合成に電気化学系を用いた例が報告されており,酸化重合によるCOF薄膜の直接合成15),電析を利用したCOFナノシートの集積といったポストプロセス的な活用16),などが知られている。しかし,一般にCOFの合成には,結合の形成と開裂が共存する平衡過程の反応が必要であり,一方通行の電子授受を本質とする電気化学反応を直接用いることは困難である。そこで我々は,一部のイミン系COFが常温液相において酸触媒で合成可能であることに着目し,電気化学的なプロセスで発生する酸によりCOFの重合をトリガーする,という電解手法を考案した(図117)。電子移動反応を直接COF形成反応に用いる設計ではなく,触媒となる酸の発生を電解で制御することで間接電解的にCOFを合成する系を検討した。

Zeolite 42(2): 54-62 (2025)

図1. 電解発生酸を用いたイミン系COF合成のコンセプト.

本稿の前半2章,3章では,この電気化学反応に由来する酸(電解発生酸)を触媒として用いたCOFの合成戦略,および合成されるCOFの特性について述べる。後半の4章では,電解発生酸を用いて合成した電極上のCOF薄膜の応用について述べる18)

2. 電気化学系を利用したイミン系COFの合成

我々は,イミン結合形成を促進する酸触媒として,電解発生酸(Electrogenerated acid, EGA)を用いる手法を提案している。電気化学系を用いたEGA発生には,以下に示す特徴がある。第一に,電極表面において局所的にプロトンが生成するため,電極/電解液界面を位置選択的な反応場として利用可能であること。第二に,作用極に印加する電位およびEGA源の濃度を変えることで,酸化反応の電流量をコントロール可能であること。これは,電極表面におけるプロトンの発生量,すなわちCOFの形成の駆動力を電解パラメータで容易に調整できることを意味する。上記の特徴を活用することで,電極の表面にCOFを選択的に,短時間で,かつ制御性よく合成することが可能となる。

2.1 電解酸化による基板表面へのプロトン供給

電解酸化によりEGAを発生可能な化合物として,1,2-ジフェニルヒドラジン(DPH)を採用した。DPHは,電解酸化によりアゾベンゼンに転化し,1分子当たり2個のプロトンを放出する(図2a)。この電解酸化反応は,テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスファート(TBAPF6)を支持電解質に用いたニトロメタン電解液中,ITO蒸着ガラスを作用電極とした条件下,0.2–0.5 V vs. Ag/Ag+の電位範囲において典型的な電位–電流特性を示し,酸化電流に対応した量のプロトンを電極表面に供給する(図2b)。この基板表面における局所的なプロトン濃度の上昇は,pH指示薬やpH試験紙により確認することができる(図2c)。

Zeolite 42(2): 54-62 (2025)

図2. (a)DPHの電解酸化によるEGAの放出;(b)DPH溶液のCV;(c)支持薬および試験紙によるプロトン濃度変化の直接確認.

2.2 電極表面へのCOFの制御合成

上記のDPHを20 mmol L−1溶かした電解液に,COFのモノマーとなるトリアミン化合物(1,3,5-トリス(4-アミノフェニル)ベンゼン,TAPB)とジアルデヒド化合物(1,4-ベンゼンジアルデヒド,BDA)をそれぞれ10 mmol L−1と15 mmol L−1の濃度で共存させた。室温において,-0.5–0.5 V vs. Ag/Ag+の電位範囲で,サイクリックボルタンメトリー(CV)により20 mV sec−1で20サイクル電位を印加することで,電極表面にCOF (TAPB-BDA)が形成した(図3ab)。DPHが系内にないコントロール実験では,アミンモノマーのみが酸化し,COF膜は析出しない。TAPB-BDAの同定は,イミン結合の形成とアミノ基・ホルミル基の消失とを固体NMR・IR・XPSにより確認することで行った。

Zeolite 42(2): 54-62 (2025)

図3. (a)モノマーの構造とTAPB-BDAの合成スキーム;(b)CVの挙動および電極上に析出したTAPB-BDA膜の写真;(c)表面および断面のSEM像;(d)CVサイクル数による膜厚の制御.

上記の条件で得られたTAPB-BDAの膜は数百nm程度の粒子からなる疎な集積構造を有していた(図3c)。この形態は,一般に液相合成により得られるCOFの粉体と類似しており,電極近傍の電解液中で核生成し析出した粒子が,電極表面に集積することでCOF層を形成するプロセスが考えられる。この条件で得られるTAPB-BDA粒子集積層の厚さは100 µm程度であり,20サイクル程度まではCVのサイクル数の増加に従い線形に増加した(図3d,◆のプロット)。よりサイクル数を増やした条件では,膜厚方向の成長は鈍化しており,これは系内のモノマーの減少に由来することが推測される(図3d,▲のプロット)。CVの1サイクルは周期的な電位信号と捉えることができるので,この挙動はCOFの間接電解合成法によりCOFの生成量を制御した初めての例と言える。

2.3 異なるモノマーへの本手法の拡張

電解発生酸供給系に共存させるモノマーとして,いくつかの代表的な組み合わせを検討した。4種のトリアミン化合物と2種のジアルデヒド化合物を用いると,多くの組み合わせで提案する間接電解法を用いて対応するCOFが形成することが分かった。

検討したモノマーの中では,トリアミノ-1,3,5-トリアジン(TAT)をアミンとする場合に,対応するCOF (TAT-DMBDA)が形成しなかった。これは,電子求引性のトリアジン環に直接アミノ基が置換している構造により,アミノ基が電子不足になりイミン結合形成の反応性が低下することが原因と考えられる19)。一方で,テトラ(4-アミノフェニル)メタン(TAPM)のような電子豊富なアミンを用いる場合には,作用極表面に限らず電解セルの壁面などにも固体の析出が確認された。こちらの場合には,アミンが電子豊富であることにより反応性が高く,触媒酸の供給なしに常温下でイミン結合形成が進行したものと考えられる。本手法を常温条件で適用する場合,酸触媒存在下のみにおいてイミン結合形成が進行する,適度な反応性を有する組み合わせのアミン・アルデヒドモノマーを選択する必要があると考えられる。幸いなことに,TAPB-BDAやTAPT-DMBDAなどの代表的なイミン結合性のCOFはこの条件を満たしている。

3. 電解発生酸により合成されたCOFの特性

CVを20サイクル印加する条件でTAPB-BDAを合成し,基板上に堆積した粒子を回収してニトロメタンおよびメタノールで洗浄した。この後,超臨界二酸化炭素を用いた乾燥を行うことで細孔内の溶媒を除去した。X線散乱測定では,TAPB-BDAの結晶相に由来する回折プロファイルが得られた(図5a)。TAPB-BDAの結晶相では,大環状構造に対応する(100)面(d = 3.13 nm),および積層方向に対応する(001)面(d = 0.34 nm)が特徴的である。結晶性のCOFでは,この大環状構造が二次元に広がった単位層が,層間相互作用により積層することで,対応する大きさの分子性の細孔が形成される。得られたTAPB-BDAについて,窒素吸着測定によりBET比表面積を測定すると,832 m2 g−1を示した(図5b)。この値は,COFの全量が秩序配列し分子性細孔の形成に寄与したときの理論値(2000 m2 g−1超)には及ばないものの,一般的な液相法により作製されるCOFと比べて遜色ない値である。吸着等温線におけるマイクロ孔領域からNLDFT解析による細孔径分布を算出すると,秩序相の大環状構造に由来する理論値である29 Åの付近にブロードな分布が得られた(図5c)。二次元単位層の積層方向における乱れにより縮小した細孔や,非晶性ドメインに由来する拡大した細孔の存在が考えられる。先に示した異なるモノマーの組み合わせによって得られるCOFs(図4)においても,同様に結晶相由来の回折プロファイルと数百m2 g−1の比表面積が得られた。

Zeolite 42(2): 54-62 (2025)

図4. 合成を検討した代表的なCOFsバリエーション.

Zeolite 42(2): 54-62 (2025)

図5. TAPB-BDAサンプルの(a)SAXプロファイル;(b)窒素吸着等温線;(c)NLDFT法による細孔径解析.

今回用いたCVを20サイクル印加する条件は,熟成・洗浄工程を加味しても時間にして60分程度である。本手法では常温・短時間の工程で,十分な結晶性を有し比表面積や細孔容積が大きいCOFを合成することが可能である。これは,既存の界面を反応場に用いる手法がおおむね低濃度・長時間の条件であることと対照的である。短時間の反応過程にもかかわらず,得られるCOFが結晶性を有し多孔性を保持可能である要因として,高濃度の支持電解質を含む電解液によりイミン結合形成・開裂の速度が増加すること,超臨界二酸化炭素乾燥による細孔崩壊の抑止20),などの要因が推測される。

4. 電解発生酸によるCOF合成の応用展開

従前のCOFの間接電解合成では数十分間の長時間電解条件を採用しており,得られるCOFは数十マイクロメートルスケールの厚さを有する粒子集積膜であった。この形態は,電極表面における付着核生成を経由したCOF相の析出によるものではなく,溶液相に拡散したEGAによるCOF粒子の核生成と粒子成長ついで電極へ付着する機構によることが推測される。薄膜応用においては,ナノメートルからシングルマイクロメートルスケールの膜厚や,その均一性がしばしば求められる。そこで,短時間の電解条件やEGA源の低濃度化により,発生するEGAの量を減らすことで,COF薄膜の形成とその応用を検討した。

4.1 TAPT-DMBDA薄膜の作製と撥水性表面への応用

合成対象のCOFとしてTAPT-DMBDAを選択し,電位を0.4 V vs. Ag/Ag+に固定することでDPHとTAPTとの酸化競合を回避できる条件を採用した(図6a)。この条件で30 secの短時間電解を行うと,ITO作用極上に厚さ3 µmのTAPT-DMBDA膜が形成した。興味深いことに,得られた膜は均一ではなく,200–300 nmの径を有する分岐したTAPT-DMBDAからなるスポンジ状の構造であった(図6bc)。形成されるTAPT-DMBDAは,XRDや電子回折(SAED)より回折が確認されなかったことから低結晶性であり,XPSからは数%のアミノ基やホルミル基の残存が確認された。これらの分析は,得られたTAPT-DMBDAが秩序だったフレームワーク構造を持たない,非晶性の中間体であることを意味している。スポンジ状の構造の形成過程として,溶媒や電解質を含むゲル様の非晶性の中間体から,溶媒排出とTAPT-DMBDA相の凝縮とを伴う相分離によって形成される機構が推測される。

Zeolite 42(2): 54-62 (2025)

図6. (a)モノマーおよびDPHの酸化挙動に対応するLSV;TAPT-DMBDAの(b)光学顕微鏡像および(c)SEM像;(d)ITO基板およびTAPT-DMBDA薄膜の水接触角の比較.

得られたTAPT-DMBDAのスポンジ状の薄膜は,水に対して153.8±3.0°の接触角を有しており,超撥水性を示した(図6d)。電解時間を120秒とした場合に得られる粒子集積膜では134±2.8°の接触角を有しており,この値はCOF修飾表面としては一般的なものである21)。サブマイクロメートルスケールのスポンジ状構造による表面粗化効果により,Cassie-Baxterモデルに基づく超撥水表面が実現したと考えられる。このスポンジ構造を有する薄膜は,高度に架橋されたネットワークポリマーであるCOFの耐久性を反映して,アセトンやDMFなど各種の溶媒や熱水での洗浄後にも超撥水性を維持していた。

4.2 COFのナノスケール化と有機酸素還元電極触媒への応用

合成対象のCOFとしてTAPT-DMBDAを選択し,EGA源の濃度を2 mmol L−1まで減らすことで,より小さいスケールのCOF合成の実現を企図した18)。COFのナノスケール合成制御を可視化するため,電極上に導電性のナノカーボンの集積層を作製し,これを作用極として間接電解合成を行った(図7a)。電位を0.3 V vs. Ag/Ag+に固定した定電位条件で,多層カーボンナノチューブ(MWCNT)修飾電極を作用極としてTAPT-DMBDAを間接電解合成すると,低結晶性のCOF相が形成されることが分かった。この条件で電解時間を10–90 secまで変化させることで,MWCNT表面に形成するCOF層の厚さを,6 nmから30 nm程度まで制御して合成することに成功した(図7bc)。

Zeolite 42(2): 54-62 (2025)

図7. (a)ナノカーボン担体表面へのCOF作製;(b)電解時間を変えたTAPT-DMBDA/MWCNTのTEM像;(c)電解時間とCOF層の厚さとの関係;(d)TAPT-DMBDA/CBのTEM像;(e)TAPT-DMBDA/CBのORR電極触媒としての特性.

ここで,トリアジン環のようなヘテロ芳香族を含むCOFは,酸素還元反応(Oxygen Reduction Reaction, ORR)の電極触媒として機能することが知られている22)。本研究で作製した,ナノカーボンの表面にシングルナノメートルスケールのTAPT-DMBDAがコーティングされた構造は,電子移動の観点から電極触媒としての特性向上に有利であると考えられる。カーボンブラック(CB)集積膜に6 nm程度TAPT-DMBDAをコーティングしたTAPT-DMBDA/CB複合体(図7d)について,酸素飽和の0.1 M水酸化カリウム水溶液中におけるORR触媒性能を評価した。TAPT-DMBDA/CB複合体電極は,0.80 V vs. RHEに酸素還元電流のオンセット電位を示し,一般的な液相合成法により得られたTAPT-DMBDA粒子とCBの混合物(0.64 V vs. RHE)と比べて,高い特性を示した(図7e)。この値は,既知のトリアジン環を活性点とするCOF材料の報告値の中でも最高のものに匹敵する特性である。COFの間接電解法により,有機電極触媒として機能するCOFの特性を向上可能であることを提示した。

5. おわりに

本稿では,イミン系COFを電気化学的な手法で間接電解合成する手法とその応用展開について紹介した。電気化学系の特徴である電極と電解液の界面で起こる反応を利用し,短時間で電極表面選択的にCOFを合成することができる。また,電位や時間の制御によるEGA発生量の高精度なコントロールにより,種々の形態を有するCOF薄膜を合成可能であり,様々なイミン系COFに対して本手法は適用可能であった。応用として,合成したCOF薄膜が撥水性コーティングとして機能する例や,ナノカーボン表面への局所合成による酸素還元有機電極触媒の作製といった例を示した。本手法は,キャパシタ・センサー・電気化学発光といった種々の電気化学応用に用いられるCOF修飾電極の作製法として,有用なものと期待している。

引用文献References

1) A. P. Côté, A. I. Benin, N. W. Ockwig, M. O’Keeffe, A. J. Matzger, O. M. Yaghi, Science, 310, 1166(2005).

2) X. Feng, X. Ding, D. Jiang, Chem. Soc. Rev., 41, 6010(2012).

3) F. J. Uribe-Romo, J. R. Hunt, H. Furukawa, C. Klöck, M. O’Keeffe, O. M. Yaghi, J. Am. Chem. Soc., 131, 4570(2009).

4) H. Fan, A. Mundstock, A. Feldhoff, A. Knebel, J. Gu, H. Meng, J. Caro, J. Am. Chem. Soc., 140, 10094(2018).

5) W. Wang, S. Deng, L. Ren, D. Li, W. Wang, M. Vakili, B. Wang, J. Huang, Y. Wang, G. Yu, ACS Appl. Mater. Interfaces, 10, 30265(2018).

6) Y. Zeng, R. Zou, Y. Zhao, Adv. Mater., 28, 2855(2016).

7) J.-X. Guo, H.-L. Qian, X. Zhao, C. Yang, X.-P. Yan, J. Mater. Chem. A, 7, 13249(2019).

8) Y. Zhao, S. Das, T. Sekine, H. Mabuchi, T. Irie, J. Sakai, D. Wen, W. Zhu, T. Ben, Y. Negishi, Angew. Chem. Int. Ed., 62, e202300172(2023).

9) J. L. Segura, M. J. Mancheño, F. Zamora, Chem. Soc. Rev., 45, 5635(2016).

10) J. W. Colson, A. R. Woll, A. Mukherjee, M. P. Levendorf, E. L. Spitler, V. B. Shields, M. G. Spencer, J. Park, W. R. Dichtel, Science, 332, 228(2011).

11) Y. He, X. Lin, Y. Zhou, J. H. Chen, Z. Guo, H. Zhan, Chem. Mater., 33, 9413(2021).

12) D. D. Medina, V. Werner, F. Auras, R. Tautz, M. Dogru, J. Schuster, S. Linke, M. Döblinger, J. Feldmann, P. Knochel, T. Bein, ACS Nano, 8, 4042(2014).

13) C. Li, H. Bai, G. Shi, Chem. Soc. Rev., 38, 2397(2009).

14) Y. Koizumi, N. Shida, M. Ohira, H. Nishiyama, I. Tomita, S. Inagi, Nat. Commun., 7, 10404(2016).

15) E. Tavakoli, A. Kakekhani, S. Kaviani, P. Tan, M. M. Ghaleni, M. A. Zaeem, A. M. Rappe, S. Nejati, J. Am. Chem. Soc., 141, 19560(2019).

16) R. Wang, Y. Zhou, Y. Zhang, J. Xue, J. Caro, H. Wang, Adv. Mater., 34, e2204894(2022).

17) T. Shirokura, T. Hirohata, K. Sato, E. Villani, K. Sekiya, Y.-A. Chien, T. Kurioka, R. Hifumi, Y. Hattori, M. Sone, I. Tomita, S. Inagi, Angew. Chem. Int. Ed., 62, e202307343(2023).

18) K. Sato, S. Inagi, Small, 21, e2410475(2024).

19) R. W. Layer, Chem. Rev., 63, 489(1963).

20) D. Zhu, R. Verduzco, ACS Appl. Mater. Interfaces, 12, 33121(2020).

21) Y. Liu, W. Li, C. Yuan, L. Jia, Y. Liu, A. Huang, Y. Cui, Angew. Chem. Int. Ed., 61, e202113348(2022).

22) X. Zhao, P. Pachfule, A. Thomas, Chem. Soc. Rev., 50, 6871(2021).

This page was created on 2025-04-08T14:25:11.171+09:00
This page was last modified on


このサイトは(株)国際文献社によって運用されています。